嗤う案山子
岸亜里沙
嗤う案山子
これは、僕が田舎の爺ちゃんから聞いた怖い話。
「なあ
田んぼ脇の
「そんなのもちろん知ってるよ。育ててる米とかが、鳥に食われないようにするんだろ」
僕は笑いながら答えます。
「ああ、そうじゃ。だが昔は、今の
「そうなの?どんな感じだったの?」
僕は爺ちゃんの顔を見上げながら訊ねると、爺ちゃんは空を見上げて、少し間を置いて小さい声で言いました。
「昔はの、本物の人間が
「えっ、本物の人間?」
僕はビックリし、口をポカンと開けました。
「
「うん。歴史の授業で習った気がする。
「そうじゃ。昔はワシらの村は貧しかったからのう。養いきれない子供や、働けなくなったワシみたいな老人が、口減らしの対象じゃった。普通は山とかに置き去りにするんじゃが、ワシらの村では口減らしの人間を縛り付け、
「そ、そうだったの?」
「ああ。だがそりゃあ見るのは辛かったなあ。炎天下の中、畑のまん中で縛り付けられて、
爺ちゃんの話を聞いていた僕は、急に誰かの視線を感じ、ふと田んぼの方を見ると、そこには一体の
その顔を見ると、とても不気味に
僕は怖くなり、爺ちゃんにしがみつきました。
でも僕がしがみついたそれは、爺ちゃんではありませんでした。
爺ちゃんそっくりの顔をした
嗤う案山子 岸亜里沙 @kishiarisa
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