第6話 草原に行く
レイーニャは、それとなく気になっていたらしい女子組に揉みくちゃにされた。
今はむすっとした表情のまま僕の腕に抱えられている。
それはそうと、狩りだ。
此方が女子だらけなので心配そうに此方を見る門番のおじさんに、それとなく頭を下げて横を通過する。
特に心配されていたのは僕とアヤと双子ちゃんの四人組、このメンバーの中ではちっこい四人だ。
それに気付いたのは武術をやっていて人の動きに敏感なタクとセンリ。
二人もそれとなく頭を下げている。
通過した門の先には、少しの道と草原が広がっていた。
「タク」
「ああ、こっち側の草原はスライムが出る、他は犬と兎だな」
主語どころか名前を呼んだだけで意図を汲んでくれる、相変わらず大した物だ。
とりあえず戦力の把握をしておこう。
タク LV3 状態:空腹
武器は鉄剣
ユウミ LV1 状態:
武器は杖
センリ LV1 状態:
武器は鉄剣
アヤ LV2 状態:空腹
武器は鉄剣
ミユウ LV2 状態:空腹
武器は鉄剣
ユリ LV2 状態:空腹
武器は槍
キョウカ LV2 状態:空腹
武器は杖
リッカ LV2 状態:空腹
武器は杖
レイーナ LV? 状態:
武器持ってないの僕だけか。とか、皆空腹のままか。とか、レイーナのレベルが見えない。とか、色々あるが、まぁ良いだろう。
空腹状態がどういう影響を及ぼすかを見る良い機会でもある。
最初にエンカウントしたのはスライム。
エンカウントと言うより、草原をのろのろ歩いていた。
プチスライム LV?
たった一匹だ、ちなみにパーティー分けは、僕とレイーナのパーティー。タク、ユウミ、センリのパーティー。妹組の三つ。
折角なのでスライムを観察してみる。
大きさは手の平くらい。体はプルプルと揺れていて柔らかそうだ。
中央には正八面体の結晶が浮かんでいる。
「それじゃあやるか」
そう行ってタクは剣を引き抜いた、刀ではないが構える姿は中々様になっている。
タクの振り下ろした一撃は相変わらず鋭くキレがある。
どう感知したのかスライムは避けるそぶりを見せたが、軌道を修正したタクの攻撃は狙い違わずスライムの結晶を両断した。
結晶を失ったスライムは、形を崩して地面にドロリと広がる、そこへタクが初期装備のナイフを突き立てた。
「『ドロップ』」
タクがそう呟くと、スライムの体が光り、崩れる様に消滅した。
後に残ったのはスライムの結晶、それも四分の一くらいの大きさである。
「ふむ……ねぇ、タク」
「ん? どうした?」
僕は丁度よく近くにやって来たスライムを、ナイフで結晶を両断する事で討伐した。
「何をやったのかは分からないけど」
そう言いつつ、スライムの体液が付着した結晶を拾い上げる。
「これ」
結晶を軽く振り、くっついている液体を払うとそれをタクに突き出した。
「普通に拾った方が良いだろう?」
タクの持つそれと僕の持つそれを鑑定してみる。
プチスライムの核 品質F レア度2 耐久力E
備考:プチスライムの心臓部、四分の一に分断されている
プチスライムの核 品質E レア度2 耐久力E
備考:プチスライムの心臓部、半分に分断されている
「……成る程、盲点だった」
何やかんや言って僕もタクも何処か抜けている。僕も気を付けないとね。
◇
ドロップと言うのは解体スキルの事らしい。
ドロップを使用すると、犬や兎なんかの動物を自前で冷やしたり血抜きしたり皮を剥いだりする事なく素材を入手出来るとか。
既に素材状態と言っても過言では無いスライムに解体スキルを使った理由は……そもそも使わないとアイテム化されないと思っていたかららしい。
……まぁ、殺す時点でダメな人がいるのにそれを自力で解体すると言うのは普通なら考えもしないだろう。
そこに解体スキルがあれば、使うもんだと思うのは当然なのかもしれない。
その後の狩りは順調とは言えなかった。
何せ夕暮だから視界が悪い、その上獲物は小さく、草の陰に隠れて見付からない。
ふと、読み漁っていた本の一つに暗闇でも目が見える魔法があったのを思い出した。
声を潜めてレイーナに話し掛ける。
「レイーニャ、暗視の魔法は使える?」
そう問いかけるがレイーニャはプイッと顔をそらした。見捨てたのがいけなかったらしい。
さて、どうした物か、と悩んでいるとレイーニャが小さな声で何かを囁き始めた事に気付いた。
「暗き道を歩む者に闇の導きを『
レイーニャが何かを言い終えると、レイーニャから闇の魔力が流れ出し、皆の体の中に消えて行った。
すると、夜の闇に支配されかけていた草原が途端に昼の明るさを取り戻した。
皆からは驚いた様な声が漏れている。
レイーニャは続け様に何かを囁いた。
「猛々しき者に火の加護を『
今度は火の魔力が流れ出し、僕達の中に入って行った。
どう言う作用か力が漲ってくる。
「駆け行く者に風の加護を『
次は風の魔力、体が軽く感じる。
「心優しき者に土の加護を『
「知恵深き者に水の加護を『
次に土、さらに水、と強化を繰り返す。
「大物がくるニャー」
「む?」
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