第29話 女性同士ならこうやって魔力を高められるんですよ

 島から去る時に、兵士に枯れ枝を集めさせ、火をつけてあげました。

 王女が二人とも魔法を使えないのなら仕方がありません。


 夜はDCの自宅に帰って眠ります。

 スーザンが一緒なので、UNNAの自宅では部屋がありません。


 翌朝、城に戻って進捗会議に参加します。


「それでは、順に進捗状況を報告してください。」

「では、王族の捕縛状況ですが、国王の弟二人について、一人は西の町サイカ領主になりますので、兵を派遣いたしました。」

「到着までどれくらいかかるんですか?」

「片道10日ですので、往復23日見ていただければ捕縛可能と思います。」

「その兵士についてはすぐに呼び戻してください。午後にはサイカまでのゲートを開きますので、兵士と各局の要員を送り込んで該当者の捕縛と混乱の収拾をお願いします。もう一人は?」

「は、はい。もう一人は東のルイード領主ですが、こちらも同様です。」

「分かりました。ルイードも同じようにします。港町ドットはどうなんですか?」

「ドットにはドドンパ宰相の兄が領主として赴任しています。」

「ドットにもゲートを開きます。領地はその3っつですよね。」

「は、はい。」

「王都に残っている親族は?」

「昨日のうちに、6家34名を捕縛して牢にいれてあります。残り8家は本日中に捕縛予定です。」


 他にも報告を受けて、私とスーザンはサイカへと飛行艇で飛びます。1時間で現地に到着し、ゲートを作って兵士を呼び込み、国王の弟を無力化して島へ送ります。

 港町ドットとルイードも同じようにゲートを設置しました。


 午後は、北の敷地との間の壁を撤去して移動を可能にして城に戻ります。


「リズ様、リコ・ブランド前侯爵が嘆願にまいっておりますが?」

「何のですか?」

「彼の嫁がドドンパの娘でして、島送りから除外してほしいと。」

「子供はいますか?」

「今年の春婚姻を結んだばかりで、まだ子はできていません。」

「いいでしょう。会います。」


「あなたの処置は強引すぎます。妻のエリアスはもうブランド家の一員だ。捕縛対象から外すのが当然だろう!」

「課長さん、ブランド家というのは?」

「ドドンパ宰相と懇意にしており、物資の横流し等で不正疑惑の絶えない家です。」

「そうですか。ブランドさんの要望をききいれましょう。」

「本当か!」

「はい。特別に奥さんと一緒に、一族全員を島に送ってあげます。異例のことですよ。」


 王族もしくはドドンパ家と婚姻を結んでいる貴族は多く、3日目には島の人口が400人を超えていました。

 この頃になると、島の中で役割分担ができており、黒曜石採取の山登り組、海で魚貝類を採る漁師組。

 寝床を作る建築組、フルーツを採取する組に別れて働くようになっています。


 最初のうちは偉そうに指図していた国王や宰相でしたが、知識も技術もないことが露見し、厄介者扱いされています。


 そして、王族と貴族の横暴さに怒った兵士たちは、独自にコロニーを作って生活するようになっています。

 女たちも生活能力のある兵士のコロニーを頼る者が現れ、5人の独身女性が兵士側に鞍替えしています。


「王女2人は兵士側に鞍替えしたようですね。」

「これで、兵士たちを帰還させたら面白くなりそうよね。」

「ま、まさか……。」

「いやーね。面白そうだけどやらないわよ。」

「でも、みなさん薄着で色っぽいですよね。」

「薄着っていうか、下着だからね。」

「そういえば、第一王女ってパンツは……履いてませんね。」

「時々見える金色の毛がセクシーよね。」

「そういえば、スーザンって下の毛も赤いの?」

「そうですよ。下だけ金髪だったら変でしょ。」


 ゲートを使ってDCに戻り、食事をして入浴します。

 DCの家に作ったお風呂は、大勢で入れるように広い浴槽を備えたお気に入りのお風呂です。


「な、何で一緒に入るんですか。」

「だって、赤い毛が見たいじゃない。」

「そ、それが理由なんですか!」

「さあ、手をどけてお風呂に入りましょ。」

「こんな、お湯の中に入るなんて初めてですよ。」

「気持ちいいのよ。疲れが抜けてリラックスできるからいらっしゃい。」

「入りますよ……。どこ触ってるんですか。」

「これが、男を知ってる身体なのね。」

「リズ様だって、結婚してるじゃないですか!」

「さあ、魔力の循環よ。お風呂の中で身体を温めると魔力が循環しやすいのよ。」

「あっ、ホントにすごいです。」

「こんなもんじゃないわよ。」

「あっ、あーっ!あっ、ダメです!」

「これで、身体を刺激してやるともっと効果が高くなるのよね。」

「な、何を……。ダ、ダメです!そんなトコ!」


「どうかしら、魔力の方は。」

「……倍に増えた感じがします。」

「あれを毎晩続ければ、あっという間に魔力が増えるわよ。」

「か、身体がもちませんよ……。」

「でも、イヤじゃないでしょ。」

「そ、それは……。」

「どれどれ。」

「あっ、そんな。」

「本当に倍に増えたわね。これなら重力魔法もいけそうね。」

「えっ、んぐっ……。」

「んんっ、……これが相手にかける重力魔法で、これを逆の流れで自分にかけると……。」


 二人の身体が浮き上がります。


「こうやって身体を浮かせて、風魔法を手足から噴射することで空を飛べるわ。」

「わ、分かりましたけど、キスする必要あったんですか?」

「意識を高揚させることで、細かい調整部分が分かったでしょ。」

「あっ、確かに……。」

「これが異性相手だと、性欲が強すぎて魔力回路が収縮しちゃうのよ。だから、同性でないとこういう教え方はできないのよ。」

「でも、身体が反応しちゃうんですけど。」

「自分の身体を確かめてみて。子宮で感じるんじゃなくて、精神(こころ)で感じてるでしょ。」

「……はい。」

「女同士でないと、こういう魔力の高め方はできないのよ。」


 今日は進捗会議の後で、2人で私の屋敷の場所へ行きます。


「さあ、今日はヂュアルブートの練習よ。」

「はい。」

「まず、重力魔法で土を少し浮かせて。」

「はい。」

「そうしたら、風を旋回させて土を抉っていくのよ。」

「縦ですか?」

「そうね。なるべく幅を広げてやってみて。」


 広大な敷地ですが、2時間ほどで全体を耕す事ができました。

 サトウキビは繁殖エリアがあったのでそのままにしておきます。


「つ、疲れました。」

「午後は休んでいいわよ。」

「はい。」


 城に行って課長さんに状況を説明し、農作業の計画をたててもらいます。

 

 こうして、ジャルディアは順当に国として立ち直っていきます。

 魔道照明も適時導入して、治安も回復しています。



「リーズ、アーリア国の様子がおかしいわ。」

「あの付近は穏やかだったはずよね。何があったの?」

「アーリア国が、いきなり周辺の国に攻め込んでいるのよ。」


 情報をくれたのは、エアードラゴンのレイです。

 ガラスのような透き通るロングヘアーと、透明感のある白い肌が特徴です。

 この大陸とは反対側にあるアエソ大陸全体をみてもらっています。


「アーリア国って、そんなに武器とかありましたっけ?」

「それが、高出力の魔法を使っているみたいなの。」

「まあ、強力な魔法士がいれば、国の制圧くらい簡単だけど……。」


 実際にジャルディアを片手間で制圧したのだから、それは間違いありません。



【あとがき】

 伏線回収です。

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