第3話 喪失の嘆き

ラージェルの呟き


「あぁ師よ貴方を汚してしまった私にどうか魔神の罰を与えてください...私は貴方に対して許されぬ事をした。」



あれから一夜が経って、俺たちはこの世界が異世界で現状俺たちが誘拐されていると言う事も忘れかける程に寝心地が良いベットのせいで大勢の人間が太陽が高く上るまで寝てしまった。


それから遅めの朝食を食べた後若干と言うか素人目に見ても分かる程に憔悴している表情の...確かラージェルと言う人が俺たちがご飯を食べている所に顔を見せて喋りだしだ。


「一先ずあなた方をこの世界に誘拐した事については素直に詫びよう...だが我らも困窮していた。全く異なる世界に頼らねば滅亡してしまう程に...だがあなた方が召喚された事によりこの世界に希望が芽生えた。あなた方の素晴らしい力をどうかこの世界の為に振るって欲しい」


そんな自己中で胡散臭く不敬な事甚だしいと言う感情が芽生えていたがそれでもセリフを必死に飲み込んでいるとクラスの数人を覗いた数名はこの世界が滅ぶのなんて可哀そう助けれる物なら助けたいと言う英雄然とした感情をさらけ出しているのが分かった。


それに対して俺は、バカなのかとも思ったが、今のこの場所で異端は俺だけだった。クラスの中心に居るあの三名も若干戸惑った雰囲気は、見せたが直ぐにそうだそうだと名乗りを上げて仕舞にはクラスの皆でこの世界を助けようと白峰光機が言って、その後に駒形麗夜がそれなら僕も手伝おう君一人だと不安だからね。と言うお決まりのセリフを言って最後に清中琴子さんが、私には何が出来るかまるで分かんないけど皆なら世界だって救えそうだと...。


まぁまぁお決まりのセリフを吐いたことにこいつらにも脳みそが無いのかと思いながら、不愉快に思っていると詳しい事情を聴くためにご飯を食べ終わったら俺たちが召喚されて場所で改めて説明をするとの事で、俺は微妙に不愉快な気持ちを抱えながらも今出来る事なんて無いし仕方が無いかと言う諦めの境地で流れを見守っていた。


「さて貴様たちを召喚した理由は他でもない魔王がこの世界に侵略しに来たからだ。」


王様然とした恰好をして白く長い髭を携える目つきが異様に鋭い人が話し始めた。その姿は、憎き仇敵を語るかのようでどれだけ魔王が恐ろしい存在なのかをそれだけで俺たちに教える様な威圧感に満ちていた。


「奴らの勢力が初めて確認されたのは約一万年前の神話の時代に遡る...がこのことは今の話とは関係ないな後々改めて話そう、そうそれはそうと、嘗ての人界と魔界には交流があり魔王もそれはそれは大変な賢王として名を馳せていたようだ。

だがある日魔王が代替わりした途端に魔人は全て死に絶え悪魔族が魔王を名乗り魔界を完全支配し次はこの人界を滅ぼそうと言うつもりだ」


王様が語ったのは信じられない事実だったそれは何故か俺の心の中でこの出来事は嘘じゃない真実だと言う確信が生まれたのだった。


「悪魔族と我らは100年にかけて戦争を続けその間にも英雄と言われる者たちが幾人も死に絶えた。だが希望は残されていた。卑しくも魔神の物を簒奪し利用した卑しい生存本能によって今日歴史的な瞬間に立ち会ったのだ貴公ら勇者が来たことによってな」


それから王様は俺たちを褒めたたえて俺らがどんな凄いのかを語ったが俺はいまいち楽しくなかった。


何故魔王が人界に侵略したのか?悪魔とはどんな種族なんだそんな疑問が次々と湧き出てこれから俺たちは殺しをすることになると言うのに呑気に英雄気分に酔っているクラスメイトにも嫌気がさして来たが、俺は全てを見て見ぬふりをして、そのまま話を聞き流した。



王様の呟き


魔王...魔王故に魔王と呼ばれ悪魔族の首魁を指す言葉でありこの世界に置いて魔王は絶対悪として名高い...。


「そう呼ばれている奴らと戦争をしてはや200年...時間の流れは速いと聞いたが実際その通りだななぁ我が友よ■■■■...クソッ名前すら呼べぬほどお前はこの世界から消滅したのか」


あぁ余はお前の様な強い王にはなれない嘗ての様に剣を振るい悪魔を切り伏せた剣技も今や見る影も無く私はただ老いてゆく枯草に過ぎん


「故に何を対価として払おうともそれが冒涜足り得ようとも神の身を汚す外法だろうが余が引き受けようこの老いぼれが代償を支払う事で魔王が...否...悪魔の首魁が倒れるのならこれほどうれしい事はない」


魔王の覇道の道の先に見据える物は余には分からぬだがなぁ魔王が死したその先に余は存在するそれだけで良い今はそれだけで良い語り合うのは全てが終わったその先で...だ。



あれから豪勢な料理が並び神の域と表現するしかない程の荘厳な音楽を背景にパーティーが開かれていた。それは、魔王を討伐せし勇者を召喚したとのニュースが国中に広がって、歓迎のパーティーをしているからだ。


「うん美味いな...やはり」


今までの親のご飯より食べたと言えるくらいに懐かしく涙が出てきたがそれは俺だけで他のクラスメイトは、豪勢な食事と音楽に酔いしれて羽目を若干外していた。


...改めて考えれば可笑しい話だ。魔王や悪魔それに異世界召喚は一先ず横に置いとくとして、普通誘拐されたら泣いたり元の場所に戻してってのが一般的な筈で断じてこんな皆にとっては場所も分からないような未知の土地で親の事を一人も喋らないのは可笑しいと思ったのだ。


「まぁさっきと同じことだな所詮今の俺にはそれをどうする手段も力も無い」


あるのはこんな未知の土地に古く懐かしい思いを抱いただけの弱者だ。


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