第3話 男達は女のどこに惹かれるの?

恋子は、人生が充実していること、恋人に出会えて幸せな日々過ごしていることを、とめどめもなく話し始めた。

「翔太はジェラシーが激しいんです。この前も友人とゲームセンターやカラオケで

遊んでいたら、その中に男はいるかって聞くの、いるって言ったら怒って早く帰れ!って言うんです。なぜだと思います?」

知るかい…辟易し始めた三人は何も言わず下を向いている。

会話に参加したくないのがありありとわかる。

「私がナンパされるからですって」

恋子のこの不遜すぎる自信は一体どこからくるのだろうか。

太っているほど美しいと賛美する国があることを聞いたことがある

翔太の先祖のルーツを調べたいと本気で思った。

雅人と彩の顔を見ると必死に笑いを押し殺している。

その時、恋子の携帯の着信音が鳴った。

「翔太からだわ」

恋子はうん、うんと頷きながら首を上下に振りながら話し、

急に立ち上がると

「翔太から呼び出しがあったので失礼します。今日はご馳走様でした」

と、にこやかに笑いながら言い去って行った。

全員顔を見合わせた。彩が

「今、一体何が起こったのかしら」と呟いた。

「私はあの大女に負けたのね。彼女のどこに魅力があるのかしら?

男の選択基準はどこなの?ねえ、ブスでデブで鈍くさい女のどこが男達の気を引くのか教えて」

もはや言葉も選べないほど気持ちは崩壊していた。

私は雅人に哀願調で言った。  雅人はしばらく考えた後、

「…あくまでも一般論だけど・・・まず、女性達が誤解していることは、

男達は綺麗だけを恋人に求めていないということですよ」

「嘘よ。私の周り男達なんて可愛い子がいたからナンパしたとか、

美人を連れていると、自慢できるとか言っているわ」

「勿論それもある意味事実ですけど」

「男の事実はいろいろあるのね。ああ、全く男は自己中な人種ね」

「それはお互い様じゃないですか。女性達もイケメンで、頭が良くてスポーツ万能な男がいいって言っているし」

「じゃあ、結局男は女に究極何を求めているの?」

「僕の父親が言うには男プライドを満足させてくれて自信をつけさせてくれる女性が理想の女性像だと言っていた」

「はあ?いつも褒めて欲しいって子供みたい」

「そう、男はいつまでも五歳の子供なんだっていつでも褒めて欲しい動物なんだよって。だからいつも母に褒めて欲しんだって僕に本音を漏らしたことがあります。僕も父の気持ちが理解できます」

私は強い口調で言った。

「馬鹿馬鹿しい、なんで気を使って男のプライドを気持ちよくなることばかりいつも考えてあげなくちゃいけないの」

「うん、そうだよね。それが一般的な女性の考えだと思うよ。でも男はプライドという服を着た生き物なんだ。優秀な男、完璧と言われている男程プライドが高い。

プライドを傷つけずに褒めて、ありのままでいられる場所を与えてくれる恋子の存在は安らぎの場所になっているんだと思う。恋子さんは翔太君の求める何かの琴線に触れたんだと思うよ。なんか僕から見ても翔太って難しい男だから」

雅人は慌てて手のひらを左右に振り

「あくまでも一般論です。僕は彩一筋ですから」

と弁解するように言った。

容姿端麗ではなく男達や、翔太が求めていたものの正体は何なのだろうか。

その答えは恋子が解いてくれるのだろうか。

私は次第に恋子という女性に精神も生活も支配されていった。


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