佐藤栞と佐藤忍

第11話 対峙


佐藤栞先輩。

彼の意図は本当に良く分からないが俺にとってはかなり衝撃的な事を言った。

里島めぐるが被害者...か。

そう思いながら俺は佐藤栞先輩を見る。

佐藤栞先輩はニコッとはしていたが...あまりそれが良い笑みとは思えない。


「俺は君達に会ってみたくて」

「...それはもう分かりました。...だけど何で華凛も?」

「俺はね。...簡単に言えば勧誘したい。...君達を」

「...?」

「実の所、俺も浮気されたんだよ。そしたらその次に兄が倒れたじゃないか。精神が壊れてしまってね。この修復の為にこの部活を立ち上げた様なもんだ。それで君達を見て思ったのは君達も僕達と同じじゃ無いかなって」

「...華凛は違うでしょう」

「それはどうかな」


佐藤栞先輩は華凛を見る。

華凛は「...」となって佐藤栞先輩を見据えていた。

俺はその姿を見つつ「華凛はそんな気持ちを持ちません。彼女は優秀な子です」と言ってから佐藤栞先輩を見る。

佐藤栞先輩は「悪い意味で言っているんじゃない。...もう一度言うけどこの部活の存在意義だけどこの部活は復讐する部活だ」と言ってくる。


「...俺は復讐を手伝うんだよ。...何故ならそれが仲間に対する大切な思いって思うから」

「しかしそれは犯罪でしょう」

「犯罪にならない程度の復讐だよ。本当にちっぽけな復讐だけど。...例えば俺の場合だけど浮気した彼女の相手の男を怒らせる様な感じで色々と調べて暴露した」

「...佐藤栞先輩はそういうのが得意なんですか」

「そうだね。情報収集は得意だよ。だってこれが自分の趣味だしね」

「...」


まあ華凛はこんな手には乗らないだろう。

そう思いながら俺は溜息を吐いていると華凛が「乗ります」と言った。

俺はずるっと椅子から落ちそうになった。

何!?


「私は...とうちゃんを振った相手を許さないですし」

「ま、待って華凛。嘘だろ!?」

「とうちゃんはこのままで良いの?私は...許せないよ」

「どうして...!?」

「私、思っていたんだよ。だって...おかしいでしょ。里島めぐるは地獄に落とさないと駄目だよ」

「...」


俺は冷や汗が出る。

それから華凛を見た。

華凛は漆黒の様な笑みを浮かべる。

そして佐藤栞先輩の手を握った。


「...」

「それで。君はどうする?」

「華凛が暴走しない様に俺も入ります。...俺は...」

「それで良いよ。有難う」


そして俺達は復讐がてら。

情報を貰う為に佐藤栞先輩の部活。

文芸部というか。

復讐部に入ってから情報を集めた。



私も精神が壊れているのだろうとは思う。

だけど佐藤先輩は核心を突いた。

私だってプライドがある。

犯罪にならない程度で彼女。

里島に復讐はしたい。


「...本当にこれで良かったの?」

「良かったと思います。私だってプライドがありますしね」

「...まあそうだけど...」

「とうちゃん。彼女には思い知らせないといけない部分もあるよ」

「...」


だけどとうちゃんは「...」と考え込むばかりで一向にイエスとは言わなかった。

何かが引っ掛かっている様に見える。

私はそんなとうちゃんの手を握りながら歩いてから教室に帰る。

そしてドアを開けてからチャイムの音を聞き。

授業を受ける。



そして私達は部室に行ってから帰る事にした。

今日は自己紹介などだった。

私はとうちゃんを見る。

とうちゃんは私を見てから目線を逸らす。

その姿を見て歩いていると。


「...貴方...」

「...」


目の前に里島めぐるが現れた。

私達を見てから「...」となっている。

とうちゃんも厳つい顔をした。

それから見ていると里島めぐるは涙を浮かべた。


「...徹。私は...貴方と一緒の時間が楽しかったのも...あるから」

「...お前の情報、結構知ったよ。だけどお前は一度裏切った。これはもう撤回のしようが無いんだ。だからもう去ってくれないか」

「そ、そうでしょ。徹。お願い。私は...私は一緒が良い。だから...」


そう必死に言う里島めぐるの横をとうちゃんはゆっくりすり抜ける。

それから帰宅の為に歩き出す。

そんな里島めぐるの顔を見るが。

かなりやつれている。

何かあったのだろうか、とは思うが。


「とうちゃん」

「どうした」

「...有難う。キチンと言ってくれて」

「そう言ってくれてっていうか。...本当に当たり前の事を言っただけだよ」

「...それでも私はしっかり言ってくれたって思う。表現してくれたって思う」

「...」


とうちゃんは考え込む。

その様子を見ながら私は河川敷を歩く。

そして帰宅していたのだが。

背後に付いて来ている人が居た。


「良い加減にしろ。里島」

「...!」

「お前は一度裏切ってから全て失われた。もうお前に望みは無い。...幾らお前が可哀想でも今回はもう何とも思えない」

「...」


里島は手を伸ばしてきた。

だがとうちゃんはその手を振り払った。

それからとうちゃんは「...何の用事だ」と怒り交じりに聞いた。

すると里島は「...私は光の道を歩きたい」と言葉を発した。

その言葉に「...」となる。


「...すまないがお前を救う価値は無い」

「...と、徹」

「何度でも言うが立ち上がるなら1人でやってくれ。...俺はお前に裏切られたショックは計り知れなくデカい」

「...」


手を下ろした里島。

それから手を下ろしてから落ち込んだ様子で踵を返した。

すると「つれないねぇ」と声が。

私は「!」となって前を見る。


「...貴様。何をしに来た」

「殴ったろ?慰謝料くれよ」

「...冗談だろ。...俺は1円も払う気は無い」

「まあそれは冗談だけどさ。ハハハ」


私達を見るその男。

用場和彦だ。

何をしに来たんだこの男は...。

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