第10話 食後
弁当箱を空けると、ぐちゃぐちゃになっていた。
先ほどの戦闘で弁当箱を振り回していた。
こんなことになるなんて想像していなかった。
何が知の宙、その姫だ。
こんなことも分からないで。
「ごめんなさい。レン。食べなくていいよ」
そう言うと同時、レンは箸で唐揚げをつまむ。
口に運び、嬉しそうに咀嚼する。
「うん。うまい。アイには料理の才もあるな」
「そ、そんなこと……」
嬉しい気持ちもあるし、照れているのもある。
でもそれ以上に申し訳ない。
気を遣わせてしまった。
「大丈夫。形は崩れていても味は一緒だから」
「そんな。こんな見た目じゃ……」
「何を言っているんだ。俺は今まで見た目だけで評価したことはない」
今度はハンバーグをつまむ。
「アイも、その人柄がいいと思ったから好きになったんだ。見た目は作れる。でも中身は違うだろ?」
「うん。うん!!」
力強く頷き返す。
「じゃあ、一緒に食べよう。さ、あーん」
卵焼きをつまみ、私の口元に寄せる。
「あー」
パクッと食べる。
いつもよりも甘く感じた。
そして――。
「おいしい」
「だろ? 味がうまけりゃ、見た目は気にしないさ」
ふくれっ面になる私。
「じゃあ、私の見た目は可愛くないってこと?」
「え……」
ぽろっとキュウリの入ったちくわを落とす。
「ち、違うんだ! キミの見た目がどうこうじゃない。あくまでも俺は弁当の話をしていただけで、キミは特別可愛いのは重々承知で!」
慌てふためくレン。
「じゃあ、私の中身はどうでもいいってこと?」
「そんなわけない! 俺はアイの中身も外見も大好きだ! それは声を大にして言える!」
しばらく無言でいると、さらにたたみかけるようにレンは言葉を紡ぐ。
「ふふっ」
イジワルをした。
いつもならしないけど、でも嬉しかったから。
「大丈夫。分かっているから」
「アイ。ちょっと意地悪じゃないか?」
「うん。でも嬉しかったから。おいしいのでしょう?」
彼も口元を緩める。
「ああ。そうだな。もっと食べていたい。けど……」
「そろそろ部下がきちゅうわね。急いで片付けないと」
そそくさと弁当箱を包む私。
「このお弁当、あなたが持って行って」
「え。でも……」
私はにこやかに微笑みを浮かべる。
「分かった。ありがとう」
そっと距離をとり、武を構えるレン。
そこにレンの部下がやってきた。
「レン様!!」
七瀬さんもいる。
みんなやっとの思いできたのだろう。
「さ。戦争だ」
レンはそう口走り、私に向かって剣をふり下ろしてくる。
かわすと、私はそのまま後方に下がる。
アストと合流するべきね。
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