第3話 盗み聞き【フレン】SIDE
パーティー会場から出て来たユリアーナたちの後を追うと、彼女たちの話声が聞こえて来た。
ユリアーナを含めて3人の令嬢が話をしていた。
「アリスは、すぐに結婚でしょう?」
「うん。もう、ドレスも仮縫いまで終わっているの」
とても楽しそうに結婚の話をしながら、一人の令嬢がユリアーナに尋ねた。
「ユリアーナはどうするの?」
なんと、素晴らしい質問だ~~!!
ユリアーナの友人の質問は、まさに私の今、一番知りたい質問だった。私は、ユリアーナの友人に心から感謝した。
友人の問いかけにユリアーナは楽しそうに答えた。
「そうね……しばらくは仕事に集中したいわ。折角、女官試験に合格したし。寮に入ることも決まったの」
あ……そうなのか……。
別に女官は結婚を禁止されているわけではないと思うが、ユリアーナはそう思うのか……。
私はあからさまに肩を落とした。
なぜなら、女官試験に合格し、卒業も終えたユリアーナに、明日にでもお見合いの釣書を送ろうと思っていたのだ。
あれほど健気で意思の強いユリアーナだ。きっと女官の仕事にも全力で打ち込むはずだ。すぐに結婚して、私が彼女を全面的に支えたいと思っていた。仕事も、私の家から通うようにと、馬車なども新調しようと思っていた。
「結婚はしないの?」
他の友人の言葉にユリアーナは少し困ったように答えた。
「私……恋愛結婚というものがしてみたいの。出会って、お話をして、側にいたいと思える方と結婚したいの」
「素敵ね~~。憧れるわ」
「本当に!! お話聞かせてほしいわ」
私はユリアーナの話を聞いて奥歯を噛み締めた。
くっ!! 恋愛結婚?! 見合いではダメなのか?!
ユリアーナは、ちまたで話題の恋愛結婚に憧れているらしい。
これまで、恋愛結婚と聞いても『悠長なことだ』と聞き流していたが、まさかユリアーナにそんな願望があったとは!!
近年、貴族の離婚が深刻化し家同士の無理な見合いや婚約や結婚を規制する法が整備された。だから、私が侯爵といえども、ユリアーナと無理に結婚することはできない。
私は、ユリアーナに選ばれる必要がある!!
そのためには、ます恋愛結婚について調べる必要がある。
私は高速で頭を回転させ打開策を見つけた。
よし、ユリアーナの配属先が決まったら頻繁に足を運ぼう!!
ユリアーナの配属先が決まったら、頻繁に顔を出して会う確率と、話をする頻度を上げる必要がある。
「自然に出会って……魅かれるような方がいいわ……」
自然な出会い?! なんて難易度が高いのだ?!
私は頭を抱えた。
頻繁に会いに行くのは自然な出会いになるのだろうか?
いや、ならないだろう。
ユリアーナが休日や、ふとした瞬間に出かけた場所で出会うのが最高の出会いだ。
「んんんん……」
私は、眉間にシワを寄せて今後の対策を考えたのだった。
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