第2話 恋子について謎のはじまり
金曜日学校の帰り、私と彩と由美のボーイフレンド雅人と渋谷の書店に
向かって歩いていた。煩雑に行き交う人々の中を歩いている時、
雅人が小さく叫んだ。
「あっ、あの子だ」
私と彩は雅人の方に視線を移した。雅人が前を見て近づいてくる
女性に声をかけた。
「こんにちは。僕のこと覚えていますか?原宿で後藤君といた時に会った
金城雅人です」
すると目の前の大女は叫ぶような大きな声で言った。
「ああ、あの時の翔太の友達。ええ、ええ、もちろん覚えています」
私は絶句した。この女性が翔太の彼女なのか。
なんという…八十キロ以上はあるだろうか?
なんとかめまいを堪えて再び恋子を凝視した。
翔太は大女が好みだったのか?雅人は私と大女を交互に見ながら言いづらそうに
「あの、翔太君の・・・」と言葉を濁した。
すると彼女は私の方を向き更に大きな声で言った。
「後藤翔太の恋人の坂本恋子です。恋する子供と書いてこいこと言います」
「恋子さん、素敵な名前ですね」私の声は震えていただろう。
「はい、自分でも気に入っています」
「あの、よかったら一緒にこの中にある喫茶店で休憩しませんか?ご馳走します」
何故誘ったのかわからなかった。咄嗟に出た言葉だった。
「いいんですか?」屈託のない恋子の声に私は頷き、
三人に視線を移すと無言で頷いている。
書店のビルの中に併設しているコーヒーショップに入った。
それぞれ好きなドリンクや軽食を注文して、恋子に言った。
「恋子さん遠慮しないで好きなもの何でも頼んでね。今日は私が奢りますから」
「いいんですか?嬉しいです」と言うと、
「えーと、ハンバーガー、ミックスピザ、バナナパフェと・・・
それからアイスココアをお願いします」
私はあっけにとられた。彩や由美達もただ絶句した表情で恋子を凝視している。
運ばれてきたドリンクを飲みながら私は恋子を観察していた。
「恋子さん、母性豊かで明るい雰囲気の方だからさぞ
男性にモテるでしょうね?」
「ええ、モテます。でも私は翔太一筋ですけど」
「翔太君もあなた一筋なのでしょう?」言葉が震えてくる。
「はい、全て好きだと言ってくれます」
恋子は満面の笑顔で言った。笑うと頬のが肉まんのように丸く盛り上がり鼻が隠れた。細く小さな目は瞳が見えない。
だぶついた脂肪がウエストにたっぷりとついている。
醜い。何故こんな醜い女を翔太は選んだのだろう
「お待たせしました」ウェイターが注文した品をテーブルに置いた
と同時にピザを片手に掴み一ピースを口の中に入れた。
そして一人前のピザを数分で食べてしまった。
口の周りにはケチャップがだらしなくついていた。
三人はあっけにとられていた。この女は一体何者なのだ!?
私はこの目の前のデブでブスの醜い女に負けたのだ。
何故?翔太はこの女のどこに惹かれたの?
もはや女としてのプライドは崩壊寸前だった。
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