第3話 ひび割れる大地

長友が俺の学校にやって来た。

というか彼女は...俺の学校じゃなく。

お嬢様学校に居た。

だけどこっちの平凡な学校に来た。

何故だ?


「用場さん」

「...?...ああ。長友」

「学校の中を案内してくれます?」

「...それは構わないけど...」


休み時間に質問だらけになっていた長友が俺に向いてきた。

俺はその顔を見ながら立ち上がる。

それから歩き出す。

すると長友が後ろをちょこちょことついて来た。


「用場さん」

「...うん?どうした?」

「私自身が...寂しかったので良かったです。知り合いの方が居て」

「...そうか」

「...やっぱり知り合いの方が居るだけでも結構桁が違うので」


長友はそう言いながら俺の説明を受ける。

音楽室、家庭科室、売店、理科室。

そんな感じで次々に案内する俺。

長友はメモしながら聞く。


「...長友」

「はい。用場さん。何でしょうか」

「聞いても良いか。...何でお嬢様学校じゃなくてこっちに来たんだ?」

「いきなり核心をつきますね。...私自身が疲れてきたんですよ」

「...疲れた?」

「人付き合いに疲れました」


そんな感じで告白する様に長友は俺を見る。

それから長友は「...それだけです」と言った。

俺はその長友に謝る。

「すまない」と。

長友は「?」を浮かべた。


「余計な事を聞いたな」

「...全然構いません。こんなつまらない話なら幾らでも」

「...お前と釣り合わせる為に言うとな。...俺、浮気されたんだ」

「え?そうなんですか?彼女さんに...」

「それも浮気相手は俺の兄だ」

「...!」


長友は固まる。

それから「...そうなんですね」と悲しげに言う。

そして足を止める長友。

俺は「長友?」と聞いた。


「...すいません。私以上に深刻ですね」

「お前以上ってのは?」

「あ。...何でもないです。忘れて下さい」


そして長友は苦笑しながら「...私が告白したので告白したんですか」と聞いてくる。

俺は「そうだな」と言いながら歩く。

すると長友は「そうでしたか...」となる。

また足を止めた。


「...その。...私に合わせなくて良いですよ」

「...?...いや。そういうつもりは無いけど。ただ言ってもらった分はお返ししないとって思ったから」

「優しいですね。用場さんは」

「...昔の彼女に言われてな。...当時、好きだった女の子にビシバシ鍛えられた」


長友は「え?」となって動かなくなる。

そして「...それは...どんな女子ですか?」と聞いてきたので。

俺は「そうだな。長髪だった。眼鏡を掛けていた。可愛かったよ。名前も忘れたけど」と言う。

懐かしい記憶だ。


「...そ、そうですか」

「...?」


真っ赤になる長友。

それから「つ、次の時間が始まりそうですね。帰りますか」と言ってくる。

俺は「え?あ、ああ」と返事をした。

そして長友はそそくさと教室に戻って来る。

無言だった。



私は...探している人が居る。

その人は私が助けられた恩人の男の子。

私が困っている時によく助けてくれたのだ。

マイナーな趣味の私に付き合ってくれた。

いつしか...彼が気になっていたのだが。

彼は引っ越してしまった。

他のクラスで名前も知らない。


「...」


私は髪の毛を触りながら用場さんを見る。

授業中なので話し掛ける事は出来ないが...というか。

長髪で眼鏡...。


昔私は近視だった。

だから眼鏡を...掛けていた。

今はもう治ったから掛けてない。

まさか?そんな馬鹿な事ってあるの?


「...」


考えながら私は目元に触れて目線を黒板に向ける。

それから私はノートを書いていく。

だが全く集中が出来ない。

私は何をしているのだろうか。



帰るか。

そう思いながら俺は立ち上がる。

掃除当番でも無いし。

智も部活に行ってしまった。

そう考えながら俺は歩いてから教室のドアを開けた時。


「用場さん」


そう声がした。

俺は「?」を浮かべて背後を見る。

そこに長友が。

その姿に「お、おう?」と返事をする。


「一緒に帰りませんか」

「...あ、ああ。でも俺...彼女に会いに行くぞ」

「...それって浮気した人ですか」

「正式に別れを告げる」

「そうですか。じゃあ私も立ち会います」


言いながら俺を見てくる長友。

しかし俺は...、と思った。

だけど長友はしっかりした目線で俺を射抜く。

俺は溜息を吐いた。


「危険があったら帰ってくれ」


そう告げながら俺は学校から共に出た。

それから歩いて近所の公園に来る。

そこに...里島めぐるが居た。

俺は眉を顰める。


「里島...」

「あ。徹。...え?何で私を苗字で...っていうか誰?その子は」


俺は横に居る長友を見る。

そして目の前のとても可愛らしい感じのギャルを見る。

いやまあ俺から見たら醜いけど。

そう思いながら俺は「今日はな。お前と別れる為に呼んだ」と言う。


「...へ?」

「...俺はこの先もお前と付き合えない」

「...え?な、何で!?もしかしてその子が居るから!?浮気じゃん!」

「それを言うなら貴方の方です」


俺が言おうとした事を横の長友が静かな目線で告げた。

それからかなり厳し目な顔をする。

俺は「?!」となりながら長友を見る。


「私は...長友花林と言います。...しょっぱなから失礼ですが。...貴方は浮気しましたね?」

「...え?わ、私が?そんな事ない」

「...いや。貴方が先に浮気したから浮気に該当しません。今の状況は」

「そ、そんなん事ないもん」


しらじらしいなこのクソ女。

そう思いながら「俺はお前の事を長友と話した。そして決断した。お前を捨てると」と言う。

里島は「え!?待って!」となるが。

俺は「話はそれだけだ」と切り捨ててそのまま踵を返した。


「ま、待って!徹!冗談でしょ!?」

「アホかテメーは。冗談は言わない」

「わた、私、は」

「俺の兄貴と浮気するとはな。...このいかれ野郎め」


そして俺は切り捨ててからそのまま長友と一緒に帰る。

里島が愕然としていたが。

知った事では無い。

そう思いながら俺は長友を見る。


「...有難うな」

「すいません。2人の間に口を挟んで」

「...いや。...すまない。お前が居なかったら怒りでアイツに手を出していたかもだから」

「...ですか」


長友はそう言いながら俺を見る。

俺はその顔に苦笑しながらも柔和に「本当に感謝だ」と言う。

そして家の中に入ろうとした時。

長友が「用場さん」と切り出した。


「...何か食べたい物って有りますか」

「...は?それはどういう意味だ?」

「今日の事を忘れさせたいです」

「...君にそこまでしてもらう必要は...」

「あります。あの場に居ましたから」


俺に力強く向いてくる長友。

何故そんなに?、と思ったが。

納得してから「ハンバーグが食べてみたいな...だけど良いよ。冗談だ」と言うが。

長友は「そうですね。それだったらいっその事...用場さんの部屋の台所借りても良いですか」と話した...は!!!!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る