第6話 用場和彦への攻撃
☆
翌日になった。
起床してから俺は周りを見渡す。
そこには片づけられた食器。
更に片付けられた品物があった。
昨日あの後の話だが。
俺と長友さんは片づけをした。
長友さんが俺の部屋の8割を片付けてくれた。
有難いものだと思いながらも。
何でそこまでしてくれるのか分からない思いがあった。
「...今日は土曜日か」
そう思いながら俺は歯磨きをしようと思いドア付近に近付く。
すると言い争う声がしてきた。
俺は「!?」と思いながら直ぐにドアを開ける。
そこに...長友さんと。
何故か里島が居た。
「...お前...何をしている。里島」
「お、教えてもらったから。この場所に来た。...貴方と話がしたくて。そしたらこの訳が分からない女が絡んできた」
「私は貴方の素性を聞いています。貴方は誰ですか」
「だから私は...私は」
そこまで言ってから沈黙する里島。
俺はその姿に怒りを感じながらも冷静に「コイツは元カノだ」と長友さんに説明をしてみた。
すると長友さんは眉を顰めた。
「...じゃあ貴方ですか。...彼を捨てたのは」と怒りに満ちた声を発する。
「...長友さん...」
「私にとっては貴方は敵って事ですね」
「あ、貴方こそ...私にとっては...!」
「お前にそれを言う資格は無い」
俺はそう言いながら里島を威嚇する。
すると里島は「えっと...ち、違うの。本当に。徹。話を聞いて...」と言うが。
その言葉に俺は「知らん。死ねよお前」と吐き捨てる。
それから「帰れ。お前と話す事は何も無い」と言ってから里島を見た。
「...私は...」
「...確かにお前の家が遥かに貧乏だとは知っている。困窮しているのも知っている。だからと言えアイツとやっていたのは事実だ。お前の事は永遠に許さない」
「そ、そこまでならお願い。話を聞いて...」
「...何を聞けと?お前から」
その様に話してから俺は里島を見る。
里島はビクッとしながら俺を見てきた。
それから唇を噛んでから俯く。
俺はその姿を見ながら「俺さ。お前に散々期待していた。それがこれだ。お前に救いの手は無い。本当に許さない」と言ってから長友さんを見る。
「長友さん。何処か行こうか」
「...はい」
そして俺は里島を置いてから歩き出す。
里島は「...」となったまま何も語らず呆然と立っていた。
それを見ながら俺は吐き捨てる様にしながらその場から去った。
クソ忌々しい。
☆
何でこんな目に遭っているのか。
それも俺が、だ。
そう思いながら歩いていると長友さんが「用場さん」と聞いてきた。
俺は顔を上げてから「どうしたの?」と聞いてみる。
すると長友さんは「...昨日、逃げ帰ってすいませんでした」と話してくる。
「...逃げ帰った...ああ。昨日そんな感じだったっけ?」
「はい。とても恥ずかしくなったので」
「何がなの?」
「...えっと。いや。それは内緒です」
長友さんは笑顔になる。
俺はその顔を見ながら歩いていると長友さんが俺に向いた。
それから「どこに行くんですか?」と聞いてくる。
その言葉に俺は「うーん」となる。
「考えてない。成り行きだったから」
「そうですね...確かに成り行きですよね。困りましたね」
「ただもし良かったらアイス食べないかな?」
「アイス?」
「ああ。お気に入りのアイスがあるんだよ」
「...じゃあそれを購入しましょう」
「いや。奢るよ。ずっと変な事に巻き込んでいるから」
そして俺は眉を顰める。
それから俺達はコンビニに向かう。
そうして歩いていると長友さんが「ふふ。まるでデートみたいです」と切り出した。
俺は「!!!?!」となりながら長友さんを見る。
長友さんは柔和な顔で俺を見ていた。
「...そんな事を簡単に言わないのよ。全く」
「アハハ。敬語。おかしくなっています」
「...長友さんが変な事を言うからだよ」
「変な事を言っても対応してくれる優しい隣人さんで嬉しいです」
そうしてから歩いていると向こうから男性が歩いて来た。
俺達は退きながら居たが。
その男性が「よお」と俺に向いてきた。
ソイツの顔を見て俺は「...!」となってしまう。
「...久しぶりだな。徹」
「...貴様...」
「久しぶりのおにいちゃんに会えて嬉しいか」
「...嬉しい訳無いだろ。殺すぞマジに」
俺はその顔を忘れない。
その顔は...用場和彦だったから、だ。
俺を見ながら平然とした顔をしている。
何をしているんだコイツ。
坊主頭。
そしてニット帽を被ったイヤリングをしたクソ不良。
というか嫌味な顔だ。
イライラする。
「このクソ浮気野郎が」
「...言うね。俺は浮気したんじゃない。...あくまで相手が可哀想だったから」
「何を言っているんだお前は」
「はは。そのうち分かるよ」
「あ?」
そして和彦は俺の背後に居る長友さんを見る。
長友さんは何かを察した様な顔をしている。
あまりに深刻な見た事の無い暗い顔をしている。
俺はその顔を見ていると和彦が「君、可愛いね。名前は?」と馴れ馴れしく和彦が長友さんに手を出そうとした。
すると長友さんは「触るな」と言ってから手をバシッと叩き落として振り払う。
「おお。怖いね」
「...貴方が浮気相手ですか。...彼から幸せを奪った本人ですか」
「いやいや。別に俺は奪った訳じゃないよ」
「...白々しいですね。信じられない」
「俺は弱い奴らを救っているんだぞ。その言い方は無いだろう」
「どの口が言っているんですか」
俺は「もう止めろ。和彦。お前はもう何十回か地獄に堕ちろ」と言う。
すると和彦は「それが兄に向かっての言葉か?」と話した。
イライラするんだが。
そう思ってから横をすり抜けてから「行こう。長友さん」と手を握る。
そうしていると和彦が長友さんの肩を握った。
「嫌!触らないで!」
そう暴れた長友さんに遂に俺の怒りは臨界点に達した。
それから一歩踏み出して和彦を殴り飛ばす。
そして和彦はまさかの事か。
それとも覚悟していたのか。
「おお痛い」と言いながらワザとらしく怯んでみせる。
だが和彦は余裕そうな漆黒の様な笑みを浮かべて「お前だよ。地獄に堕ちるのは」と続けて闇の様な笑顔を見せた。
「いやーしかし。そんな暴力な奴に付いて行く女もどうかと思うけど」
「...」
「まあそれならそれで良いけど。どっちがクソかな」
そして和彦は「お前の顔が見れて良かったよ。生意気なクソ弟君」と言ってから歩いてから殴られた勢いで飛んだニット帽を被りなおして去って行く。
信じられない屑野郎だ。
クソ忌々しい。
俺はそう思いながら電柱に拳をぶつけた。
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