第12話 割れる世界


和彦の野郎は何がしたい。

そう思いながら俺は「...」となって和彦を見る。

すると和彦は肩をすくめた。

ポケットに偉そうに手を突っ込んで、だ。


「おいおい。そんな威嚇する様な目をすんなよ」

「するに決まっているだろう。お前は...全てを奪ったんだからな」

「...誤解がある様だから言っておくが。俺じゃない。最初に来たのは」

「...何だと...」

「最初に来たのはあくまでめぐるだ。だから俺がきっかけじゃない」


俺はかなりの衝撃を受けながら横の里島を見る。

里島は「...」となっており。

何も言えなくなっていた。

じゃあまさかと思うが...いや。

それは...。


「...一体何をダシにして里島を操っている」

「めぐるはあくまで俺しか居ないから頼ったまでだぞ。俺はあくまで人助けをしているだけだ」

「...和彦。俺はお前について色々聞いた。その中で...俺としてはこう思いたくは無いが。お前じゃないか。今回の全ての原因は」

「!!!!?」

「!?」


みんな固まる。

その中で和彦だけが爆笑していた。

「そんな訳あるかい」と言いながらおちょくる様に、だ。


俺は「...」となりながら和彦を見る。

まあ確かに。

もしコイツがやったとしたらそれなりに証拠が出ると思う。

だけど全くそれに関しては何も無い。

だから根拠が無い。


「推測で言うのは止めろ。...あくまで俺の立場もあるしな」

「...これまでの事象があまりに都合が良すぎてな。全てが不気味すぎるんだ。だから推測じゃないかもしれなくてな」

「それは良く無いぞ。マイブラザー」

「...俺はお前の弟だが弟の立場は捨てた。お前はあくまで里島めぐるを奪った。それは言える。だからこそ俺はお前を兄と慕っていない」

「...」


和彦はニヤッとする。

俺はその姿を見ながら「...」となる。

すると「私、貴方が嫌いです」と華凛が言った。

そして俺の前に出る。


「貴方は呪いの存在です。とうちゃんにとっては害でしかない」

「...君は確か長友さんだっけ。あまり酷い事を言うとそれなりの罰が降るぞ?ハハハ」

「私は害を、罰を受けても構いません。だけどそれでも私は。とうちゃんをイジメている貴方が許せない」

「...俺はあくまで危害を加えている訳じゃ無いぞ?...にしても君は良い子だな。飲み込みたいぐらいだ」

「...和彦。お前もう帰れ。何をしに来たんだ」

「ああ。そうそう。それでな。...里島めぐるの意思を尊重してやれよ。可哀想だぞ」


俺はイライラしながら「は?」となる。

するとその言葉に和彦は「めぐるはあくまで俺が奪ったが。...だけど彼女は帰りたいって言っている。...お前の元にな」と歪んだ顔をする。

このクソッタレ...。


「いい加減にしろお前。...腹立つな」

「いやいや。俺はあくまで援助をしてやっているだけだっての。それに二股したとしても害は無いだろ。普通」

「お前の考えにはついて行けない」

「おいおい。そりゃないぞ。...お前も弟なら分かるだろ」

「お前とは正直、血が繋がってない気がする」

「ひでぇな。アハハ」


そう思える。

だってそうだろう。

いつだってそう...家族から金を盗んだり。

俺から玩具を取ったり。

全く良いイメージが最近は湧かない。


「お前は昔からそうだった。今考えても...お前のせいで全てが狂い始めた。それを思うとお前は...」

「何だ。殴りたいか?俺を」

「...この前はミスった。お前の様な屑を殴っても仕方が無い。...ゴミを殴っても所詮はゴミしか出ない」

「そうなのか。...じゃあ俺はめぐるとまた子作りするよ。お前の様な根性無しは嫌だろうしな。めぐるも」


このクソ野郎。

とことん腹立つな。

そう思いながらも俺は華凛と一緒にその場を後にしようとした。

すると和彦は「まあその。長友さんもそのうちに頂くよ」と言ってくる。

俺は和彦を睨む。


「お前な。そういう事をしてみろ。お前の居場所もそうだが。...お前を殺してやる」

「...ハッハッハ。俺の様になる気かお前。屑に」

「俺は華凛の為なら何でもする。お前を殺すのも可能だし」

「やってみてくれるか?なら。ひ弱なお前に何ができるってのか」

「マジにムカつくなお前」


だけど落ち着け。

コイツの罠だと思う全ては。

そう思いながら俺は「...もし次、俺達に近付くならお前を警察に引き渡す」と脅してから和彦を見る。

すると和彦は「そうはならないよ。俺は犯罪を犯しているじゃない。あくまで俺は助け舟を出しているだけだ」と笑顔で告げてきた。


「...お前...」

「とうちゃん。もう止めた方が。無理だと思います。今は」

「...そうだな」


和彦は「じゃあまあ...今日はこれで解散かな」と柔和な顔をする。

それから里島を引き連れてからこの場所を後にした。

正直、砂でも食ったかの様な。

後味が悪い物しか残らなかった。



「...」


チックタックと時計の針が鳴る音がする。

俺はその中で窓を開けて外を眺める。

間も無く夕暮れだな。

そう思いながら、であるが。

するとインターフォンが鳴った。


「誰?」

「私です。華凛です」

「...ああ。華凛か」


それから玄関を開ける。

そこに華凛が何かビニール袋に入った食材を持って立っていた。

その華凛と食材を交互に見ながら俺は「?」を浮かべる。

すると華凛は笑顔でこう言った。

「これからお夕食を作りに来ます」と、だ。

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