第22話 密会

 数日をかけてレン率いる藩の親善大使がやってきた。

 謁見の間に集まり、私は玉座に腰を落ち着かせている。

「よくきた。レン=フロック。それにその随伴人よ」

此度こたびは我々藩の者が失礼します。良き話し合いになれば、と思います」

「それもそうだな」

 私は玉座から降りる。

「な、なにを!?」

 アストが驚いた顔をする。

「私も一人の人間として戦争を止めたいのだ。悪いか?」

「い、いえ……」

 そう言われてしまえば、アストは黙るしかない。

 私はレンの手をとり、強く握る。

「我々はお互いを尊重し合えるだろう」

「そうですね。そんな世界を俺も見てみたいです」

 レンはそう呟くと耳もとに口を寄せる。

(愛しています)

「ふふ」

 思わず笑みが漏れる。

 アストとハルトは少し悔しそうに顔を歪めている。

 二人には悪いとは思っているけどね。


「さ。こちらになります」

 侍女が藩の者を案内する。

 話し合うと言っても一日で帰すわけにも行くまい。

 時間もかかるだろう。

 となると、私たちの屋敷で寝泊まりしてもらうほかない。

 しかし、あのレンがお泊まりとなると、少し……いやだいぶテンションが上がる。

 彼と一緒に居られるのなら、どんな形でもいい。

 私はレンを愛しているのだから。

 戦場で出会う前、彼は――。

「そろそろアイ様もお休みください」

「ええ」

「それとフロック様との密会はほどほどにしてくださいね」

「なぜ?」

「部下の士気が下がります。場合によっては私利私欲と判断され、反旗を翻す可能性だってあります」

 熟考し、返す。

「そうね。それは困る。ほどほどにしておくわ」

「ありがとうございます」

 なるほど。離反されたら叶わない。

 それならちょっとくらい距離を置くのも構わない。


「……ってあれ?」

 いつの間にかレンの泊まっている部屋の前まで来てしまった。

「その声、アイか?」

 ぎぃっとドアを開けてレンの姿が露わになる。

 整った顔立ち。

 逞しい筋肉。

 浮いた血管。

 どれをとっても彼だと分かる。

 声もいい。

 イケメンだ。

 私の大好きな顔だ。

「あなたのアイです♪」

 私は思いきってレンに抱きつく。

「こらこら。こんなところで。さっ。中にお入り」

 レンはにこやかに笑うと、部屋へ招く。

「なんだか、手慣れているわね」

「そんなことないって」

 それを証明するように手汗を掻いている。

「ふふ。見たいね」

 ギュッと抱きしめられると、私はドキドキする。

 このまま私はどうなっちゃうのだろう。

「やっと会えた。会えたよ」

「レン……」

 ちょっと子どもっぽい彼。

 この時だけだと思うと尊い。

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