第7話 調査司令
スマホが鳴っている。誰だろう、こんな朝早く・・ あ、ジュンさんだ。
「おはようございます、ジュンさん。」
「ユー、おはようございます。 対外情報部から調査司令がありました。 山梨県の山間部で突然住民が全員行方不明になった地区があるそうです。 通常では発生しない事象ですので、地球外部からの影響が無かったか調査に向かいます。 レンタカーで行きましょう。 車を借りたら、わたくしをマンションでピックアップしてもらえますか?」
「わかりました。向かいます!」
高速を下りて、市街地を抜けて山道へ入った。
ジュンがスマホで地図を見ながらナビをしている。
「次の峠を越えた先の一帯で住民が消えたみたいですね。現場は日本の警察が入っているでしょうから、近隣の村で情報収集しましょう。 次に国道を右折すると小さな集落がありますね、そこに行ってみましょうか。」
集落と言っても、対面通行の国道沿いに雑貨屋と食堂とガソリンスタンドしかなかった。
お腹も空いてるので、食堂に入る。ドライブイン的ななんでもありなメニューを想像していたが、意外にも、山菜料理がメインのようだ。折角の山梨なので、オレもジュンも山菜ほうとうを頼んだ。
ほうとうを運んできた腰の曲がったおばあさんにジュンが話しかけている。
「まぁ、美味しそうなほうとう。 山菜が良い香りですね。」
「うちは、自家製の山菜漬けを使ってますけぇ、香りが良いんですよ。」
「山梨に伺ったらほうとう食べないと気が済まないんですよ。」
ジュンが軽く笑った。
「ほうけぇ、お客さんはどちらからけ?」
「わたくし達は東京からなんです。 そういえば、このあたり、なにか警察の方が多いですね。何かあったのですか?」
「ほうけほうけ、東京からわざわざねぇ。 せっかく来てくれてるのに、そうなんです、警察が多くて。。 実はここだけの話ですけ、先週、凄い光が光った後、人が消えてしまうっていうドラマみたいな事件があったもんで。。でも、この辺りは大丈夫なんで、ゆっくり召し上がっておくんなし。」
ジュンはいとも簡単にいとも簡単に情報を聞き出してしまった。なるほど、最初にジュンさんが言ってた、初老の女性の姿が地球で最も行動し易くて、誰にも警戒されない形態だって言ってたのはこういうことか。
そして、自家製山菜漬けの入ったほうとう、確かに旨かった。
車に戻るってエンジンをかけると、ジュンが少し難しそうな顔をして言った。
「やはり、これは自然現象ではありませんね。現場に近づけるところまで近づいて、何か痕跡が無いか調べてみましょう。」
現場方向に進むと、国道がバリケードで封鎖されて、パトカーが2台止まっていた。
バリケードの前まで車を進めると、警官が近寄ってきて窓をノックする。
窓を開けてオレが答える。
「この先は、通れませんか?」
「ごめんなさいね。 少し戻って右に曲がったら、その道がう回路ですので。」
「わかりました、ありがとうざいます。」
車をUターンさせて市街地方向へへ走らせる。
ジュンが両手で水晶占いでもするかのように手を動かすと、何やらパイプが集まったような機械がが出てきた。
「さっき、窓を開けて警官と窓を開けた時に、外の空気を採取しました。解析機に取り込みましたので、これをプリマベーラの施設へ持ち込みます。 ただ、わたくしに装備されている簡易測定器でも、わずかですが、地球には存在しない成分が検出されてますので、これはほぼ自然現象ではありませんね。この資料を採取できたので、わたくし達の現状での調査は一旦終わりですね。このまま東京へ戻りましょう。」
「調査活動終了ですか。なんだかあっけない位に簡単でしたね。 でも、あの一帯の人達が消えたにしては、報道制限されてるとはいえ、騒ぎにならないのが不思議です。だって、人が消えてるんですよ。」
「実は、人が消えたりすることは頻繁にあるんですよ。ユーも、昨日4人消しましたよね?」
「あ・・・。」
ジュンは採取した資料を持ってプリマベーラへ戻るとのことで、オレの元の職場、転送装置のエレベーターのあるビルで降ろして、オレが一人でレンタカーを返却した。
日帰り山梨往復は、流石に疲れた。ご褒美に旨いものでも喰ってから帰るか。
疲労回復に焼肉、ビールでカルビ。いやいや、もっとコッテリとホルモンにホッピーと行きますか。
看板も出てない大きな提灯と暖簾だけの居酒屋へ入った。
オレのB級グルメアンテナが旨いと反応している。
お約束の、とりあえず生。 キューっと一気に半分飲んでしまった。くー、旨い。
続けて、煮込みとホルモンをホッピーで楽しんだ。 いやぁ、最高、生きてて良かった。
ちょうどいい具合にほろ酔いになった所で店を出た。
何故かどうしても餃子が食べたくなったので、繁華街を抜けた先の町中華へ向かうためだ。
餃子と一緒にザーサイ・メンマ盛合わせも頼んじゃおう、とウキウキ気分で公園に入った。
この公園を抜けるのが近道なのだ。
公園の出口に近づいた時、暗がりから出てきた茶髪ツンツン頭と黒髪を肩まで伸ばした顔にタトゥーの入った二人組に前後を挟まれてしまった。
「よぉ、お兄さん、俺ら飲みに行きてーんだけど、金が足りないんだよねぇ。ちょっと貸してもらえないかなぁ?」
うわ、よりによって、こんな古風なカツアゲに会うとは・・。コミュ障って、何故かこういうの引き寄せちゃんだよね。。
「あ、オレも金持ってないんで。。」
「はぁぁ? 何言ってるか分からねーなー。聞こえた? 貸せ、って言ってんだから素直に貸せよ。それとも・・」
金髪がパンツのポケットからバタフライナイフを取り出した。
あ、これってヤバイんじゃ。。
「あ、それは止めた方が良いですよ。」
「はぁ? お兄さん、何言っちゃてるの?」
金髪が近づいて来た。
あ、ヤバイかも・・と思った瞬間、やはり肩からビームが発射された、それも5発。出血するとかのレベルじゃなく、バラバラに吹き飛んだ。
あぁ、言わんこっちゃない・・。
「はぇ!?」 黒長髪顔タトゥー男が奇声を上げた。同時にオレの肩からビームが2発。
続けて肩からの光線で2つの死体と血痕が消えていった。
だから言ったのに。。昨日と今日で6人も消えて、いや、殺してしまった。。
オレの力って単にヤバイだけな気がしてきた。どう考えても度を超えた過剰防衛じゃないか、と。
ただ、今わかったことは、ナイフを持った相手には5発、完膚なきまでに吹き飛ばしたことから、防衛装備は危険度に応じて対応が違うということだ。
しかし、人を消して(殺して)おきながら、そんなことを冷静に考えているオレはサイコパスなんではないだろうか・・。
流石にウキウキ気分は完全に無くなってしまったので、餃子はやめて帰宅した。
あ、一応、コンビニよって、つまみと缶酎ハイ買って、家で一人反省会はやったけどね。
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