4話 なんで

side りあ


ひなたが私のことを嫌いなことぐらい、噂で知っていた。

というか、隣のクラスのあゆかちゃんが私に直接教えてくれた。


「ねぇ、りあちゃん

ちょっと言いたいことあるんだけどさ、

トイレ来てくれない?」

いつもでは見ない、怖い表情をしたあゆかちゃんが突然話しかけてきた。

「勿論!全然良いよ!」

小走りでトイレに向かった。


「それで、話って何かな?」

「りあちゃんはあの噂って知ってるかな?」

「どの噂?新田くんのやつ?」

「違うよ〜

知らないみたいだから言うけど」

「うん、教えて!」

「ひなたちゃんはりあちゃんのことが嫌いって知ってた?」

「……知らなかった。

でもひなたは、私の事が嫌いなわけ…ないし」


「そんなの、りあちゃんが知らないだけじゃん?

だって、ななちゃんとりあちゃんとひなたちゃんで仲いい三人組やってるわけでしょ?

ひなたちゃんがわざわざ言うわけないじゃん」

あゆかちゃんは不気味な笑みをする。

この子は、何をどこまで知っているのだろう?

「じゃあ、なんでひなたは

私のことを避けたり、何か危害を加えてこないの?」

「りあちゃんが気づいてないだけで、

もう既にしてるんじゃない?

例えば…………階段から突き落としたり。」

「…いやそんなわけ」

「あたしさぁ、見てたんだよね。

ひなたちゃんが笑いながら、りあちゃんをわざと階段から突き落としているのをね。」

「あれは悪意があったわけじゃなくて、

ただ手が動いただけだったって言ってたし…ひなた」

「それさ、嘘ついてるよ」

「そんなわけないじゃん、嘘つくのもいい加減にしてよ」

「なんでそう言い切れるの?

嘘ついたとかひなたちゃんからしか分かんないじゃんww」

「…そうだよね」


「まぁ、その話は置いといてさ。」

あゆかちゃんはさっきまで笑っていたのに対し、一瞬で真剣な表情になった。

「あの噂も知ってる?りあちゃん?」

「もう知りたくないよ。

知らないままでいたら何も思わなくて済むし…」

「ダメだよ!

全ての真実を知ってからじゃないと

余計モヤモヤしちゃうよ?

てか、もう結構モヤモヤしてるか。」

「じゃあ何?

どうせくだらないことじゃないの?」

「くだらなくはないよ。

噂というか、これは私の解釈だけど。」

「解釈なら全然良いよ。

んで、なに?」


「ひなたちゃんは、……………………………………だと思うんだよね。」

「そうだとしても、私はなにも思わないよ。

それは私に関係ないことだし。」

「関係なくないよ。

だって、もしあの二人がああなったら

りあちゃんの居場所、なくなっちゃうよ?」

「…そんなわけ」

「ひなたちゃんに刺されちゃうかもね〜〜」

「冗談でもそんなこと言わないでよ。

あゆかちゃんには関係ないことなのにどうしてそんなに気にしているの?」

「私は関係あるよ。

ななちゃんのこと、嫌いだもん。」

「たったそれだけじゃん。

関係ないよ」

「はぁ?あるんだけど。」


「ああもう良いよ、チャイム鳴るし帰るね」

私は、あゆかちゃんの話を聞くことが嫌になってトイレを出て教室に帰った。


あゆかちゃんは私達と全く関係がない人間なのに、どうしてあんなことを知っているのかな?

私達三人の中で誰か、言ったの?

そんなわけないか、とモヤモヤしながら、

次の授業の用意をした。



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