第19話 一騒動
燦々と光る太陽に照らされる大草原。
それを一望できる高さの大岩の上。
僕は今、スライムプールに浸かっていた。
輝く太陽の日の元、ひんやり柔らかなそれは心地よく、眠くすらなってくる様な気がする。
まぁ、気がするだけなんだけどね。
あの後僕は全身をスライムに包まれると、流石に死んだと思った物だがスライムは僕を溶かすでもなく包み込んだまま動かない。
僕は頭だけを出して体がスライムの中で浮いている状態である。
言うなればスライムベットだろうか。
この状況、何と無くだがどういう事か考察は出来た。
スライムは脱出したかった。僕があげた物を取り込んで脱出出来た。それだけの事である。
「さてと、『
当然の様に成功した。
◇◇◇
その後、狩りをしつつ草原を抜け図書館へと戻った、道中出てきたプチスライムは、でかスラさんの手によっていとも容易く食い尽くされた。
綺麗な核をプッと吐き出してくれるので楽で良い。
図書館には誰も居なかった、レイーニャも爺様も何処かへ行ってしまっているらしい。
ベットに寝転がると、ログアウトした。
リビングへ降りて、冷蔵庫の前に行くと張り紙があった、丸文字で書かれたそれには、『最愛なるおにぇちゃんへ、お昼お先に頂きました。貴方の妹彩綾より』と書かれている。
どうやらアヤは先に昼食を食べたらしい、待たせてしまったかな。と思いつつも手早く食べ、雑事を終えて、最後にタクメールを確認する。
待ち合わせ場所は東の門前、時刻はもうそろそろだ。
多少はのんびり出来る余裕もあるので、採取しつつ行くとしよう。
「オープンゲート」
意識がブツリと途切れた。
◇
街中で採取をしつつ、待ち合わせ場所に到着した。
待っていたのはセンリとユウミ、例に習ってナンパされている。
ナンパしているのは見覚えのある3人組。
成る程、ナンパする為にこのゲームをやっているのならレベルが低いのは頷ける話だ。
そもそも、彼ら3人は気付いているのだろうか?
自分達が顔を弄っている様に、女性側も顔を弄っている可能性に。
……気付いて無いんだろうなぁ。
それはそうと、そろそろ助けに入らねばなるまい。
センリが笑顔になって、逆にユウミが無表情になっている、危険な兆候である。
「なぁ——」
「君達! 彼女等が困っているだろう、止めたまえ!」
「なに、げぇ! 銀ロリ!?」
「うわ! 貴公子!?」
「くそ! 覚えてやがれ!」
光の速さで撤退して行った3人。
僕の銀ロリは分からなくも無いが、貴公子とは?
横目で相手を伺うと、其処には金髪の男がいた。
鍛冶屋じゃ少し値が張る金属鎧を着込み、背には見た事ない幅広の剣を背負っている。
その後ろには、彼のパーティーメンバーと思しき女子三人がいる。
一人は、これまた値の張る金属鎧と金属の大盾を持った背の高い、キリッとした人。
もう一人は、プリースト風のローブ《値段が高め》を纏い、
最後の一人は、魔法使い風のとんがり
パーティーとしては前衛剣士、前衛盾、後衛僧侶、後衛魔法使い、でバランスが良い。
とりあえず剣を鑑定しておく。
古びた
備考:硬い金属で作られた古びた剣、何処か気品を感じる。
かなりの良品である、一体何処で拾ったのやら。
貴公子とあだ名がつけられた青年とセンリが話しているが。『助かりました、ありがとう』という社交辞令と『急に話しかけてしまって済まなかった』という社交辞令である。
お互いに笑みを貼り付けている所が胡散臭い所以だ。
センリを観察する様に見る女子三人と、全員がチラチラと僕を見ている事以外に不審な点は無い。
そこへ——
「皆、待たせ……どんな状況だ?」
——タクがやってきた。
「おお、『双剣使い』のタク君じゃないか! 君達も東で狩りを?」
「ああ、そっすね、じゃあ俺等——」
「はは、僕と君の仲じゃないか、そんなにかしこまらないでくれ、同い年だろう?」
「そうだな、それじゃあ——」
「東で狩りをするなら一緒にどうだい?」
「あ、ああ、仲間と相談しないと」
「それじゃあ良い返事を待ってるよ」
キラッと歯が光る。
……タクの笑顔の裏が何と無くだが読める、絶対に、めんどくせぇ〜。って思ってるだろう。
軽くそれぞれの意見を言った所、僕が他のプレイヤーの動きに興味がある、と言うと、一緒に狩りをする事が決まった。
「つぅ、訳で一緒に行く事になった。よろしく」
「ああ、よろしく、タク君!」
嬉しそうに笑みを浮かべる『貴公子』。何がそんなに嬉しいのやら。
「獲物は半々で、お互いピンチになったら助け合うって事で良いな?」
「うん、それが妥当だね」
そう言う二人にピンときた、獲物を半々っていうのはパーティー毎の経験値や素材の都合だろう。
なので、皆に軽くレギオンの説明をした。
「そんな機能が……どうやって……」
「凄いな! 流石タク君の友人だ」
関心したようにする二人。
じゃあレギオンを組もうかとなった所で、反対した人がいる。
僧侶だ。
「でもそれってぇ〜、経験値も全部分割されるって事ですよねぇ〜」
そう言うと僕を見て。
「えぇ〜とぉ〜、君ぃ〜、スキル構成はぁ〜?」
これにムッとしたのがタク、僧侶を嗜めるのが盾持ちのキリッとさんである。
「他人のスキル構成を聞くのはマナー違反だ、済まない双剣使い、うちのパーティーメンバーが」
「だってぇ〜、足手纏いがいるとこっちが損じゃ無いですかぁ〜」
なんと言うかこの僧侶さん、良い性格してる。僕はちょっと気に入った。
しかし、うちの女子二人はそうでも無いようである。
「ああ、ちなみに僕の主軸スキルは『召喚術』と『錬金術』だよ」
そう答えると僧侶さんは露骨に嫌そうな顔をした。
「やっぱり足手纏いじゃ無いですかぁ〜」
「ん、足手纏い、使えない」
魔法使いもそれに同調して頷き、キリッとさんも微妙な表情である。
そしてうちの女子二人が文句を言いだし口論になり。
「そこまで言うなら、PVPで決めれば良い」
と言う魔法使いさんの一声で決まったのである。
PVPとは、アナザーの中では決闘システムと呼ばれているらしい。
お互いに握手を交わし、宣誓をすると、体の表面に青い膜が張られる。
戦闘終了時は、その膜が弾ける事で勝敗が決まるのだ。
「決闘をするのは一番強い人、そっちが足手纏いがいても問題無いくらいの実力を示せば勝ち」
魔法使いさんがそう言うと前に出たのが貴公子さん。
他の三人は後ろに下がって行った。
「こんな事になって済まない、けど僕も君と戦いたいとずっと思っていたんだ!」
「はぁ……? そうか、それじゃあまた今度な」
「へ?」
そう言うと下がって行ったのがタク含めた僕以外の三人。まぁ道理である。
勿論間抜け面を晒したのは相手方の四人だ
「じゃあ、やろうか?」
「あ、ああ、いや、何で君が?」
「何でって……僕が一番強いからだよ?」
それ以外に何があると言うのか。
「いや、でも」
「まぁ、やれば分かるよ」
「うーん……しょうがないか」
貴公子さんは割と物分かりが良い方だね。
お互いに手を伸ばし、握手を交わす。
「それじゃあ、『戦いの神に感謝を捧げ、
「『戦いの神に感謝を捧げ
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