第7話 約束

「じゃあ、せっかくだから俺はハンバーグを選ぶぜ!」

「いいえ。全て作ってきますね♪」

 料理は初挑戦だけど、料理長に頼めば教えてくれるよね。

「いつ会えるかな……?」

「ふふ。いつでも会えるわよ」

 その言葉に目をパチパチと瞬くレン。

「どういう意味だ?」

「さあ、どうでしょう?」

 クスクスと上品に笑う私。

 困ったように眉根を寄せるレン。

「さ。最後にここのかき氷でも食べよう」

 そろそろ日も傾いてきた。

 いつまでもアストを待たせるわけにもいかない。

「ああ。そうだな」

「もう。レン様、帰りましょうよ。この女は敵なのですよ?」

「敵だからといって邪険に扱う必要もあるまい? 同じ人間なのだから」

「それは……!! そうですが……」

 七瀬さんに言い聞かせるレン。

 私と一緒にお店に入り、三人でかき氷を注文する。

 てんこ盛りのかき氷が運ばれてきて、ビックリ仰天する私。

「こんなに食べられるかな……?」

「大丈夫だ。俺も手伝う」

 おしとやかに笑うレン。

 金属製のスプーンでかき氷を掬うと、ふわふわの口当たりとシロップの甘さが全身を震わせる。

 キーンと頭が痛み、でも止められないおいしさ。

 私たちはしばらく、そのかき氷を楽しんだ。


 未だにドキドキと胸が高鳴る。

 私は幸せ者だ。

 こんなに素敵な人と出会えたなんて。

 また戦場で出会える。

 その時は弁当を渡そう。

「アイ様! やっと会えました!」

 アストが額に脂汗を浮かべながら駆け寄ってくる。

「もう。どこに行っていたのですか?」

「一人でぶらぶらしていただけよ。気にしないで」

 レンと一緒にいたことは秘密にしよう。

 彼との関係は誰にも秘密なのだから。

「気にしますよ。だって一国の姫様なのですよ? その自覚を持ってください」

 アストは口うるさくてかなわないな。

「あなたも自由に行動できて嬉しかったでしょう?」

「そんなことありません!! 自分がどれだけ、あなたを慕っていると思うのです!!」

 怒気をはらんだ声音にビクッとする。

「自分はあなたになら未来を託せると思って志願したのです。そのことを忘れないでください」

「それは……」

 私は口ごもる。

 アストはいい人だ。

 それは否定できない。

 そしてその思いも伝わってきた。

 アストは私が平和をもたらすと本気で信じている。

 恋愛にうつつを抜かしている私よりも。もしかしたら彼よりも本気で平和を望んでいる。

 それは分かっている。

 分かっているけど。

「しっかりしてください」

「私に命令するの?」

 でもつい攻撃的になる。

 だって、平和よりも彼との幸せを願っているのだから――。

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