3話 理科室

りあとひなたが何かあった噂とか、不仲とかは

これまで一切聞いたことがなかった。

他の人の噂なら聞いたことがある。

新田くんが川原くんのことを好きという噂、あゆかちゃんが露骨に嫌っている人間がいるという噂。

あくまで噂だから何も気にしてはいなかった。

真実を知るのは本人達だから。

そもそも、聞いたことがないんじゃなくて誰にも言われてなかったのだろうか?

それか、最近広まった噂か?


…なんて考えていると理科室に着いた。

りあとひなたは本当にいるのかな?

扉に近づくと、誰かの声が聞こえてきた。


……………りあの声だ。


「ひなた、最近なんでそんなに冷たいの?」

りあもどうやら気づいていたようだ。

自分自身にだけ冷たい対応をしていることを。

「してないよ。」

「私のこと、嫌いなの? 

キーホルダーを壊したり、階段から突き落としたのも、全部嫌いだから?」

「それさ、言ってどうすんの?

ただりあのことが嫌いって分かるだけじゃないの?

言うけど、りあのこと嫌いだよ。」

りあは悲しそうな声で言う。

「わたしはひなたのこと、友達として好きだよ。

今まで、親友だって思って生きてきた」

「私だって、思ってたよ。

りあのこと親友だってね」

「じゃあ、なんで?

いつからそうなったの?

小6の夏から、突然おかしくなったよね?

ひなた」

「ねぇ、掃除終わったよ。

早く教室に帰らない?」

ひなたはりあの話を遮って教室に帰ろうとする。

「待ってよ、なんでそこで終わるの?

ちゃんと話してよ。

私、ひなたが思ってることをちゃんと知って理解したい。」


ひなたは溜息をし、りあに対して言う。

「わたしね、……………………………だから。」

私からの距離じゃ遠すぎて、ひなたが何を言っているか分からない。


「だからって、私のことを嫌う理由にならないよ。」

りあが声を荒げて言った。

「なるよ、邪魔だからさ。」

「じゃあどうしようもないね」

「そうだよ、どうしようもないんだよ。

だからこの話終わりにしない?りあ。」

「ごめん、先に帰るね」

りあは苦しそうな表情をしながら、

もう一つの扉から出て、走っていった。




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