第32話 悪魔というのは好きなように嘘をつく存在だって知っていました

「お前が世界を作ったモノの一部だというのなら、我らの世界を作ってもらえないだろうか。」

「無理ね、そこまでの力はないわ。それに、破壊を望む種族にそんな手間をかけると思う?」

「それは誤解だ。我らが破壊を望むのではない。我らと同化した人間が破壊を望んでいたのだ。」

「あら、そうなの。じゃあ、今回も破壊を望む人間と同化したっていう事ね。」

「違う。我らと同化できる人間を探していただけだ。確かに、何人かは破壊衝動に耐えられず、離反していったが、ここに残っている者は自制できている。」


「詭弁ね。昨日、あなたは楽しんでいると言ったわ。そして、私が現れた事で、楽しめる相手が現れたとか言ってたわよね。」

「それも本音だ。可能ならば、この世界を我らのための世界にしたい。」

「だったら、好きな星に住めばいいわ。この星系に干渉しないのであれば存在を許すわよ。」

「無理だな。生物でないと同化ができないし、魔力を持った生物など、この星にしか存在しない。」

「水のある星に、有機物を運んで時間をかければ、生物が誕生する可能性は高いわよ。」

「それは数億年単位必要だろう。われらは、そこまでの時間存在できない。」

「だからって、やっとここまで育った人間を譲るなんてできないわよ。」

「人間を育ててどうするつもりなのだ。」

「創造が可能な存在へと進化させるのよ。」

「なぜだ?」

「あなたたちを造った”破滅をもたらすモノ”に抗うためよ。」


「”破滅をもたらすモノ”だと?」

「表現を代えると”空間を喰らうもの”。こっちの方が理解しやすいかしら。」

「それで、その存在が我らを創造したと?」

「いえ、創造ではないです。あいつらの残滓から発生しただけの存在。それが悪魔の正体。」

「馬鹿な!我らはそのような下等な存在ではないわ!」

「人と合体しなければ意思さえ持てず、衝動で行動するだけの存在。それが悪魔の本性よ。」

「馬鹿な!馬鹿な!バカな!」

「えっ、じゃあ、今騙っていたのは……。」

「全部その場限りの嘘よ。」


 黒い悪魔がローブを広げたので、その空間に魔力を流し込む。


「ぐっ、やれ!こいつらを殲滅しろ!」

「赤いのを頼むわ。」

「「了解!」」


「わ、我らは、存在すら許されぬというのか!」

「その思考自体が、合体した王の発想なのよ。」


 私は魔王の身体を魔力で包み込み、全てを消滅させました。


「これで悪魔は滅んだんですか?」

「今回消滅した空間からこぼれてきた悪魔はね。」

「他にも、そういう空間があるんですか!」

「言ったでしょ。”破滅をもたらすモノ”のカスがあれば悪魔は発生してくるの。」

「キリが無いじゃないですか!」

「だから、元を叩かねばならないんだ。」

「カスから悪魔が生まれるような存在をですか……。」

「ここを、安定した平穏な世界にするためには、他に方法がないのよ。どんなに困難であってもね。」


「それで、人間が進化した先って、どんな感じなんですか?」

「純粋知性体。」

「それは?」

「肉体を捨てた精神だけの存在ね。」

「そんな形で存在できるんですか?」

「これまでにも何度かそこまで行ったのよ。でも、長時間の存在はできなかったの。」

「何故、ですか?」

「エネルギーよ。魔力がないと存在を維持できないの。厳密にいえば魔力を保持できる器ね。」

「……、だから今回の人間には魔力を与えたと……。」

「そう。その目的はもう一つ、私たちとの融合よ。」

「それが、どうつながるんですか。」

「子を残す事が可能となるはずよ。」

「あっ!」

「私にとっても初めての事だから、どんな結果になるか分からないけどね。」


「では、私はこのまま魔力を高めればよいのでしょうか?」

「スーザン、あなたには……、できれば私たちの仲間になってほしいの。」

「えっ!」

「悪魔じゃないけど、私たちが融合するには魔力の相性が重要なの。」

「そう言ってましたよね。」

「あなたの魔力は、レイと相性がいいの。」

「レイさんと……。」

「無理強いはできないわ。200年もの間スーザンとしての意識は残るし、少し混乱するかもしれないけど。」

「わ、私はいいんですけど、レイさんは……。」

「スーザンがいいのなら私は大歓迎よ。これだけ魔力の開発された身体と融合するのは初めての事なんだから。」

「わ、私、レイさんの透き通った髪に憧れてたんです。」

「髪や肌の色なんて、色素の配列を変えるだけだからいくらでも変えられるわよ。」

「ホ、ホントですか!」

「ほら、こんな感じよ。」


 スーザンの身体に触れて、髪の色素の並びを変えていきます。


「す、すごいです。」

「じゃあ、本人の同意も得られた事だし、始めましょうか。」


 裸になったレイの身体が銀色の光の粒に分解され、スーザンの身体と重なっていきます。

 私の時と違って、魔力回路の拡張も無理なく行えたようですし、最初から同意している二人はスムーズに溶け込めたようです。


「どうかしら?」

「凄いです!魔力回路が一気に広がって!」

「レイの方は?」

「ウフフッ、これで私も味が分かるようになったし、男を探していいわけね。」

「それで、名前なんですけど。」

「なに?」

「レイの方がいいです。髪も透明にして、肌の色も白くなったし。」

「そう。まあ、あなた達の好きにしていいわよ。」


 私たちに婚姻なんて必要ありません。

 どうせ相手も、50年もすれば死んでしまいます。

 子供は、全員で育てていけばいいし、金銭的な問題はあり得ません。

 なにより、全員の意識が共有できているし、身体を刺激して快感を得るのは気持ちいいので、これからも全員で楽しみたいと思います。


 レイにはアーリアの混乱を鎮めてもらいます。

 国王の消滅を理解させて、議会制の政治体制を作ると共に、周辺国との和平交渉を進めてもらいます。


「どう、進捗は?」

「ムナジ帝国の城壁都市ロリタがイヤらしいですね。女だからって、あからさまに舐めてくるし、あの国は一度滅ぼした方がいいですよ。」

「だったら、皇帝を脅して領主をすげかえればいいじゃない。」

「いいんですか?」

「先に皇帝を代えてもいいわよ。」

「そうしよっかな。あそこの皇子ときたら、傲慢が服を着たような存在ですし。」

「だったら、島流しがいいんじゃない?」

「それ名案です!」


 結局、皇帝と皇子2名、ロリタの領主と副領主を島送りにしたそうです。


 島の方は、結局兵士の集団が殆どの人を従属させ、次第に独裁政権のようになってきています。

 元王女2人と女性騎士は誰の子か分からずに妊娠し、お腹が大きくなってきているようです。


 DCとDIも人が増えてきたので、今は温暖な大河沿いの平地を開墾しているところです。

 魔法を使いこなす住民も増えてきたし、身体強化とシールドの魔道具があるので、人手には困りません。

 広いエリアを切り開いて住居を建て、護岸工事をしたうえで開墾していきます。


 アーリアで見つけたコメと、ムナジで見つけたコーン。

 それに、油を採るためのオリーブやゴマ。

 香辛料となる胡椒や唐辛子にマスタード。

 必要とする植物はいくらでもあります。


 よりよい世界を作って、人類の進化を促すために私たちの取り組みは続きます。



【あとがき】

 完結です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 一か月で終わらせようと思っていたのですが、一日オーバーです。

 次回作は、動画連動にしようかなと思い、準備を進めています。

 30年ぶりの動画作成になりますが、動画制作ソフトにしてもテキスト読み上げソフトにしても、AIによる静止画作成にしても目を見張る感じです。

 それだけ、PCも高性能になってきているし、通信回線も驚くほど早くなっているのを実感しています。

 ビックリですよ。

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DT卒業したら…… モモん @momongakorokoro3

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