第8話 廻る地球
私は浮気をしている。
その理由としては家族を守る為がある。
だが...それ以外にもある。
私は寂しさを埋めているのだと思う。
これで、だ。
本当に情けない話だけど。
そう思いながら私は家に帰って来る。
「お帰りなさい!」
帰って来るなりいきなり抱き着かれた。
それは...妹の四葉だった。
片方だけ髪の毛を結んでいる天使の様な少女。
私に対して笑みを浮かべている。
その彼女の頭を私は撫でた。
「ただいま。四葉」
そして奥に行くとお父さんが寝込んでいた。
私を見てから「お帰り」と柔和になる。
父親は...何らかの薬物の中毒に陥っている。
これがどこで盛られたのか分からない。
そして何故そんな事になったのかも分からない。
「...」
お父さんは1か月の余命宣告されている。
私は「その間に謎が少しだけでも解けたら良いのだが」と思いながら日に日に弱っていくお父さんを見ている。
お父さんは「...何かあったのか」と聞いてくる。
私はビクッとしながら「いや。何も無いよ」と答える。
そして私は鞄を置いた。
それから私は家事をする為に台所に向かう。
実の所...お母さんが、私が。
そういう事をしている事をお父さんは知らない。
私は知らなくて良いとは思う。
絶望を。
そうしてから私は表を見る。
それから風の音を聞きながら作業をする。
今日の夕食は...カレーライスだ。
そう思いながら作ってから戻ると...お父さんが険しい顔をしていた。
見ると...先程私が用場和彦から貰った物が机の上に置かれている。
四葉が「御免なさい。お姉ちゃん。遊んでいたら鞄を蹴っ飛ばした」と言ってから反省している様な顔をする。
私は青ざめた。
「...何が言いたいかは分かるかな。...このお金はどうしたんだ」
「...」
「高校生の給料の額じゃない。...数えてみたら40万円もある。どうしたんだこのお金は」
「一応、色々な制度を...」
「それは無いな。行政の貸し付けなども全部...使い切ったりしたから」
「...」
私は、閉めておけば良かった、と思いお父さんを見る。
お父さんは「座りなさい」と言う。
それから私は指示に従う様に座り込む。
するとお父さんは「...何か悪い事をしているのか」と聞いてくる。
そうなるよね。
「...お父さん。私、悪い事をしている訳じゃ無いの。これはちゃんと...」
「...それは無いよ。社会保険などの事を考えるとね。税金もそうだけど。...それを差し引いてもこの金額を持つのはありえない」
「...」
「もう一度聞くよ。怒らないから。...何処で稼いだんだ」
「...」
私は「...パパ活」と答えた。
するとお父さんは「...それはもしかして俺の為にか」と言ってくる。
私は頷いてから「はい」と言う。
お父さんは「そうか」と言いながら「...もしかしてだけど...千歳(ちとせ)も...とんでもない事で稼いでないかな」と言ってくる。
「おかしいと思うよ。だって一家の大黒柱が倒れているのに一軒家が持ちこたえている。...だって住民税とかどうしているの」
「...それは...」
「治療費が数倍かかるのに」
「...」
「...千歳に聞いてみないと」
「...」
私は不安そうな四葉を見る。
四葉の頭を撫でた。
それから私は「...お母さんは風俗に行っている」と答えた。
するとお父さんは「そう...か」と話した。
そうしてから「俺は...恵まれているんだな」と言葉を発する。
「恵まれている?」
「だってそうだろう。...俺なんかの為に動いてくれているから。...俺みたいな役立つの為に動いてくれているのだから」
「...お父さんはそうなりたくてなっている訳じゃ無いでしょう」
「...そうだけど。...だけど今はもう役立つだよ。社会の役に立ってない」
「うん」
「...だから死んだ方がマシだよ」
お父さんはそう言いながら「...でも本当に話してくれて有難う」と笑みを浮かべる。
私はその言葉に涙が浮かぶ。
それからボロボロと泣き始めた。
私は...。
☆
私は用場徹さんの事を覚えていた。
正義のヒーローは...横の住人だった。
胸が高鳴る。
そのままゆっくりと外に出て横の部屋を見る。
「...」
とうちゃんと判明してから...私は。
どう接したら良いか分からない。
だけど私は。
そう思いながら私はインターフォンを押そうとした。
するといきなりドアが開いた。
「あ...」
「おはようございます。とうちゃん」
「...あ、ああ。おはようございます」
「えへへ。何だか新鮮です」
「...そ、そう?」
「もしかしてゴミ捨てですか?」
「そ、そうだね」
私はそう言うとうちゃんの背後を見る。
片付けが更にされていた。
整理整頓と言える。
私は「...もしかしてまた片づけたんですか?」と聞いてみる。
するととうちゃんは「ああ。もう少しで片付きそうだったから。昨日はゴメンね」と柔和な顔をした。
「そうなんですね」
「...今日はこれから学校だよね」
「そうですね。これからまた学校です」
「...気を付けてね」
「はい。準備してからまた行きます」
私はとうちゃんを見る。
そして私はとうちゃんに「これ」と布の包みを差し出した。
それは私お手製のお弁当だ。
私の行動に「?」を浮かべるとうちゃん。
「これ良かったら食べて下さい」
「...え?!」
「朝から起きて作りました」
「...え。その。俺の為に?」
「そうですよ。...アハハ」
とうちゃんは驚く。
それから私と布の包みを交互に見てから受け取る。
私に対して柔和な顔をした。
そして「有難う」と言ってきた。
何だかゾクゾクした。
「...私」
「...?」
「とうちゃんに出会えて良かったです」
「...え?」
「とうちゃんはとうちゃんらしく居て下さいね」
私は言いたい事を言えた。
そして私はとうちゃんの手を握る。
それから私も柔和な顔をする。
まだこの人生だ。
大好きな人だけど。
まだ付き合う訳にはいかないだろう。
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