侯爵様の奮闘

第7話 ひたすら待て!!【フレン】SIDE



「お館様、ユリアーナ嬢は……教育部に配属されました……」


 ガイの報告を聞いて私は目の前が真っ暗になった。


「な、なんだって……?」


 教育部は主に、王族の帝王学や王妃教育に携わる。城の奥深くに専用の部屋があり、許可のある者しか通れない。ちなみに許可がある者は……主にその部署で働く者か……王族だ。


「頻繁に会いに行けない場所だ……なぜそのような場所に配属されたのだ?!」


 私は思わず頭を抱えた。

 これでは頻繁に会いに行って顔なじみになって、会えないとなぜか落ち着かないと思ってもらい、そうなったら自然にデートに誘ってそのままの流れで男女の関係になってユリアーナを私なしでは耐えられないようにして自然に結婚……という流れに持って行くのが難しくなってしまった!!


「お館様……こうなったら、ユリアーナ嬢の求める偶然の出会いというものに賭けるしかありませんね……」

「そうだな……」


 こうして私は、ユリアーナと自然に接触するために機会を待ったのだった。





「自然な出会いなどないではないか!!」


 ユリアーナが女官になって一年が経った。私は、再び頭を抱えていた。


 ユリアーナの職場は、昼食は専用の場所があるので、お昼の休憩などでも私が足を踏み入れることはできない。

 朝は早くから夜は遅くまで働き、城の敷地内の女官専用の寮に住んでいる。

 さらに、ユリアーナはたまの休みにも、外にはほとんど出ない!!

 しかも、なぜか彼女の休みは一般の休みと違い、休みが全く合わない!!


「そうですね~~。ユリアーナ嬢……かなり御多忙の様子ですよね……」


 ガイが私に同情するような瞳を向けてくる。


「ああ!! 女官専用の寮は家族以外の面会禁止。プレゼントは必ず寮長が中身を確認して本人に渡す。しかも手紙も許可された者でないと送れない!! どうすればいいのだ?!」


 私の叫びにガイが溜息を付きながら答えた。


「そうですね~~ですが、ユリアーナ嬢の部以外の他の方は、外で殿方と会ったり、昼食中に複数の男女で仲を深める会合をしたり、休憩スペースの人気のない場所で男女が睦合ったりしているようなのに……」

「その点に関してのみ、ユリアーナ嬢が、教育部でよかった!!」

「なぜです? それなら、お館様だって会いに行けるでしょう?」


 ガイの言葉に、私は胸が抉れる思いで告げた。


「私以外の男と知り合う機会が出来てしまうだろう?! それはダメだ。とても許せない!! 男女の会合?! 男女が睦合う?! ダメだ絶対にダメだ!! 私はそんなふしだらなことは許さない!!」

「なるほど、自分のことは棚に上げて……心の狭いお館様らしい意見で清々しいです」

「そうだろう? 私はユリアーナ嬢に関してのみ、心が狭い!!」


 私は、ユリアーナに会えずにつらいが、彼女が誰とも会わずにひたすら仕事に打ち込んでいることだけを心の支えにユリアーナと自然に出会う機会を待ったのだった。


「じゃあ、もう……待つしかないですね。待つことも愛ですよ」

「そうだな!! 私は待つ!!」


 そんな私についにチャンスが訪れることになる……。





「お館様。大変です!! 三日後にユリアーナ嬢がお館様が管理されている乗馬場の予約をされています」


 私は椅子を倒して立ち上がり、競歩のようなスピードで瞬きもせずに、ガイから視線を外さずに、ガイの前に来て顔を近づけた。


「それは本当か?」


 ガイは、面倒そうに私から顔を手を押して離しながら言った。


「本当ですよ。それより、近いです。ウザいです。暑苦しいです」


 私はそんなガイの言葉を無視して、声高らかに告げた。


「よし、その日は私も乗馬場に行くぞ!! ガイ。何としてでも予定を開けろ!! 国王陛下に呼ばれようと、槍が降ろうとも私は乗馬場に行くぞ!!」


 ガイは震えながら言った。


「国王陛下にだけは呼ばれないといいですね……」


 こうして、私はようやくユリアーナに会える機会を得たのだった。

 

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