第3話

 俺はあれからも調べを進めた。その中である一人の男が浮かび上がってきた。子殺しの犯人と関わりのある男。こいつがそそのかしたのかもしれない。


 俺はその男と接触することにした。


「こんにちは」


 耳障りのいい優しい声だった。


「最近子供が殺される事件が多発している」

「そうなんですね」

「お前の仕業か」


 単刀直入に言う。青年は朗らかに笑った。


「違いますよ」


 男との接触では何も得られなかった。気のいい青年だということしかわからなかった。


「先輩、また子殺しですよ」


 後輩に言われ原稿を見る。


 父親が我が子を殺す。家庭は困窮していた。


 胸の潰れるようなニュースだった。そして俺は目を疑った。添付されている写真の隅にあの男が写っている。


「もうこんなことはやめろ」


 再度接触した男に言う。


「僕じゃないですって」

「じゃあなんで犯人全員にお前が関係してるんだ」

「たまたまですよ」


 男は飄々と言ってのける。手が怒りに震える。


「早く帰ったほうがいいですよ」


 男は不意にそう言った。最初は意味がわからなかった。次第に青ざめる。まさか。俺は急いで家に帰った。


 家は静寂に包まれていた。いや、耳を澄ますと水の流れる音が聞こえる。嫌な静かさを割開きながら音の源を目指す。浴室だ。


 浴室では妻が座っていた。


「どうしたんだ」


 声が響く。じゃーじゃーじゃー。水の音。浴槽にはユナが浮いていた。


 警察が妻を連れていく。娘の遺体も持っていかれてしまった。俺はどうすればいい。孤独に押し潰れそうになりながらあの男に再三会うことを決めた。

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