第12話 割れる世界
☆
和彦の野郎は何がしたい。
そう思いながら俺は「...」となって和彦を見る。
すると和彦は肩をすくめた。
ポケットに偉そうに手を突っ込んで、だ。
「おいおい。そんな威嚇する様な目をすんなよ」
「するに決まっているだろう。お前は...全てを奪ったんだからな」
「...誤解がある様だから言っておくが。俺じゃない。最初に来たのは」
「...何だと...」
「最初に来たのはあくまでめぐるだ。だから俺がきっかけじゃない」
俺はかなりの衝撃を受けながら横の里島を見る。
里島は「...」となっており。
何も言えなくなっていた。
じゃあまさかと思うが...いや。
それは...。
「...一体何をダシにして里島を操っている」
「めぐるはあくまで俺しか居ないから頼ったまでだぞ。俺はあくまで人助けをしているだけだ」
「...和彦。俺はお前について色々聞いた。その中で...俺としてはこう思いたくは無いが。お前じゃないか。今回の全ての原因は」
「!!!!?」
「!?」
みんな固まる。
その中で和彦だけが爆笑していた。
「そんな訳あるかい」と言いながらおちょくる様に、だ。
俺は「...」となりながら和彦を見る。
まあ確かに。
もしコイツがやったとしたらそれなりに証拠が出ると思う。
だけど全くそれに関しては何も無い。
だから根拠が無い。
「推測で言うのは止めろ。...あくまで俺の立場もあるしな」
「...これまでの事象があまりに都合が良すぎてな。全てが不気味すぎるんだ。だから推測じゃないかもしれなくてな」
「それは良く無いぞ。マイブラザー」
「...俺はお前の弟だが弟の立場は捨てた。お前はあくまで里島めぐるを奪った。それは言える。だからこそ俺はお前を兄と慕っていない」
「...」
和彦はニヤッとする。
俺はその姿を見ながら「...」となる。
すると「私、貴方が嫌いです」と華凛が言った。
そして俺の前に出る。
「貴方は呪いの存在です。とうちゃんにとっては害でしかない」
「...君は確か長友さんだっけ。あまり酷い事を言うとそれなりの罰が降るぞ?ハハハ」
「私は害を、罰を受けても構いません。だけどそれでも私は。とうちゃんをイジメている貴方が許せない」
「...俺はあくまで危害を加えている訳じゃ無いぞ?...にしても君は良い子だな。飲み込みたいぐらいだ」
「...和彦。お前もう帰れ。何をしに来たんだ」
「ああ。そうそう。それでな。...里島めぐるの意思を尊重してやれよ。可哀想だぞ」
俺はイライラしながら「は?」となる。
するとその言葉に和彦は「めぐるはあくまで俺が奪ったが。...だけど彼女は帰りたいって言っている。...お前の元にな」と歪んだ顔をする。
このクソッタレ...。
「いい加減にしろお前。...腹立つな」
「いやいや。俺はあくまで援助をしてやっているだけだっての。それに二股したとしても害は無いだろ。普通」
「お前の考えにはついて行けない」
「おいおい。そりゃないぞ。...お前も弟なら分かるだろ」
「お前とは正直、血が繋がってない気がする」
「ひでぇな。アハハ」
そう思える。
だってそうだろう。
いつだってそう...家族から金を盗んだり。
俺から玩具を取ったり。
全く良いイメージが最近は湧かない。
「お前は昔からそうだった。今考えても...お前のせいで全てが狂い始めた。それを思うとお前は...」
「何だ。殴りたいか?俺を」
「...この前はミスった。お前の様な屑を殴っても仕方が無い。...ゴミを殴っても所詮はゴミしか出ない」
「そうなのか。...じゃあ俺はめぐるとまた子作りするよ。お前の様な根性無しは嫌だろうしな。めぐるも」
このクソ野郎。
とことん腹立つな。
そう思いながらも俺は華凛と一緒にその場を後にしようとした。
すると和彦は「まあその。長友さんもそのうちに頂くよ」と言ってくる。
俺は和彦を睨む。
「お前な。そういう事をしてみろ。お前の居場所もそうだが。...お前を殺してやる」
「...ハッハッハ。俺の様になる気かお前。屑に」
「俺は華凛の為なら何でもする。お前を殺すのも可能だし」
「やってみてくれるか?なら。ひ弱なお前に何ができるってのか」
「マジにムカつくなお前」
だけど落ち着け。
コイツの罠だと思う全ては。
そう思いながら俺は「...もし次、俺達に近付くならお前を警察に引き渡す」と脅してから和彦を見る。
すると和彦は「そうはならないよ。俺は犯罪を犯しているじゃない。あくまで俺は助け舟を出しているだけだ」と笑顔で告げてきた。
「...お前...」
「とうちゃん。もう止めた方が。無理だと思います。今は」
「...そうだな」
和彦は「じゃあまあ...今日はこれで解散かな」と柔和な顔をする。
それから里島を引き連れてからこの場所を後にした。
正直、砂でも食ったかの様な。
後味が悪い物しか残らなかった。
☆
「...」
チックタックと時計の針が鳴る音がする。
俺はその中で窓を開けて外を眺める。
間も無く夕暮れだな。
そう思いながら、であるが。
するとインターフォンが鳴った。
「誰?」
「私です。華凛です」
「...ああ。華凛か」
それから玄関を開ける。
そこに華凛が何かビニール袋に入った食材を持って立っていた。
その華凛と食材を交互に見ながら俺は「?」を浮かべる。
すると華凛は笑顔でこう言った。
「これからお夕食を作りに来ます」と、だ。
へ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます