第27話 スーザンはろくろ3台と白磁用の土でドナドナされました

「ろくろの上で土を回転させると、ヘラをあてて反対側を押さえてやれば均一の厚さにできます。」

「へにゃ、また崩れてしまいましたぁ。」

「うむ、確かにこのろくろは便利だ。だが、そんなに薄くしてしまうと、焼いたときにヒビが入ってしまうぞ。」

「それは1300度まで温度を上げる事と、十分に温度を下げてから炉を開けばある程度防げますよ。」

「だが、炉の温度などどうやって。」

「焼き上げてから炉を開くまで、最低半日から1日おきます。」

「そ、そんなにか!」

「あとは、何度も試行して自分で適切なタイミングを掴んでください。」

「あ、ああ、わかった。……それで、このろくろだが……。」

「スーザンと交換で如何でしょうか。」

「で、出戻りだが、そんなのでいいのか?」

「お、お父さん!」

「クルリン3台と白磁用の土10kgでいいですか?」

「ああ、十分だ。」


「わ、私は買われてしまったんですね。」

「そうですね。私の命令に従ってもらいますから。」

「は……い……。」

「それで、出戻りというのは?」

「貴族に嫁いだのですが、1年経っても子供が出来なかったので……。」

「へえ、今時そんな事で離縁されるなんてね。」

「夫の浮気もあったんですけどね。そちらで子供ができたって……。」

「まあ、自由に過ごせるようになったんだからよかったじゃない。」

「今はそう思えます。」


 そのまま城に入って課長さんのところに向かいます。


「騒がしいようですが、何かあったんですか?」

「その、さっきの見回り組が戻ってこないと……。」

「そうですか。ところで、スーザンは今日限りで辞めますから、お願いしますね。」

「「えっ!」」

「今日までのお給料はこちらで用意しますから、退職の手続きをお願いします。」

「リ、リズ様!」

「命令よ。文句ないでしょ。」

「は、はい。」


 そこへ、軽装の兵士が5人やってきた。


「内務局のトーマスだな。」

「は、はい。」

「市中巡回の11名が消えた件で住民から通報があった。女2人を連れた3人組というのはお前たちで間違いないな。」

「は……い。」

「国家反逆の罪で拘束する。」

「えっ!」

「お待ちください。」

「何だお前は。」

「UNNA国議会議員モッティー・マッツの妻リズでございます。」

「なにっ!」

「このような形で私を拘束すれば、外交問題となりますよ。」

「くっ、おい外務局長を呼べ。他の者はこの二人を捕えるのだ!」

「あら、このスーザンは私の従者で、トーマス課長は商業的な交渉中なのですが、それを破談にするおつもりですね。」

「そ、それは、内務局長に……。」

「ああもう、面倒ですね。トーマス課長、臨時の議会を開いて全員招集してください。今すぐです。」

「し、しかし……。」

「ああ、外務局長が来たようですね。」

「なんじゃ、ワシを呼びつけおって。」


 見覚えのある外務局長はゼイゼイと息を切らしています。


「外務局長さん。私UNNAのモッティーの妻ですが、覚えておられますか?」

「うん?……誰じゃお前は。」

「あらイヤだ。アッシュ帝国との終戦調印式でお会いしたじゃありませんか。」

「ああ、そういえば……。それで、何の用じゃ。」

「今日、宰相の息子という方が失踪されました。」

「なにぃ、それは真実か?」

「はっ、イジン殿が市中巡回から戻っておりません。」

「これは、国の存続にかかわる重大な動きの一旦です。」

「どういう事だ。」

「ここでは申し上げられません。議会のメンバーを緊急招集してください。そこでご説明させていただきます。」

「いや、そう言われても……。」

「こうしている間にも、イジン小隊長の命は尽きてしまうかもしれません。万一の場合、局長にその責任がとれますか?」

「ともかく、宰相に報告する。どうするかは宰相に委ねる。」


 外務局長と兵士は、小走りに去っていった。


「り、臨時の議会など開いて、何をするつもりなんだ……。」

「この国の膿を一掃してあげます。」

「どうやって?」

「悪者は全員、島へ送ります。」

「全員なのか?」

「はい。一族全てに責任をとってもらいます。」


 その後、宰相の使いがやってきましたが、議会の席上以外では話さないと突っぱねたので、緊急で招集が行われたようです。


 内務局で待っていると、議会の準備ができたと使いがきました。

 

「議会のメンバー2名は領地駐在のため、緊急で招集できるのはこれで全部になる。10名だ。」

「ありがとうございます。では、始めさせていただきます。」


 200年前の議会は、貴族制度をとっていなかったので全員が普通の国民だったハズ。

 でも、ここに集まった10名は、国王をはじめとして着飾った王妃の貴族の議員。

 全員が一目で分かる姿をしています。

 スーザンは従者として同席しています。


「最初に自己紹介をさせていただきます。私の元の名はシャルロット・ジャルディ。信じられないかもしれませんが、初代議長オスカー・ジャルディの娘です。」


 会場がざわつくが、直接発言する人はいませんでした。


「父がタギリアから独立させたこの国ですが、父が退任した後で不思議な事がおこりました。」

「いったい何を言い出すんだね。早く息子イジンのことを話すんだ!」

「これは、この国の存続にかかわる重大な事なんです。黙って利いていてください。」

「ぐっ……、まあいい、先を話せ。」

「突然、父の姉とかいう人物が現れ、元々この国の王だったと主張し、それを副議長のドドンパという男が後ろ盾となりました。」

「な、何を言い出す気だ。」

「父は一人っ子であり、それは祖父にも確認しましたし、姉など存在するはずもないのです。」

「そんな戯言はいい!イジンはどこにいる!」

「元王族と騙った女はイバノールという一族の出身で、ドドンパの妾です。その息子というのもドドンパの息子。」

「衛兵!この者を捕えよ。世への侮辱である!」

「まあ、それでもまともな政治をしてくれるなら何も言わないつもりだったのですが、200年経っても相変わらずの貴族政治。これ以上は見ていられません。」


 その時、会議室のドアがバーンと乱暴に開けられました。

 兵士を引き連れて入ってきた金髪の男は、確か第二皇子のヨセフでしたか。


「会議中のところ申し訳ございません。不審者がいると通報がありましたのでまいりました。」

「ヨセフ、よいところに来た。その者を捕えよ!」

「はっ!」


 ガチャガチャと音を立てて近づいてくる皇子は、趣味の悪い金色の鎧を身にまとっています。


「リズ様、私が!」

「いいのよスーザン。この人を見下した態度が、ニセモノ王族の正体よ。」

「はい。」

「ゴミムシらしく、這いつくばりなさい。」


 近づいてくる皇子と兵士に対して、5倍の重力をかけると、ガチャガチャと崩れていきます。

 

「続けましょう。そういうわけで、ニセモノの王族と国を欺いたドドンパの一族は追放いたします。」

「なにぃ!」

「該当する方は眠ってください。」


 国王と王妃、宰相と財務局長が眠りにつきます。


「スーザン、余計なものを持って行かないように脱がせて。」

「はい。王妃は?」

「下着姿でいいわよ。」


 ゲートを開いて、私も兵士たちの鎧を剥いでいきます。


「クーデター成功よ。課長さん入ってきて手伝ってください。」


 ドアの外で待機していた課長さんにも手伝ってもらいます。

 まあ、成り行き任せですが、ジャルディア王国を制圧しました。



【あとがき】

 ジャルディア開放。

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