第8話 地球外生物?

 翌朝、ジュンからの呼び出しがあり、ジュンのマンションでパワーブレックファーストミーティングとなった。まぁ、パワーブレックファーストと言っても、オレが途中のハンバーガー屋で買った、パンケーキとハッシュドポテトとコーヒーのセットなのだが。。


「昨日採取した空気から地球外の成分が検出されました。この意味は、地球上で地球外生物の活動が確認された、ということです。検出された物質はエーデルシュタインの資料にも無いそうで、全くの新種、未知の世界、異次元の可能性があるため、連邦軍本部ではこれをコードイエロー事案と指定しました。わたくしは予定を早めて今日の午後には本国へ出発します。わたくしが不在の間もエージェント活動をお願いしたいのですが、結局エージェント活動に関する説明が昨日の調査案件だけですので、同様の簡単な調査案件だけをお願いする予定でが、何か不安なことなどありますか? あと、何かあれば、プリマベーラにはわたくしの秘書官たちが居ますので、ユーの力になってくれますよ。」


「地球外生物ですか・・ エーデルシュタイン連邦から始まって、想像も付かないことばかりですので、驚きも無くなったけど、流石に地球に地球外生物と言われると、妙に怖いですね。」


「はい、これは大きな問題になる可能性を秘めています。 ところで、昨夜もユーの防衛装備が動作した記録が確認されてますが、何かありましたか?」


オレは昨夜の状況を説明した。


「ユーは任務中には何も起きないのに、プライベートで色々起きる方ですね。」


「えぇ、オレも相手に死んでほしくは無いのですが、この防衛装備ってレベル設定とか無いんですか?相手の戦意を失わせる程度の反撃、とか。」


「残念ですけど、軍用の武器ですので、慈悲の心は無いのですよ。」


「はぁ・・」



 その後少し話をした後、ジュンと一緒にマンションを出て、転送装置のあるビルの前で別れた。

これから3ヵ月、オレがジュンの代わりか、と思うと、少し緊張したが、とりあえず、今朝は早く起きたので、一度部屋に帰って昼寝をすることにしよう。昼寝は大事だからね。


目が覚めたら外はすっかり夕焼け空になっていた。

やべぇ、寝すぎたかも。。 一応、エージェントとして、街の様子を観察という任務もあるので、とにかく部屋を出て駅前へ向かった。


帰宅ラッシュに差し掛かった駅前は多くの人で溢れていた。

駅の出入口が見えるカフェの窓側の席を陣取って、アイスコーヒーを片手に小一時間ほど様子を見ていたが、普段と変わらない普通の混雑した平日の夕方だった。


 さて、今日の監視任務は終了、と。 今日はあまりお腹も空いてないし、ゆっくりしたいので、駅ビルの地下で総菜でも買って、家でネットでも見ながら食べるかな、と駅ビルへ向かった。


正面入り口の混雑を避けて、あまり人通りのない、駐輪場側の外階段で地下へ降りよう。


「俺らとカラオケ行こうぜ、楽しいぜ。」

自転車置き場と階段との壁のかげで女子高生があからさまにガラの悪そうな二人組に囲まれていた。


あぁ、オレは、なんでこういう場面にばかり出くわすのだろう、普通に正面出入口から入れば良かった、と後悔する間も無く、女子高生が助けを求める目でオレを見たので、ガラの悪い二人組もオレに気が付いた。


「ジロジロ見るなや、見せもんじゃねーんだよ!」

そして、お約束かのように絡まれる。 もうやめてくれよ、みんな死んでしまうんだよ。

あ、そうか。目撃されなければ、少なくとも彼女は助かるのかも。試してみるか、よしっ。


「てめえらこそ何様のつもりだボケ! オレの視界に入るんじゃねぇよ、ゴミくずが。 臭ぇ、お前ら小便臭ぇな。 もうチビってんのか? こっち来いや、このクソガキが! 」


そう怒鳴りつけてオレは走って階段を下り始めた。

想定外に突然通りがかりの男に罵声を浴びせられた二人組は一瞬固まったが、即オレを追って叫びながら階段を下りてきた。


「んだと、コラ!」


オレは階段の踊り場を過ぎた所、女子高生からも地下の駅ビル入口からも見えない場所で立ち止まった。

二人組はもの凄い形相でオレに突っ込んでくる。 


オレに手が届く寸前、ビームが発射されて二人とも倒れた。もちろん、その後光線で死体も消えた。


念のために周囲を確認したが、目撃者は誰も居ない。こうすれば、本来守る対象が守れるじゃないか、これでオレもヒーロー的扱いになるか?と、女子高生に安全を伝えるために階段を上った。


あれ、誰も居ない。。

そりゃそうか。二人組の手から逃れたら逃げるよな。 通りすがりでいきなり喧嘩売ったオレも十分変な人だよな・・。


オレ、この能力では、転生物のヒーローみたいにはなれないんだな。


でも、女子高生を助けたことは事実なんだし、まぁ、良いか。

消してしまった二人にはゴメンだけど、突っかかって来た君達が悪いんだからね。


カニサラダと刺身盛合わせ、焼鳥セットと太巻きを買って帰った。


この時のオレは、地球上に現れた地球外生物の事などすっかり忘れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る