第2話 潤う世界

因みに俺が家を出た事。

これは今となっては後悔しか無いのかもしれない。

自宅に居れば復讐とか容易かったと思うけど。

実際、怒りに任せて行動した結果がこれだ。

だから何とも言えないけど。


俺は思った。

だったら俺は...じわじわとアイツらを苦しめれば良いと。

ネットに公開するとかそんな甘っちょろいもんじゃない感じで、だ。

俺は思いながら翌日を迎える。

それから俺はドアを開ける。


「あ」

「...?...ああ。長友」

「おはようございます。用場さん」

「...おはよう」


家から出ると長友に会った。

長友は笑顔になりながら俺に手を振る。

俺はその姿を見てから「...長友は何処の学校に通っているんだ?」と聞いてみる。

すると長友はためらいもなく「花蜜高校です」と答えてくれた。


「...ああ。あのお嬢様学校の?」

「そうですね。因みに用場さんはこの近所の県立高校ですか?」

「そうだな。...俺は頭が馬鹿だから」

「そんな事は無いと思います」

「...いや。馬鹿さ。...だから単純な事しか出来ないしな」


そう言いながら俺は眉を顰める。

長友が「まあそれはさておき」と言った。

そして「昨日の煮物は美味しかったですか?」と聞いてくる。

俺は頷く。


「...君は料理も得意なんだな」

「当たり前ですよ。...だって1人暮らしですから」

「...俺は初めての1人暮らしだからもしかしたら何か聞いたりするかも」

「そうですか?...じゃあ存分に聞いて下さいね」

「おう。有難うな」


そして俺は別れてから歩き出そうとした時。

長友が「あの」と言ってきた。

俺は「?」を浮かべて振り返った。

だが長友は「いえ。やっぱり大丈夫です。すいません」と苦笑する。


「どうしたんだ?」

「いえ。...勘違いだと思います」

「勘違い?」

「はい。こっちの話なので問題は無いです」


長友は「それでは。私も学校に行きます」と手を小さく振ってから去って行く。

俺はその様子を見ながら伸びをした。

そして玄関に鍵を掛けた事を確認して歩き出す。

正直重苦しいが。



「それで1人暮らしを始めたの?」

「...そうだな」


2階の教室に来てからドアを開けて入る。

椅子に座って俺は友人の女子、内藤智(ないとうとも)に全てを打ち明けた。

ボブヘアーの可愛い女子。

大切な親友だ。


今までの成り行きとかを。

すると智は「...ネットでばらした方が社会的にも抹殺になると思うけど」と言いながら俺を見てくる。


「実際、俺がしたいのはそれじゃない」

「...ありえないぐらい汚らわしいね」

「まあもう仕方が無いかなって。猿は猿だしな」

「...私だったらお兄さんの部屋、燃やしていると思うけど」

「過激だな。まあでもそれは捕まるしな」

「...うん」


智は考え込む。

俺はその姿を見ながら「お前ならそう言ってくれると思ったけどな」と笑顔になる。

すると智は「初めからおかしいって思ったよ。あの女。だけどまあ変わるかなって思っていたから。全て裏切られた気分」と話した。

それから歯を食いしばる。


「...最低だね」

「まあ本当に最低だから。...俺は...絶対に復讐をじわじわしていくつもりだわ」

「...そうだね。それが良いと思う。私も許せない」


そう言っているとチャイムが鳴った。

それから智は「じゃあまた後で」と言ってから斜め後ろの椅子に腰掛ける。

俺はそれを見送ってから前を見る。

担任が入って来る。


「静かにしてくれよー。今日は転校生を紹介するからな」


そんな先生の言葉に俺達は顔を見合わせる。

というか、え?

そんな雰囲気あった?


「え?転校生?」

「そんな雰囲気あったか?」

「いや。俺も初耳」


そして先生は「まあ急に決まったからな」と苦笑する。

それから「じゃあ入ってくれ。長友さん」ときょ...は?長友?

俺は驚愕しながらドアが開くのを見る。

そこに...長友が立っていた。


「初めまして。ながと...あれ?」


俺を見ながら驚く長友。

そして目をパチクリする。

俺も目をパチクリしながら長友を見る。

すると先生が「?...お前ら知り合いか?」と言ってくる。

ためらいなく長友が俺を紹介した。


「アパートの住んでいるお隣さんです」


そういう感じで、だ。

教室が「「「「「はぁ!!!!?」」」」」となる。

先生も「あれ?用場。お前、独り暮らし始めたのか?」と疑問になる。

うーむ...説明が面倒臭そうだ。


「あ。でも嬉しいです。知り合いが居ないかと思ったので...用場さんが居てくれて助かりました」


駆け寄って来てから俺の手を持つ長友。

そして笑顔になった。

その顔に俺は赤面する。

とても可愛かったから、だ。

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