ユーレイ
ぼくはユーレイになぐられる、バターになるまで。唐辛子をフライパンで炒めたときみたいに、ひりつく。ぼくは、ついそっぽ向いた、Mから逃れたくて。
ぼくの痣、人面瘡、溶け出す血液。
見つからない形代を忘れられないでいる。ベビーカーに載せて、飴玉を髪にくつけたその光景。夕方より早い午後に、ぼくは迎えに行ったはずだった。
Mの顔は、ぼくよりも大人びていて、なんだか泥臭いんだった。卑しい、咄嗟にそう思った。ぼくはMを憧れる。
血液に棲みつく寄生虫。身体中を巡っているらしかった。Mを引き剥がそうと、皮を剥いでみたが、徒労に終わった。Mはいつの間にぼくだったのだろう。
夜明けよりも、白昼、出会う夢。
会いたい。ユーレイだとしても。
水面に見惚れるナルキッソスだったとしても、それは恋。ぼくは昼間見る物語に魅せられた。
心強く、消えない人面瘡を胸に。ぼくは夕方になる前の時刻に、大きくため息をつく。シーツの擦れる、波打つ跡。煮えたぎる血管。
震える唇、覗く白い歯から詩。
インサイド、形代を野原に残して。ぼくのままごとは続く。増殖し続ける細胞は昼に浮かぶ月を羨むのだった。
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