第10話 生きる糧になるもの
☆
私はこの学校に転校して来た理由は大きく分けて3つある。
1つ目にとうちゃんが居る事。
2つ目に東野さん達が居る事、そして学校の扱いに納得がいかない。そして家族を捨てる為に来た。
3つ目はこれは隠しているが...真相を知りたいが為に来た。
真相とは...今、はびこっている世界の真実を知りたいのもあって来た。
私はそれらを抱えてこの場所に来た。
正直、私はとうちゃんと一緒の学校に通いたいと思っていたので丁度良かったと思えるのだ。
だけど...闇は深い。
とうちゃんを裏切った里島めぐるの事を...真実を知りたい。
「華凛」
「...あ。とうちゃん」
「売店に行かないか」
「そうだね。一緒に行きましょうか」
そして私は立ち上がってとうちゃんの背を見る。
とうちゃんは何も知らない感じで歩き出す。
私は考え込む。
この感情がバレない様にしないと。
とうちゃんにあらぬ心配をかけさせてしまう。
そう思いながら歩く。
「そういえば部活とか入るのか?」
「...え?いや。何も考えてないですよ」
「そうなのか?青春は一度きりだ。楽しんだ方が良くないか?」
「でも私、とうちゃんさえ居れば何でも良いので」
「いやいや。そういう訳にもいかないだろう」
「ですかね?」
正直言って私はとうちゃんの傍で観察がしたい。
その為にそういう余裕は無いと思う。
だけどとうちゃんがそう言うなら。
検討してみても良いんじゃないかと思う。
そして私達は歩いてから売店にやって来るととうちゃんが突撃を食らった。
人が多いのもあって食らったみたいだけどそれを受け止めるとうちゃん。
「あ!す、すいません!」
「あ、ああ。大丈夫かな」
「せ、先輩。ごめんなさい。失礼しました」
そしてその女の子は頭を下げて去って行く。
とうちゃんはホッとしながら私を見る。
私はその姿をちょっとムッとして見ていた。
「もう。とうちゃん甘すぎじゃないですか?今のはぶつかって来たんですよ?」と怒ってみる。
だがとうちゃんは「まあまあ」と私を宥める。
「相手はワザとじゃないと思うから」
「...全くです」
「それはそうと何にする?」
「あ、じゃあ...私、コーヒーで。後でお金を払います」
「要らないよ。華凛」
そう言いながら私を見たとうちゃん。
そして「その代わりに...話がしたい」と言う。
私はドキッとしながらとうちゃんを見る。
とうちゃんは真剣な顔をしている。
「えっと...」
「...東野先生との関係だ」
「...はい」
そして私達は飲み物を買ってから外のベンチに腰掛けた。
とうちゃんは「...その。君の親父さんが洗脳してきたんだよな?それで入院したってのは聞いた。...親父さんは迫って来ないのか」と聞いてくる。
私はペットボトルのキャップを開けた。
それから少しずつ飲む。
「...父はもう迫って来ません」
「それは何故だ」
「呆れているからです」
「呆れている?それはどういう意味だ?」
「私の頭の悪さに呆れているんです。姉と比較している」
「...ああ。そういう事か」
「だから私が学校を転校しようがお構いなしな感じでした」
私は皮肉めいて答える。
そして「...私は愛が欲しかった」と答える。
とうちゃんは「...母親はまともだったよな」と言いながら飲み物を飲む。
私はその言葉に「まあ確かにですね」と苦笑する。
それからペットボトルを潰す感じで握る。
「...まあでももう母親は居ません」
「...それはまたどういう意味だ」
「母親は壊されました。父親に」
「...」
「...私と姉だけがまともですよ」
そう言いながら私は空を見上げる。
此処から見る空は綺麗だけど...灰色に見える。
全てが漆黒に染まっている。
灰色モノクロームの世界。
「...私、愛が欲しかっただけです。頭を撫でてもらいたかったのに。ですが全て壊されました」
「その中で良く生きて居ていたね」
「...生きるのには必死でしたけど。諦めていた部分もありました」
「そうだったんだな」
「はい」
私はそう淡々と答えながらとうちゃんを見る。
とうちゃんは悩む様に顎に手を添える。
私は空をまた見上げた。
暗いままだった。
「じゃあこれから楽しもう」
「はい?」
「これから楽しんで行こう。...智も居る。...だからきっと大丈夫だ」
「...とうちゃんも居ますか」
「それは勿論。居るよ」
「...じゃあもう少しだけ生きてみます」
そうしていると。
先程、とうちゃんに突撃した女子生徒がやって来た。
「すいません。その。...居て良かったです。是非とも部長が貴方がたにお会いしたいそうで」と言ってくる。
私達は「?!」となりながら顔を見合わせた。
それはどういう意味なのだろうか。
☆
「先程の事、すいませんでした。私、文芸部員の長住美夜子(ながずみみよこ)です。反省の気持ちも有って来ました」
「ああ。そんな。...長住さんのせいじゃないですよ?」
「いや。本当に御免なさい」
長住さんは学校内を歩く。
私達もそのまま歩く。
それから行き着いた先は文芸部だった。
私達は表札を見上げながらドアを開ける長住さんを見る。
そしてドアが開け放たれ。
「やあ」
と声がした。
そこにはイケメンスマイルの黒縁眼鏡を掛けた3年生らしき人が。
私は「?」を浮かべながら見ていると「佐藤栞先輩?」と声がした。
横に居るとうちゃんが驚く様な声を発した声だ。
私は「!?」と目を丸くした。
持っていた本を片付ける佐藤先輩を見る。
「...待って居たよ。...文芸部。基。復讐部だけどね」
「...???」
私は意味が分からないが。
その言葉に顔を顰めるとうちゃん。
私は...佐藤先輩を警戒しながら見た。
そして私達は立ち尽くす。
すると佐藤先輩、長住さんが促してくる。
椅子に腰掛ける様に、であるが。
だけど正直。
この椅子に腰掛けたら世界の何かが終わりそうな。
そんな気配も感じた。
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