盗賊と魔術王の弟子。
ぽつんと座り込む黒髪のツインテールの幼い少女。
彼女はひとり寂しく、そして目尻に涙をためながら乾パンを落としてこちらを見ている。
その目は恐怖一色にそまりきって酷く怯えており、きっと泣き出すことさえできないほどに心を押し潰されているのだと、その表情から見てとれる。
「あ、あぁ……怖がらせてごめんね、君はここに住んでる子かな?」
突然すぎて少しまだ理解が追いついていないが、それでも女の子を落ち着かせるためにツカサは咄嗟に警戒心を解き、店で子供に対応する時のように優しく柔和な雰囲気で接する。
「ごめんなぁ……お兄ちゃんたちは、ここに悪い人がいるって聞いて、その悪い人を退治しに来たんだけど、まさか君みたいな小さな女の子が攫われているなんて思ってもなかったよ。」
少女は、ツカサのガラリと変わった物腰の柔らかな接し方に涙が引っ込み、首を傾げる。
「君をここに攫ってきた悪い人、どこに行ったか知らないかな?」
「………知らない。」
知らないということは何者かがこの子の意識が眠っている間に運んできた可能性が示唆される。
であれば、この子はこの一件を解決する上でかなり重要な人物であり、最も守ってあげるべき対象でもある。
「アリス、ユーフェル、この子はこの一件で最重要の護衛対象だ。
可能性として、黒幕はこの子を人質として、この子の親や身内に多額の金銭などを請求しているか、もしくは──」
「いやいや、待ちなさいよ………仮にこの子が攫われているとして、どうして全く関係のない夫婦の家の地下室に拉致監禁するのよ………」
「……確かにそうか。
君は本当にさらわれた時のことは覚えてないの?」
「あのね、私ね……攫われてないよ?」
"攫われていない"ということは、本人の意思かもしくは何者かの勧めでここに入っていたことになる。
考えられるのは、あの夫婦の身内で来訪した時に夫婦がこの子をこの地下室に、自ら入るように誘導して閉じ込めた可能性。
だが、マネキンが彼女を守護していてその被害が依頼者の旦那さんにも及んでいたとこを見るに、この部屋に入った原因が夫婦である可能性は極めて低い。
であれば、夫婦が住むより前から………?
「覚えていることを全部話してくれるかしら?」
アリスが少女と同じ位置まで屈んで同じく優しい雰囲気で語りかける。
「あのね、もういつか忘れたけどパパとママと私と一緒にこのお家に住んでたの。」
この家の元入居者。
つまり、今の夫婦より前の家族ということになる。
「いつも楽しくてね、ママは怒ると怖いけどいつもは優しくて、パパも怒ると怖いけどいつもは面白おかしくて楽しかったの。
でもね、ある日ね、剣を持った怖いお兄さん達が入ってきてね、メイドさんや執事さんたちと喧嘩になったの。
その時に、パパとママが慌てた様子で私をこの部屋まで連れてきてね、またあとで迎えに来るから良い子で待ってるのよ、って言って出ていったの。
だからね、私はここでパパとママの帰りをずっと待ってるの。 たまに私とよく遊んでくれてたメイドのジュナが、変なマネキンみたいな見た目で食べ物を運んできてくれたりするし、遊んでくれたりもするの、だから私は寂しくないし、パパとママの帰りをずっと大人しく待ってられるんだよ。」
つまり、彼女の身に起きた話はこうだ。
元は貴族のご令嬢だったようで、ある日盗賊たちが家に強盗してきて、両親がこの子をこの部屋に隠した。
その時の言葉を信じてこの子は今も尚、ここで待ち続けている。
そして食べ物や身の回りの管理は、あのマネキンが一人で全部していた……と。
「嘘……わ、私が、さっき壊したのって………いや、いやいや! 嘘……そんな、だって………」
魂が入っていることは皆知っていた、だがあのマネキンが彼女にとってどれだけ大事な存在なのかなんて俺たちは知らなかった。
彼女もまたそのマネキンが、俺たちによって壊されて魂もこの世に留めていない現実をまだ知らない。
「フェル、落ち着きなさい! 貴女は悪くないわ……あの場面で私が任せたのが悪かったの、貴女のせいじゃない……これは師匠である私の責任よ。
落ち着いて、貴女は何も悪くはないわ。」
「私がこの手で……あの子の唯一の家族を………」
ユーフェルはぽとぽとと涙を流しながら、自身の魔術式を構築した手のひらを見つめる。
ユーフェルは今、目の前の少女に残された唯一の家族であったマネキンを自身の手で奪い壊してしまったことに対する罪悪感と、無責任な自分に対する嫌悪感に包まれて、苛まれていた。
「厄介な依頼だよ、ったく……」
目の前の少女は今も母と父の帰りを信じて待ち続けている。
そんな女の子に、もう既に両親はいないという不確かだが限りなく可能性として高い事を告げられるはずがない。
だが、それを告げない限り、彼女はここを離れないし、あのマネキンが壊れた以上はこの子も餓死一直線だ。
そんな未来、この現場と状況を知った以上は許せるはずがない。
「ふぅ……実はお兄ちゃんな、君のパパとママの知り合──伏せろッ!!」
突如として背を切り刻むような殺意に、ツカサは声を荒らげて少女と共に床に頭を擦り付けるように伏せた。
直後、一室を上下に分断する斬撃がツカサ達の頭上を過ぎ、入口には二本の剣を持った半透明のメイドが立っていた。
「おいおい……とんでもねぇ魂してやがる。」
いわば、亡霊であり、今の彼女は肉体を持たない魂が含む記憶や精神などの類で形成された仮初の非物質な存在。
通常、生物はどれだけの恨みを持っていようとも死後の呪いや念はあれど、彼女のように肉体から物体に、物体から亡霊にと、二回も現世に留まる強い意志は中々ない。
これがもしも、呪いや念の類であればその力は、禁忌の剣など比にならない強力な呪霊となっていただろう。
「アリス、転移魔術だ! この子を連れてひとまず森まで出るぞ!!」
伏せていたアリスがツカサの指示通り、直ぐに転移魔術を展開し、亡霊が次の斬撃を飛ばすと同時にその場にいたツカサたちと少女は姿を消した。
~~~
「ふぅ……あの亡霊メイド、どうせ直ぐに追ってくる。
しかも、あの殺気は尋常じゃないし、手には魔術殺しの魔剣も握ってた。
アリス、ユーフェルとそこの女の子を連れて先に店まで戻っててくれ。
こっから、俺一人でやる……元は俺の仕事だ。」
俺は腰に差している天一桜花を抜き、アリスに渡す。
「ついでにこいつも一緒に持ち帰っててくれ、必要なさそうだ。」
俺にとってその太刀は天下五剣よりも特別な、世界でたった一本の最上級の極上、唯一の太刀。
幾千幾万、いかなる物を賭けられても変え難い太刀だ。
抜刀するにも、それ相応の相手以外には抜きたくない。
「わかったわ……フェル、行くわよ。」
「え?! あ、あの、相手が魔術殺しの魔剣を持ってて亡霊なら、物理が通らない可能性が極めて高いですし、魔術師であり、あの魔剣封じができる私の方が相性勝ちしてませんか?!」
ユーフェルは至極当然な主張をしてくる。
だが、俺はそれを一方的に否定した。
「ダメだ。君が相性で勝っているのは分かる、だけど圧倒的に実力が足りない。
さっきはマネキンに憑依していたから勝てた、けれど今度は質量なんてのが存在するのかも怪しい体だ、急に見切れない速さでとんでくるかもしれない。予想外な剣筋かもしれない。
いいか、俺は俺に任された仕事を誰かに押付けて危険も責任も丸投げするつもりはない。
危険度が勝率を上回った時、俺が守りきれない範囲にいる時はたとえ助っ人だろうとなんだろうと、俺は絶対に許さない。
もう、誰も殺させやしない──分かったら、アリスと一緒に下がれ。」
怒気の混じった主張。
ユーフェルは少し恐怖を感じながらも、サクラの話を聞いた後で悲しみも感じていた。
「分かりました………でもだからって、ツカサさんが死ぬことも私が絶対に許しませんからね!!」
ユーフェルはアリスに手を引かれ、少女と共に俺を背に走り去っていく。
──俺が死ぬことを絶対に許さない……嬉しいことを言ってくれるものだ。
生きなきゃいけない理由ってのが増えるのは別に苦しいだけじゃない、プレッシャーなだけじゃない、時として喜びにもなる。
そして命を懸けた戦いにおいて、いかなる強化魔術よりも効果が極めて高い、意識と肉体の活性化を引き起こす。
人とは単純で、好きな人から生きて帰ってきてねと言われたら、それだけで喜び、それだけでやる気が出る。
相手が相手だ……死ぬなと言われた以上はかすり傷のひとつも無しで帰りたい。
タッタッタッと軽はずみなステップのように、純粋に筋肉と速さで走るのではなく地面と足の密着時間を極めて短縮し、足を交互に蹴り上げ続けて、前傾姿勢でわずか数センチを跳躍しながら体重と推進力で進み続ける走り方。
前方の亡霊が徐々に見え始めた。
亡霊だというのに、浮遊するのではなく柄にもなく走ってくるとは……加えて、彼女の目には殺意と相手を畏怖させるための恐怖支配のような念が混じっている。
彼女を守るために戦っているのは、もう既に分かっている……だが、こちら側があの少女に敵意を持っていないのも分かっていながら刃を向けてくるのは、こちら側としてはお手上げだ。
その場合は、少女にも悪いが今度こそ、この亡霊の魂は空高く舞い上がり、天世まで送り届けてやる。
「すぅ………」
「お嬢様ぉおお!! 返せぇえええええ!!!」
発狂のような訴え、その声量は周囲の小鳥たちが驚き、一斉に飛び上がって逃げていく。
「喋れてたのか……だったら話は早い! 俺たちはあんたと敵対する意思はもうない! 少女も俺たちが保護する、責任をもって彼女は俺たちが保護するから安心してくれ!!」
「黙れ! そうやってこちら側に救いを見せて主や奥様方も騙し、私たちを虐殺したのはお前たちのような見知らぬ所からやってきた冒険者だ!!
信じるものか! 主の命に背く訳にはいかない……唯一の生き残りである、お嬢様までも死なせる訳にはいかない!!
どのような言葉も聞かない! 黙ってお嬢様を私のもとに返せぇええええ!!
それが出来ぬと言うなら、私を黙らせてみろ!!」
鋭く、強大な真空の斬撃が亡霊から放たれ、ギーーンという金属音と共に俺の横に連なって生えていた木々が縦真っ二つに切断された。
「はぁ……会話はできても聞く耳なしか。」
俺は天一桜花と交換で、ある一本の太刀を異空間から引きずり出した。
その太刀は、特徴のない見た目の鋼の太刀。
しかし、その刃にはいかなる害的干渉も状態異常も受けつけない。
目の前の亡霊が物理を無力化する状態は、俺にとっては異常だ。
であれば、この太刀はそれを状態異常と見なし、その一切を否定し、刃は亡霊の首を切り落とす。
「あの嬢ちゃんには悪いが、あんたがこれ以上……その剣を向けてくるなら、俺はあんたを斬り殺す。」
太刀を構え、深く腰を落として、迫り来る亡霊の剣筋を予測する。
相手のベクトルとスピード、そして視線と表情から導き出されるまだ見えない剣筋。
未来視にも等しい俺の眼は、俺がここから一歩も動く必要がないと導き出した。
そしてそれは、目の前の亡霊が殺意を剥き出しながらも俺を殺そうとしない証明である。
俺は構えを解き、ただ柄に手を添えて亡霊を見つめる。
二本の剣は勢いよく振り下ろされ、読みは的中して俺の左右の空気を素早く鋭く斬り裂いた。
「脅しのつもりか?」
「………読んだ?」
亡霊は慌てた様子で咄嗟に跳躍し、それと同時に後退して二本の剣を構え直す。
「がら空きだったぜ……そんな動きで俺に止めてみろだなんて口ぶり、あまりにもお門違いじゃないか?」
亡霊の剣筋が読めたということは、亡霊の隙も見えたということ。
あの亡霊がどう足掻いても対処できない隙、そこがあまりにもがら空きで咄嗟に口から溢れてしまった。
「その程度の剣技じゃ、生前は魔剣頼りってところか、悪いが──構ってやれる時間はない、あの子の事を何も知らない以上は、あんたとの戦闘よりもあの子が優先だ。」
亡霊は二本の剣の握りをより強くし、今までとは遥かに異なった異質な構えをとる。
その様は、二本の長剣を逆さ持ちし、自身の腕と平行に刃が並んだ、短剣などに多い持ち方。
この持ち方は、殴打を掠らせた際に刃による斬撃を追撃できる点などが強いが、それが長剣となれば機動力が落ちた状態での殴打など見切られる上に長剣の最もの強みでもある短剣より優れたリーチや、相手の攻撃を受け流すことなどが出来なくなる。
前者は見てわかるが、後者は押し合いとなれば両刃である西洋剣、すなわち長剣は押し合いで負けた際に自身の刃で腕を負傷するからだ。
「あんた、それが本気で強いと思ってるのか………。
俺が浅いのかもな……いい勉強になる、その持ち方の強み、とことん教えてくれよ。」
~~~
「はぁ……はぁ……ツカサさん、大丈夫ですよね……?」
暫く、ツカサから逃げるように走って着いた先は屋敷から一番近い場所にある村。
目の前には、急に逃げるように駆けてきた三人の女の子に、驚きながらこちらを見ている。
「とりあえず、この子を安全な場所に預けるのが先決よ。
あの亡霊が、この子を守る存在なのに、私たちが転移する前の不意打ち、あの時はこの子もろともツカサを斬ろうとした。
──あの亡霊、たぶん魂そのものに何者かの干渉を受けてるわ。」
「ぼうれい……お化けさんのこと?」
アリスの亡霊というワードに反応した少女は首を傾げながら尋ねてくる。
「えぇ……そうね、この際だから聞いておきたいのだけど、貴女が呼んだジュナというメイドはどういう人だったの?」
あの亡霊が彼女の言っていたジュナの死後の魂であることは間違いない。
だが、メイドでありながらその戦闘能力が凄まじい。
元冒険者や名門の出と言われても納得だ。
「ジュナはねぇ……優しくて、可愛くて、いつも私の隣にいてくれるんだよ! わるーい人が来てもジュナがいればへっちゃらなの!! でも、あの時はジュナがいなかったから、パパとママが焦ってた。
ジュナは、とーっても強いから! いつもパパやママに頼りにされてたの!! お出かけする時もジュナが守ってくれて、どんな時でも私のそばにいてくれて………」
少女の話を聞くに、そのメイドは当時の屋敷の中では当主や使用人たちの中でも別格の戦闘能力を有していたのだろう。
全体的に使用人のレベルが高いわけじゃなくて、あの亡霊だけが異質だったようだ。
「そうだ! 私たち、まだあなたの名前を聞いてなかったね……お名前はなんて言うの?」
ユーフェルがふと思い出したかのように質問する。
その少女は、明るく満面の笑みで答えた。
「私の名前はベル!!」
「ベルちゃんか! 私の名前はユーフェル、気軽にフェルって呼んでね!!」
ユーフェルが語りかけるだけで、ベルは安心と喜びに包まれたような笑みを浮かべる。
こういう場におけるユーフェルの子供の扱い方には、アリスも学ぶものがあると感じた。
「私の名前はアリス! フェルのお姉さんみたいな者よ。」
「フェルお姉ちゃんに、アリスお姉ちゃん!! 私といっぱい仲良くしてくれる?」
仲良くしてくれる? という問にアリスは「え?」と戸惑いを見せるが、ユーフェルは流れるように頷いて答えた。
「もちろん! 私たち、もう友達だよ!!」
「友達!! 私ね、ジュナやメイドさんたち以外に友達ができたことないから、お姉ちゃんたちと友達になれて嬉しい!!」
ユーフェルがベルの頭を撫でて共に微笑んでる様が、まるで姉妹である。
その光景を見ていた村人たちが、警戒を解いたのか、物腰柔らかい雰囲気で話しかけてきた。
「あ、あんたたち……いまその森から出てきたのかい? まさか魔物かなにかに追われて?」
「いや、ちょっと危ない人に追われてたので逃げてきたんです……」
ちょっと危ない人──なんてのはいるはずもない脅威だが、まぁ実際は危ない存在だったので間違いはない。
「そうかいそうかい、この村は王都に近いから王都で剣術を学んだ連中も多い。もう安心だぜ。」
「はい! 頼りになります、ありがとうございます!!」
王都に近い村なので、騎士を目指して剣術を鍛えた者や魔術講師や魔導師を目指して魔術を学んだ者もいるだろう。
そんじょそこらの生半可な盗賊や魔物では、返り討ちにあってしまう程の戦闘能力を持っている。
間違いなく、王都の外で住むなら王都や都の近くにある村や里が理想だ。
「そんなことよりも、あんた達も疲れただろ! 良ければ俺たちにおもてなしさせてくれ!」
村人が、ユーフェルの手をとり、おもてなしをすると言いながら半ば強引に村の中に招き入れた。
村の中に入ってみれば、特に怪しさ等なく女性たちが輪を作って話し合い、子供も元気に走り回って、活気に溢れた村と言えるだろう。
ただ、家屋の裏でひっそりと身を隠している人間が何人かいるのが魔力で分かる。
「わぁ! 私、お屋敷の外に出て、村や里に来るの久しぶりだから楽しい!!」
「そうかい!そうかい!! こんな所で良ければ存分に楽しんでってくれ!!」
誘ってきた村の男が、ベルの笑みに惹かれて自然と笑顔になっていく。
だが、その視線は決してベルの顔ではなく衣装にいっていた。
「師匠……さっき使った魔術っていつでも直ぐに起動できますか?」
「必要ないわ……あんたが感じ取ってるってことは私にだって嫌という程感じ取れてるのよ。
それに、ベルには特殊な防護結界を張ってある……ユーフェルや私、ツカサでもない限りは何人も触れることが叶わないわ。」
「私がベルちゃんのそばにいるので、彼らのことは師匠に任せます。」
「はいはい、子守りは私の不得意な分野だからね。」
ユーフェルが、男とベルの間に割って入り、彼女の両脇に手を通して抱えあげる。
「走ってたから疲れたでしょ? 私が抱っこしてあげようか?」
「わ、私もう赤ちゃんじゃないよ! でも足は痛かった……でも赤ちゃんじゃない!!」
「じゃあおんぶにする?」
「おんぶなら赤ちゃん扱いされない?」
「されないよ! 私だって疲れた時は誰かにおんぶしてもらうんだよ?」
私の提案にベルちゃんが承諾し、私の背にぴたりと張り付くようにベルちゃんを抱えた。
「ちっ……」
確かな舌打ち。微かに聞こえたそれは、村の男から発せられたものだ。
普通なら聞こえていないほどの極小音の舌打ち。
だが、こっちは世界一の魔術師に鍛えられた一番弟子だ。この村の異質な雰囲気と、まるで隠しきれないこの男の怪しさ、その全てを見抜くことぐらい造作もない。
だが、それに気付かれていると思われては負けだ。
戦闘になれば、こちらが圧倒的に有利だが、ベルちゃんに魔術師の戦闘を見せるのは少々気が引ける。
恐怖を与えてしまうかもしれない。
故に、子供の前では荒事は控えたい。
「あの家が、グリン村長の家だ……とりあえず挨拶を交わしてから、すぐにもてなすから、まずは村長に顔を見せてきてくれ!」
「はい、ありがとうございます!」
「配慮、感謝するわ。」
「かんしゃする!」
女三人に対してこの村で私たちを狙っている連中は少なくとも十人以上、大の大人、それも男たちが情けない話だ。
ユーフェルは木製の扉にコンコンと二度指で弾くようにノックした。
響くノック音に、暫くして中から軋むような音が鳴り響き、ガチャリとドアが開いた。
「おぉ! また来てくださったか、旅の人よ!!」
また来た……? 私たちがここに来るのは初めてのはずなのだが、誰かと顔が似ているのだろうか?
「おっと失礼……御三方は初めてか、知り合いに顔が似ていてな。
それよりも、どうせあの男からもてなすと言われたんじゃろ? 言ったからには取り消せんならな、もちろんわしからもあんた達にもてなしをさせてくれ!!」
一人で会話を勝手に進めすぎだが、まるで裏で仕組んでいたか……それとも、ここまで案内した彼がいつもそのような役割を担っているか。
「六よ。」
「六じゃと?」
「あぁ、すみません……こちらの話です。」
「うーーん、うーん!! んん??」
村長と顔を合わせてからベルちゃんがユーフェルの後ろで一生唸っている。
私の後ろで何かを唸って、何かを思い出しそうなのだろうか?
「とりあえず! そんな所に立たせてはなんじゃから、わしの家に入るといい! 最近、王都から新しい茶と菓子を仕入れたんじゃ!! 巷で有名な店の菓子らしくてな、名はたしか……くっきー?じゃったかな。」
クッキー、それは貴族の出なユーフェルが庶民向けに作った、いま街で人気の菓子だ。
「じゃあ、失礼します……」
「しつれいします!」
お邪魔するとすぐに村長が、ユーフェルたちをテーブルの方に招いてくれ、村長が語るユーフェルの作ったクッキーと王都で人気の紅茶を四人分、出してくれた。
「いただきます……」
「ありがたくいただくわ。」
「ありがたくいただくわ!!」
あまりにも露骨な、何かを企んだ視線。
純粋なそれとは異なる、怪しげな笑み。
「おやすみなさい、ベル……」
無邪気で安心しきったベルちゃんは、村長の出した紅茶とクッキーを美味しいと微笑みながら食べる。
ユーフェルとアリスが見るに、少量の睡眠薬が盛られているが、彼女程の年齢なら睡眠作用以外に影響はないだろう。
ここからは、見せられない魔術師の立ち回りだ。
本来なら、ユーフェルも眠ってアリス一人に任せた方が良いのかもしれないが、こういった場も鍛錬と言いそうな彼女の心を読んであえてユーフェルは茶と菓子に口をつけなかった。
ベルちゃんは、口にしてたった数分ほどで意識が飛ぶように眠り、机の上に倒れた。
「これはこれは……うちのベルちゃんはよく眠る子なんですよ……だから、ちょーっと眠たくなるような薬を飲んだだけでもすぐに寝ちゃって………分かってます? 自分たちがやってる事の罪の重さを。」
ユーフェルがベルを抱きかかえ、村長を睨むように見据えながら、背後に向けて探知魔術を放つ。
死角となる背に生体反応を感知する魔術を放つことで、自身の死角を第六感のような魔術で補う。
屋敷にはいる時にアリスが行った生体反応探知魔術を見て覚え、それを現状に活かすという習得の早さ。
「やるじゃない……見て盗む、見て学ぶ、それがさぞ当たり前のようにしてるけど、それを成せるのはごく一部の魔術師だけよ。
フェル、私はあんたを信じて任せるわ。
一切、手助けはしない──ベルという重荷があるかもしれないけど、その子に傷一つつけずに守りながらこの現状を打破してみなさい。」
始まった、アリス式鍛錬術だ。
実戦で、例えどんだけ危険が伴っていようとも関係なく鍛錬をやらせてくる。
「いいんですか? 私はわがままですよ、目標は常に高く、そして完璧に成さないと納得できないんです。」
「やってやりなさい。」
村長が棚に置かれていた不気味な笛をとると、めいっぱい息を吸い、鼓膜が破れるほどの大きさで吹いた。
「へっ……この村に来た時点で、あんた達が何を見抜こうが終わりなんじゃよ!!」
その笛の音を聞いた外の村人たちが、この家に集まってくるのが音でわかる。
「そうですかね? 魔力の探知もできない、トラップも見抜けないあなた達に私が負けるとは到底思えませんけど。」
扉からコンコンとノックされ、村長がカツンと床に靴を叩くと、勢いよく扉が蹴飛ばされ、外から先程の光景とは真逆なまるで盗賊のような大男が入ってくる。
「わりぃが、そこの嬢ちゃんも、あんた達ももう普通の暮らしには戻れねぇ……俺たちの玩具となり、金となるんだ。」
なんとも不愉快な要求だ。
きっとここにツカサさんがいたら、ブチ切れてこの家屋ごと吹き飛ばしてしまっているだろう。
「あなた達が、私たちを捕えられるだけの実力があるのなら……の話ですけどね?」
「ふん! 生意気だけど、そういう女も唆るぜ……おい! 俺の出る幕じゃねぇ、テメェらで片付けちまえ!!」
大男は仲間たちのリーダーらしく、何のために入ってきたのか知らないが、一度また入口から去っていくと今度はユーフェルたちと身長がさほど変わらない男どもが武器を片手にぞろぞろと入ってくる。
「うーん、何がベストかな。」
家屋の中、特に木製となれば炎魔術は厳禁、雷も同じく、岩石や土系もあまり好ましくない、風もだ。
水もそこまで木製家屋の中で扱うには向いていないが、この中であれば仮に家屋が崩壊しても水の力で瞬発的に保護できる。
ベストは水かもしれない。
「村長さん、魚を釣る時はその魚に毒がないかしっかり確認してから捕まえるのが基本ですよ。」
「は? 何言っとるんじゃ、今から犯されバラされ死んでいくのが想像できて気でも狂ったんか?」
「へへへ、こいつは上物ですよ……ガキを抱えている方は身なりこそしょぼいがどっからどう見ても貴族の人間だ……匂いでわかる。
そして、隣にいるあの余裕そうに壁にもたれてる女も体つきはいい、その余裕そうな顔が崩れて泣き叫ぶ顔が見てみてぇ!!」
「うわ、きっしょ……おっと、失礼しました………。」
気持ちの悪いことをほざきながらも盗賊たちは一歩を確実に詰めてきており、彼らはこちらを見定めながらも盗賊としての腕は一流なようだ。
そうだ……そういえば、アリス師匠はなぜそこまでジロジロと見られて選定級冒険者である事が見抜かれないのだろうか?
確か、冒険者カードなどを持っていたはずだ。
正直、ここでの理想は相手が敵わないと判断し、大人しく降参してくれることだ。
であれば、アリス師匠がカードを見せてやれば一発でおしっこ漏らしながら降伏するだろうに。
今回の相手は私だが、彼らにとってはアリス師匠も戦うべき敵の一人、その中に世界最強と謳われている歴代最高の魔術師がいるとなれば、彼らの傲慢な態度も一気に崩れるだろう。
「掛かれぇ!!」
確かな間合い。私はずっと考えながら、頭の片隅で彼らの間合いを測っていた。
どの距離までが彼らにとっての射程であり、それ以上を保てたらベルちゃんが安全になるのだろうと。
私は咄嗟に激しい水流の障壁を展開し、突撃し水流の障壁を通過しようとした盗賊たちを水圧で床に叩きつけた。
「「がはッ?!」」
水流の勢いは、大の大人でも簡単に体の制御を奪われてしまう、水は人が必要不可欠とする中で同時に最も注意し恐れなければならない存在だ。
これがもし、私が相手を殺めるつもりで戦っていたら彼らの体は水圧で突進の勢いと共に全身、肉片すら残らずに消えていた。
私が調整したから生きているのだ。
たかだか、この程度の連中に舐めてかかられた事実には少しばかりショックだが、私もまだまだ精進しなければならないということだろう。
「てめぇ……装備がねぇと思えば、魔術師だったか!! 卑怯な手を使いやがって!!」
「その卑怯にまんまと掛かってくれたなら、何をほざこうとも私の勝ちなんですよ。」
「ふざけやがって……絶対に捕まえてグチャグチャに犯してやる! クソアマがァッ!!」
水流の勢いで起き上がることが出来ない盗賊たちは、必死に両腕で体を起こしたり、障壁から体を抜こうとするが、あまりの圧力にそれが叶わない。
今彼らには、全身に大岩を乗せられているのとそう変わらないほどの重さが負荷されている。
「そこで大人しくしといてくださいね。」
盗賊のチンピラを無力化すれば、次に現れるのは頭角と相場が決まっている。
怒りと悔しさで文句を垂れ続ける賊達の声を聞いて、違和感を感じた先程の大男が再び扉を潜って現れた。
「嬢ちゃんよぉ……えらく生意気じゃねぇか、抵抗すんのは勝手だが、その分だけ俺らの怒りを買うだけだぜぇ?」
「とことん醜いですね……逆ですよ、あなた達がこうやって巫山戯たことを続けていると私たちの怒りが蓄積されるんです。」
頭角は、ユーフェルの真摯な訴えに腹を抱え、吹き出すように笑った。
「ぎゃははは!! テメェらの怒りだって? だからなんだよ、ちょっと魔術が使える程度の貴族様が、調子に乗ってこっちの世界で生きてる俺らを相手にしようってか?」
額に青筋を浮かべているあたり、笑いながらも少し癪に障ったんだろう。
なんとも沸点の低い男だ。
「アリス師匠、自分より背丈の高い近接タイプの敵と戦う時は………」
「あなたの判断に任せると言ったはずよ。」
アリスはユーフェルの質問に一切答える気はなく、ユーフェルはため息を吐くと思えば、満面の笑みで総数十二個にも及ぶ魔術陣を展開した。
「ど、同時……?! て、てめぇ! そんな数の魔術を同時に扱えんのかよ?!」
魔術の同時構築や行使は珍しくはない。
それこそ、炎魔術の練度を上げる際に風魔術などを併用することがある。
ただし、魔術の併用は一般的に二つから三つ。
しかし、大男が対面した目の前の華奢な魔術師は、満面の笑みで一切の焦りや緊張感もなく、堂々と十二個もの魔術陣を展開した。
「降参しますか? 構いませんよ、これは私が持つ二つ目の固有魔術……あなた程度だと、簡単に消し飛ぶかもしれません。」
目の前の彼女は、もう既に大男を見据える目が変わっており、それは先程の子供の遊戯に付き合うような感覚とは違う、敵を討つ一人の魔術師の目。
殺傷に一切の躊躇いもない。
「てめぇ……高ランクの冒険者かよ。」
「いいえ、ブロンズです。」
「なっ?! 冗談言えよ!!ブロンズがこんなに器用な真似できるわけねぇだろ!! 一体誰から教わればブロンズでここまで成長できるってんだ!!」
展開された十二の魔術は、一切の狂いも間違いも起こすことなく、まるで絵の具が溶け合うように色彩を変えてひとつの大きな魔術陣となる。
「お、おい! や、やめろ!! ここは家の中だぞ!! そんなものぶっぱなせば、俺やこの家もろともお前らも終わりだ!!」
「その心配はないわ、魔術が発動したら私の転移魔術で私とこの子達は遠い場所に避難する。」
「て、転移……魔術? さっきから冗談が好きな連中だな、転移魔術なんて歴代の魔術王でも成し遂げた者はいねぇ、時空間を支配した第五の壁を突破した魔術師にだけ成し得る……当代の魔術王だけが……が………」
焦りと恐怖で饒舌になる大男に、アリスはため息を吐きながら懐から硝子のように透き通った一枚のカードを見せつけた。
「あんた達は最初から、私たちに勝ち目なんてないの。
あんた達が相手にしているのは、そのまさしく当代の魔術王……世界最強の人類であるこの私と、次期魔術王である私の弟子のこの子よ。」
大男は腰が抜け、床に倒れて涙ながらに命乞いをする。
「や、やめてくれ! 死にたくねぇ!! お、おれ、俺たちが悪かった!! 何でも言う事を聞く! 騎士どもの縄につく! も、もう悪さはしねぇ!! い、命だけは、命だけは勘弁してくれぇ!!」
彼らの先程の傲慢な態度は打って変わって、今ではもはや戦意の欠片も感じ取れない、これぞまさしく形勢逆転というものである。
床に伏して動くことが叶わない盗賊たちも、恐怖で声すらでないらしく、ユーフェルが徐々に発動へと準備している魔術陣を見つめて涙を流していた。
「た、頼む! わしだけでも命を救ってくれぇ! こ、こいつらはわしらの村を襲って根城にしていた盗賊共じゃ! わしらは関係ない!! わしはまだ死にとうない!!」
隣から縋るように村長さえも命乞いをしてきた。
その哀れすぎる光景にアリスがため息を吐き、ユーフェルが構築した魔術陣にそっと人差し指を当てた。
「あっ──」
バチバチと音が鳴り、魔術陣は中から膨大な魔力がユーフェル自身に返還されていき、最終的に魔術陣は形を留めることが出来ずに崩れて消え去った。
「で、他に攫った人達はどこよ?」
「な、何で……知ってるんだ……でしょうか?」
「当たり前でしょう? 私は魔術王よ、あんた達が攫った人の数ぐらいこの村に近付いた時点で丸わかりよ。
でも、場所はあんた達から吐かせる事にしたの。」
アリスは、虚空から表面が見えない淀んだ禍々しい黒の剣を取り出し、大男の首筋に押し当てる。
「私を知ってるならこの剣も知ってるはずよね、禁忌の剣の一本、黒剣……これに斬られてまともな体でいられると思わない事ね。」
「あ、はひ……言います! 言います!! お、おぃ!! この方たちをあの牢獄まで案内しろ!!」
まるで歯ごたえのない結果となったが、ユーフェルは密かに固有魔術を構築にまで到れたことに喜びを感じていた。
彼女自身、成功するか分からなかった十二個同時の魔術陣構築、それをひとつに束ねるというプロでも至難の業を成し遂げた。
アリスは、そのユーフェルの人外的な成長速度にもはや評価することさえ放棄していた。
~~~
「あんた、狂った演技が特技か?
俺はてっきり本気であんたが聞く耳の持たない面倒な亡霊だと思ったよ。」
「その見解は正しい。私は聞く耳などとうに持たない、肉体など存在しないただの亡霊だ。」
「だが、俺と話せてる……それだけで俺にとっては十分だ。」
あれから暫く、一合二合……と剣と太刀をぶつけ合い、ツカサがやや劣勢ぎみになっていた。
生まれて初めて見る、長剣二刀流での逆さ持ち。
明らかに我流だが、それでも実力が伴っていることで他の熟練剣士より遥かに腕はいい。
生前は、最上級冒険者だった可能性もある。
もしそうなのであれば、俺がいま対面しているこの亡霊はたった一人で大国の何万、何十万という大軍を滅ぼせるだけの戦闘能力を持っているということになる。
マネキンの時もあって侮っていたが、彼女の本領はここまでのものだったとは。
ツカサは打ち合っていく中で、時間がないと言いながらも少し楽しくなっていた。
目の前の久しぶりに見た強い剣士、そんな貴重な相手と打ち合えている事に快楽を感じていた。
お互いが、数メートルという距離をとり、それは今の彼らにとって間合いの外側である。
そこで亡霊が構えを解き、一切の敵意と殺意を消してため息を吐いた。
「貴様ら、何が目的でお嬢様を攫った?」
「いつまでも亡霊のそばにいても仕方がないだろう? 彼女に身寄りがないなら、あるべき所に送ってやるべきだ。」
「まさか……いや、貴様らはお嬢様に危害を加えるようには見えない、児童施設だろうか?」
ツカサは暫く迷った末に片手に三本の指を立ててみせた。
「ひとつ、児童施設に送る。
ふたつ、今の屋敷の持ち主である俺の依頼者にあの子を預かってもらう。
みっつ、俺たちが引き取る。
──三つ目は、児童施設も依頼主も断ってきた時の話だがな、まぁ俺はあの子の意思を尊重してやるつもりだ。
もしあの子が、児童施設は嫌というならひとつの選択肢は消そう。」
「……何故そうまでする?」
「それが依頼だからだ。」
亡霊は二本の剣を腰の鞘に納め、再び深いため息を吐いてツカサを見た。
「………お嬢様の傍にいさせるには危険だと判断した場合、それが剣士として恥じるべき行為だろうと容赦なく行い、私は貴様の首をはねる。
それまでは、見えない聞く耳としてお前たちの隣にいてやろう。」
「急に仲間入りかよ……さっきまで殺すとほざいてたのに、えらく素直に変わったな?」
「戦闘は不要だと思い至ったにすぎない。
私が少しでも、やはり殺すべきだと判断すれば次は容赦しない。」
「面白いことを言うな……あんたが俺に勝てると?」
亡霊は深くため息を吐きながら、面倒ながらも腰の剣の柄に手をかけた。
「あぁ、勝てる……貴様は私に対する決定打を持ち得ない。その太刀も、私の性質を異常と見なす状態異常で物理を通す気だろう? 無駄だ。
私の性質は、世界が認めている……つまり、貴様ごときが異常とほざいたところで当たるはずが──」
キーンという音が後にやってくる、それは語る亡霊のセリフを遮り、やがて更に強風が亡霊の視界と体幹を奪って過ぎ去る。
亡霊は背から地面に倒れ、彼女にとっての上、背にあった木々は斬撃を浴びたかのように真っ二つに切れて悲惨な姿に変わり果てていた。
「これでも、あんたが俺に勝てると?」
「………貴様、私と打ち合える腕を見て最上級冒険者だと思っていたが、その髪と眼に太刀を使う特徴……天下五剣の抜刀斎か?」
倒れた亡霊を見下ろしながら、ツカサはこくりと頷く。
「あぁ、今は冒険者をやめてこういう厄介事の解決屋をしてるんだ。」
「貴様の功績は、生前に嫌という程耳にした。
貴様のような剣術を極めた人間たちは、その種類が違えど等しく尊敬に値する。
まさか、あの天下五剣に認められた男と打ち合っていたとはな……勝てぬわけだ、先程の傲慢な発言は撤回させてくれ。」
「いいや、いいさ。
それよりも、あんたの所のお嬢ちゃんと俺ん所の連れが先に行った、追いかけるぞ。」
「了解した……この先はたしか王都から最も近い村だったはずだ。
生前は、よく交流していた覚えがある。
子供たちの活気に溢れた明るい村だった。」
「そうか、なら特に不安な要素はねぇな。」
「あぁ、だが万が一もありうる──急ごう。」
「おう。」
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