第15話 裏切りもの。
「レンはどうするのだろう……」
私はそう呟き、馬車を走らせる。
これから戦場に赴く。
その言葉の重みを感じ、生唾を飲み下す。
しかも今回はただ戦うだけじゃない――私は……。
私は本当に彼と結ばれるのだろうか。
でも今はこうするしかない。
平和のために。
武と知の未来のために。
そのために戦うと決めたのだ。
もう引き返すことはできない。
「前戦司令部と連絡がつきました。すぐに着きます」
「ありがとう。では、さっそく
「はっ。……しかし」
「なんだ。言ってみろ」
私は部下の言葉の続きを待つ。
「今回の戦闘、難民キャンプからの反撃と聞きました。そのような行為許されるのでしょうか?」
「そう思うなら私の言葉を聞いてくれ。父ビリーは……裏切った……」
「なんとっ!?」
私はレンと結ばれるためなら、売国奴にでもなってやる。
もう世界なんて壊れてしまえ。
一時間後。
戦場である難民キャンプに私たち
父ビリーは高らかに宣戦布告をし、軍隊を動かす。
「アイ様……」
「アスト、まだだよ。まだなの」
「はい」
私の考えを知っているアストは心配をしてくれているようだ。
だがこれも世直しだ。
父の望んだ人の革新。
古くなった細胞は切り離さなくちゃいけない。
もう時代は変わったんだよ。
いつまでも老人がトップの座につくことはない。
人も世界も、変わっていくべきなのよ。
そういった時代が来たんだ。
私は変えてみせる。
国も、思想も、人種も越えてつながる。
愛し合える関係を。そんな国を作ってみせる。
世界を。
「作戦概要は以上だ。何かあるか?」
「そうね。私たちが勝った
ガッツポーズをとると、部下たちの顔を見やる。
その闘志に燃えた面々を見ると心の奥底から沸き立つ熱がある。
私は彼らを導く。
思い描く思想の違いから分断と流血をしてきた人類。
だが、まだ変わる時間はある。
進化していける。
人は変わらねば未来を継ぐことなどできない。
武と知を持って最高の
進化していけるのだから。
私たちは歴史を重ねているのだから。
「さ、出陣じゃ――っ!」
父ビリーが大声を上げて進軍を開始する。
その意味も。
思いも。
無駄になるとも知らずに。
敵軍の大将。
そこにレンが見える。
待っていて。レン。
私はこの戦いを終わらせるから。
そして一緒になろう。
今度こそ平和な世界で。
そのためにはまず――。
「押しのけろ! 我が隊の力を見せてやれ!」
高々と声を上げる父。
「さようなら、父上」
私は剣を構え、父ビリーと対峙する。
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