第2話

 子供がないている。

 うるさい。


 思考を投げ打って子供のそばに寄る。


「どうしたのー」


 子供はお腹がすいたようだった。おやつを与えて少し落ち着いた子供をあやしながら、先ほどの思考を反省する。


 わたしは虐待のなか育った。殴る蹴るは当たり前だったし浴槽に沈められたこともある。なんでこんな目に遭うのかと運命を呪いながら生きた。でも過去の話だ。夫にも言っていない。


 でも亡霊のように過去が擦り寄ってくる時がある。子供が泣いたとき、殴れば蹴れば沈めれば、静かになるんじゃないかとよぎる。そんな自分が嫌になる。


 わたしも自分の母親のようになるんじゃないか。そんな不安が離れない。


「こんにちは」


 そんなことを考えていると声をかけられた。


「あ、こんにちは」


 若い男性だった。なんの用かと身構えると子供をあやすように変顔をした。


「大変ですね、お母さん」


 その声に、なんだか泣きそうになってしまった。


「よければ話を聞かせてくれませんか」


 わたしは誘われるまま公園のベンチに座った。

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