第5話 皆と合流
目を覚ます、と同時に目が合う。
「おにぇちゃん、おはよ〜」
「うん、おかえり、アヤ」
いつの間にか帰ってきていたらしい。
ヘッドギアを外しベットに置く。
「おにぇちゃんも、アナザー、始めたんだねぇ」
「も、って事はアヤも?」
「うん! 友達がね」
どうやらアヤも友達に貰ったらしい。タクしかり、安い物でもなかろうに。貢がれるのは慣れた物だが、我慢を強いる物では無い。
ケータイを確認してみると、タクからメールが来ていた。
集合場所が決まったらしい。街の西にある噴水広場、その噴水前で集合だとか。
「後でタク達と合流するんだけど、一緒に来る?」
「うん! 皆と一緒に行くね!」
アヤを誘ってみると、アヤは嬉しそうな笑顔で即座に頷いた。
◇
アヤと一緒に夕飯を済ませ、どうせ寝るまでやるんだからとお風呂に入り、歯を磨き、寝る前のストレッチも終わらせて、ゲームをする準備を整えた。
時計を確認する、集合時間には余裕で間に合いそうだ。何せ僕には地図がある。
「オープンゲート」
意識がプツリと途切れた。相変わらずこれには慣れない。
ふわりと浮かび上がる様に意識が戻り、瞼を開く。
目に飛び込んで来たのは見知らぬ天井。
周囲を見渡してみると、
「目、覚めたニャ?」
黒猫ちゃんは心配げに僕の目を覗き込んで来る。
「急に倒れたからびっくりしたニャ」
「なぬ」
どうやら、ログアウトしても体は残るらしい、これだと無闇にログアウト出来ないな。
くきゅるぅぅ〜〜〜。
上体を起こすと僕のお腹からそんな音が聞こえて来た。さっき食べたばっかなのに。
「おニャか空いたニャ?」
「その様だよ……」
「ニャらこれを食べると良いニャ」
そう言うと猫ちゃんはどこからともなくリンゴの様な物を取り出した。リンゴに比べると小さい。
姫林檎かな?
プチアルルの実 品質B レア度2 耐久力E
備考:赤い木の実、甘くて栄養豊富、食べ応えがある。
「良いのかい? 猫ちゃん」
「遠慮しニャくて良いニャ、ニャーの事はレイーニャって呼ぶのニャ」
どうやら猫ちゃんの名前はレイーニャと言うらしい、おそらくレイーナだろう。
思えば僕、爺様にも名乗って無いな。
「そう言えば名乗ってなかったね、僕の名前はユキ、よろしくレイーニャ」
「ユキニャのニャ? 覚えたのニャ、ちニャみにニャーのニャ前はレイーニャニャ」
「レイーニャニャ?」
「レイーニャ、ニャ……」
しょんぼりとし始めたので弄るのはやめて置く。
「うん、レイーナ、よろしくね」
「ニャ! よろしくニャのニャ!」
嬉しそうに両手で僕の手を握るレイーナ、肉球が気持ち良い。
「それじゃあ頂くよレイーニャ」
「どうぞニャ……ニャ?」
首を傾げたレイーナを他所にリンゴを齧る、うむ、美味い。
「そう言えばししょーがマレビトは眠る時はニャん日も寝るって言ってたのを思い出したニャ」
「そうなんだ」
「心配して損したニャ」
「……そうなんだ」
「う、嘘ニャ、とっても心配したニャ」
「そうなんだ」
弄ると中々面白い子である。
空腹感が残っているので自分に鑑定をかけて確かめてみる。
ユキ LV1 状態:空腹
ステータスをみると、黄色のバーが3割を切っているのが分かった、これが空腹度を表しているのだろう。
「レイーニャ、後三つくらい無い?」
「やっぱレイーニャって言ってるニャー!」
「言ってないにゃ」
「ニャ!?」
目を白黒させつつ『聞き間違いニャ!?』と言っているレイーナ。
なんやかんや言いつつプチアルルの実を三つくれた、『全く、手のかかる妹弟子ニャ』とも。
いくら僕が小さくてもレイーナの三倍くらいの大きさはあるので、これでも空腹度は満タンにならない。
「レイーナ、僕これから友達と予定があるんだけど、レイーナも来るかな?」
駄目元でレイーナを誘ってみた、レイーナはしばらく悩んでいる様だったが、結局——
「暇だから行くニャ!」
と言ってローブを脱ぎ捨てた。
「後三つくらいくれない?」
「仕方ニャいニャー」
一口サイズのアルルで回復した空腹度は1割程、まだまだ満タンでは無い。
◇
地図を開いて集合場所を探す。図書館の位置は町の南西の奥の方だった。そこから道なりに進み、大通りを北上すると噴水広場だ。
目的地を見付け、後は進むだけ。僕はレイーナを抱き上げると暗くなってきた道を歩き始めた。
「レイーナは何時まで付き合える?」
何気なく質問をするとレイーナは何故か声を潜めて答えてくれた。
「時間ニャら心配ニャいニャ、徹夜も出来るニャ。それと、ニャーが喋れる事はニャい緒ニャ」
「それはまたどうして」
「知能が高いのがばれると行動が制限されるニャ」
なるほど、確かにその通りだろう。なんだ、猫か。が素で出来る訳だ。
「合理的だね」
「そうニャ」
「僕を踏んだ時もニャーニャー言ってたね」
「そ、そうニャ」
それとなくレイーナをからかいつつも広場に到着。周りを見渡すと、タク達は既に待っていた。アヤとその友達もいる。
皆見た目は変えていないらしい。
タクは黒髪黒目、ユミは茶髪茶色目、チサトは黒髪黒目だ。
妹組はアヤが赤い髪に赤い目。
青色の短く切り揃えられた髪に水色の瞳なのがアヤの親友の
その隣に背筋をピンと伸ばして立つ大和撫子が一人。
リアルと変わらず腰まである長い髪で黒髪黒目。
更にその隣にいる瓜二つの二人が桜庭姉妹。それぞれ、鏡花と立花である。勿論双子だ。
右サイドテールが鏡花、左サイドテールが立花である。
……思ったのだけど、最初に髪型を結ぶ形に設定したら髪留めが貰えると言う事では? ケチな考えだが髪を結んだ髪型にしておけば良かった。
「やぁ、待たせてしまったかな」
そう言って一番最後にやって来た僕。
「おお、ユキ、時間通りじゃないか?」
「おにぇちゃん、可愛い! もはやおねえちゃんだよ!」
皆んな優しいので多少遅れても許してくれる。
……遅れて無いけどね。
◇
「全員、フレンド登録は済んだ?」
ざっと確認する。どうやら登録し終わったらしい。
「それじゃあ皆にこれを配るね」
そう言って僕はインベントリからスキル結晶を取り出した。
「これを持って使うって念じてね」
「これ……何だ?」
「まぁまぁ良いから」
タクにスキル結晶渡す。
「お、おぉ! これって……!」
皆にもスキル結晶を配って行く。そう、この鑑定、地図、インベントリ、は必須としか思えない能力なのにスキル取得に表示されないのだ。
「お、お、おねえちゃん! これって……!」
「まさか、
タクはいちいち聡いね。
◇
スキル結晶のちょっとした騒動は、僕が何も言わないので直ぐに収まった。
早速外に向かう為に西の門へと歩いて行く。
「コホン、あ、あのユキ?」
外への通りを歩いている最中、
「何かな?」
センリの目線は僕が抱えているレイーナに向いている。実は可愛い物好きな彼女の事だから、気になるのも仕方無いだろう。
「あー、その……その
「触る?」
そう行って僕はレイーナの腕をとって肉球を差し出す。
「ニャ!?」
突然の事に驚くレイーニャ、嫌だったかな?
「い、良いの!?」
「うん、どうぞ」
「ニャニャ!?」
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