2話 出会いと過去

心在(ここあ)。今日からお前と一緒に過ごす女を紹介する。

そう僕の名前を呼ぶ父。

僕は今日生まれて初めて親以外の人に会った。

そう聞くとまるで僕が生まれたばかりか独りぼっちだと思われるが、違う。

僕は、生まれてすぐに謎のハウスに隔離されたらしい。

それに気づいたのは10歳のころだ。

本や食事は母から毎日もらえた。

本をたくさん読むうちに僕は普通の生活をしていないことに気付いた。

ここから出ようとしたことは何万回もある。

しかし、鍵は外側にあり、食事を提供するための小窓のみだ。

読んだ本すらも回収されてしまう。

ゲーム機すらも与えてはくれない。

そんな生活も15年目を迎えようとしている。

いつになったらここから出られて、人と関わることができるのか。

そんなことをずっと考えて生きてきた。

“恋”と言うものをしてみたい。

“恋人つなぎ”と言うもので接触をしてみたい。

“ハグ”と言うもので一つになりたい。

“プロポーズ”と言うもので愛を伝えたい。

“結婚”と言うもので幸せに暮らしたい。

そんな夢は叶えられないと思っていた。

しかし、今、僕の目の前には華奢な女の子が立っている。

僕は目が合った瞬間確信した。

この子は僕の唯一の救世主だと。

これからの生活が大きく変わるのだろう。

そう思った。

しかし、何も変わらなかった。

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