第13話 謎の黒い肉
地下水路を地図の力を借りて脱出した。
地図は、王都は最初から全て表示されていたが、地下水路は虫食いになっていた、自分が行った事のある場所しか見れない仕様らしい。
ともあれ地上である。
燦々と輝く太陽! 降り注ぐ陽光! 潜っていた場所が場所なのでまるで浄化されている気分になる。
「ニャ、みんニャもう帰って良いニャ、お疲れニャー」
「「「ニャー」」」
レイーニャが声を掛けると猫ちゃん達はにゃん拠街の何処かへと消えて行った。
「ニャーはししょーの所に行くけど、ユキはこの後どうするのニャ?」
「僕も行く」
◇
「——と、言う事があったニャ」
図書館に戻ってきた僕とレイーニャは、爺様に事の顛末を説明した。
「ふむ、やはりか……」
「やはりって言うと爺様は知ってたの?」
「確かにその様な気配は感じていた」
気配ね、僕の件でもそうだが、爺様は遠い所にあるものを感知できる能力がある様だ。
「ユキよ、この後何か用事はあるかの?」
「多少雑事があるね、それが終わったら暇かな?」
「そうか、では儂も準備をしておこう、終わったら声をかけてくれんか?」
「? うん、分かった」
◇
ギルドに向かい、魔物の解体を頼んだ。
山程預けたが、明日の朝には終わるらしい、解体費はビックコックローチの素材で払う事にしてある。
あの超巨大なコックローチは出せる程の場所が無いのでインベントリの肥やしである。
続いて向かったのはアランの屋台だ。
メニューを開いてフレンド検索を掛ける、これ、地図と鑑定があるから出来る事らしいね。
しばらく王都の人混みの中を歩いた所で、アランの屋台に着く。
「やぁ、アラン順調?」
「お、ユキか。順調順調、今朝から腹減ってる事に気付いた奴らが押し寄せて来てな、お陰様で肉が売り切れそうだ」
「そう? それは良かったね、兎肉持って来たけど買うかな?」
「おお、ありがてぇな」
僕はインベントリから兎の肉を取り出すとアランの屋台に山積みにした。
「なぁ、ユキ、この肉一体何処から出したんだ?」
「ん? アランはインベントリ持って無いの?」
「ちょ、ちょっと待て……インベントリ? 何だそれ?」
アランにかくかくしかじかと説明すると、アランは驚いた様な表情を見せた。
「へぇ、じゃあ、あのアナウンス、
「そんなとこだね」
その後、アランにインベントリと鑑定、地図をあげたらとても喜んで、これからは九割引だな。と約束してくれた。
僕の食事事情は改善されたも同然だ。
「ところでアラン、この肉、ちょっと食べてみてくれない?」
早速、兎肉をインベントリに入れているアランに、僕は黒い肉を差し出した。
「は? ……何このグロいの、食べられるのか?」
「ただで良いよ」
「いや……おう、ちょっと焼いてみるか」
アランはその黒い肉をぶつ切りにすると串に刺し焼き始めた。じゅうじゅうと音をあげるそれ。僕は煙すら吸うまいと地面に伏せ、ウルルの毛皮に顔を押しつける。
「ウォン?」
「どうした、ユキ」
「にゃんでもない」
「そ、そうか?」
メニューを開き、インベントリの中の確認をする、謎の黒い肉はまだたくさんあるのだ。
「うん、こんなもんか、んじゃあ頂きます」
「どうぞー」
アランは程よく焼けた黒い肉を齧るともぐもぐと咀嚼した。そして——
「うん、美味いな。若干臭みはあるが……これ虫肉だろ」
「え? どうして分かったの?」
「ああ、俺、子供ん時に外国の密林に行った事があってな、そこで虫食ったんだよ。あれはやばかったなぁ」
遠い目をして黄昏るアラン、どうやら虫肉食はアランにとって然程変な事では無いらしい。
「それは良かった、じゃああげるよ、全部」
そう言って黒い肉をアランに渡す、屋台にどんどん積み上げて行く僕、アランは慌ててインベントリに仕舞い始める。
全てを放出し終わると仕舞うのに忙しいアランに一声掛けて立ち去った。
「それじゃあアラン、僕は行くね!」
「ちょ、まて! ユキ、この肉何の肉だ!」
「鑑定してね!」
◇
アランにゴキ肉を押し付け終わると僕は図書館に戻りログアウトした。
昼食を軽く済ませ、雑事をこなし、再度ログインする。
さて、爺様に声を掛けるかな。
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