第4話 とうちゃん


用場さんは甘すぎると思う。

だけど私が何か言える立場じゃ...いや。

立場であると思う。

私は...彼に。

もしかしたら彼が...。


「やめやめ。今は...集中。ハンバーグ...具材は...えっと」


そう言いながら私は横の部屋の用場さんの所に行くのに具材を。

材料を揃えていた。

ひき肉、ニンジン、玉ねぎ、ソースとか等など。

私は材料を見てからそれを用場さんの所に持って行く為...、と思っているとインターフォンが鳴った。


「はい?」

「あ。俺だ。用場だよ」

「...え?どうされたんですか?」

「...何もしてないのもなって思って。...運ぶよ」

「え?そんなの気にしなくて良いんですよ?有難うござ...」


とそこまで話してから私はハッとした。

よ、用場さんが私の部屋に来るって事!?

い、いや。

玄関で渡せば...、と思う。

だけど...うーん!


「ま、まあ良いや。今は家の中には入らないでもらって...」


というか何で私はこんなに恥ずかしいのだろう。

用場さんに見られるのが。

まるで恋をしている乙女だ。

まあそれは無いけれど。

用場さんだから...お隣さんだ。

単なる。


「用場さん」

「よお。これが食材か?」

「そうです。運んで貰って良いですか?」

「...」

「?...どうしました?」

「あの汚い部屋にマジに来るのかお前は」

「汚いなら片しましょう。アハハ」

「...何でそこまでしてくれるんだ」

「え?...い、いや。わ、私の趣味です。アハハ」


私はそう返事をしながら気持ちを隠しながら食材を運んでもらう。

それから私は用場さんの部屋に来た。

中は荒れていた。

というか...これは。


「...すまないな。怒りで破壊してしまった」

「...ですね。...お怪我は無いですか?」

「ああ。馬鹿だと思うよ。今となってはな」

「...いや。私はそうは思いません。用場さんの事...が可哀想です」

「お前はそう言ってくれるんだな」


「優しいな長友」と笑顔を浮かべてくる用場さん。

私は「...優しいですかね?私」と自分に聞く様に話す。

用場さんは「優しいよ。君は」と笑みを浮かべた。

それから私の荷物を持つ。

そして「...何か出来る事あるかな」と聞いてくる。


「...何も無いです。私がやりますから」

「...そうか」

「用場さん。少しだけ片してから食事にしましょうか」

「そうするか。...すまないな」

「いえ。お怪我が無い事が良かったです」

「...優しいなぁ」

「私は優しいんじゃないです。...用場さんが心配なんです」

「それを優しいって言うんだろうけどな」


苦笑する用場さん。

私はその姿を見ながら「...ですかね?」となる。

そして互いにクスクスと笑った。

それから私は「...用場さんは面白い人ですね」と笑顔になる。


「...そうか?俺は...面白いっていうかまあ単純に優しいだけだ」

「ですかね」

「ああ」


そして私は部屋を見渡しながら「じゃあこっちからかた...」まで言った時。

フローリングで滑った。

すると「きゃっ」とまで言った時。

用場さんが「危ない!!!!!」と言って私を受け止めた。

だがその重さに耐えれなかったのか。

そのまま用場さんが私を押し倒す形になる...え。


「...」

「...け、怪我は無いか?」

「は、はい。ですね」

「...そうか。良かった」

「そ、その。用場さん。滅茶苦茶恥ずかしいので...」

「あ。す、すまん!!!!!」


私は用場さんに退いてもらってから胸に手を添える。

心臓がバクバクとなっていた。

高速で振動している。

血管が破裂しそうである。

私は「...」となりながら背後を見る。


よく考えた。

これはマズい状況では無いか、と。

何故なら私は...用場さんと2人きりだ。

そんな事は起こらないと思うけど。


「す、すまなかった」

「...いや。と、とっさに私の頭を守ってくれたんですよね?」

「...そうだな」

「...とうちゃんは優しいで...あ。い、いや!」

「え?」


私は「すいません。昔の親友のあだ名です!」と否定して思いっきり立ち上がった。

それから慌てて私は片づけを始める。

これ以上は無理だ。

あまりにも...彼の事が好きとかじゃ無いけど。

ドキドキする。


「...長友」

「はい!?」

「...いや。すまない。何でもない」

「...あ、はい」


私に声を掛けたがその言葉は聞くべきでは無いと判断したのか。

そのまま黙って片付けになった。

私はゴミを片付けたり壊れたものを捨てたり。

汚いものを片して...よし。


「...埃。ゴミ掃除。...塵取りと...」

「...」

「ぴゃい!?」

「す、すまん。驚かせて」

「ご、ゴメンなさい。何でもかんでも感情が...」

「す、すまん。俺も女子がこの部屋に居るのが信じられなくて」


そして赤くなってから目線を逸らす用場さん。

私は...さっき言った事を思い出す。


とうちゃん


その言葉を。

父親の愛称では無い。

これは...私の記憶にある...少しだけ聞いた事のあるあだ名、だ。

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