第9話 ファミレス、マクド
また、修ちゃんの夢で起きた。
最初は不思議だったけど、ここ最近は夢に見るのが楽しみになってきた。
今は、いろいろな事向きあわなければいけないとき。でも考えたくない現実に押し潰されそうだった。
だから、現実逃避で修ちゃんの夢を見るんだろう。と結論づけていた。
今日は新宿のハローワークに行くことにしていた。
なんとなく仕事を検索したが、どれにも興味が持てなかった。
帰りに高田馬場駅で降りた。
修ちゃんと別れてからは、降りるのが辛くて、電車で通っても素通りしてきた。
降りると駅の中が綺麗になっており、少し寂しい気持ちがした。7年も経ったんだから、あたり前か。
修ちゃんと一緒に働いていたバイト先の居酒屋はダーツバーに代わっていた。3年くらい前に加奈子さんが体調を崩して、加奈子さんの実家がある千葉の房総に移り住み、店を閉めたと大介から聞いていた。
その店はなくなったが、周りの雰囲気は7年前のまんまだった。
その後、近くにあるファミレスに行った。
そのファミレスは終電がなくなった日に3人で行ったところで、修ちゃんと初めて2人で食事をした場所だった。
コーヒーとチョコレートパフェを頼んだ。
コーヒーはおかわり自由だと修ちゃんに教えてもらった。
修ちゃんは、甘いものが好きだった。パフェを食べると修ちゃんが美味しそうにパフェを食べる顔が思いだされた。
9年前
3人で飲みに行こうと言っていたのに、大介は先に帰った。
「じゃあ2人で行こうか?」と修二に言われた。その瞬間に緊張が走った。2人で?!どうしよう何を話したらいいんだろう?と、落ち着かない、かなめを気にせず、修二は、かなめの前を歩き出した。
いつも行く居酒屋を通り過ぎても、修二は足どりを止めなかった。
ついて行くと、ファミレスに入っていった。
席に着くと「居酒屋じゃないんですね?」とかなめは聞いた。
「西脇って、酒は得意やないやろ?だから今日はええかなと思て」
その当時のかなめは確かにお酒が得意ではなかった。飲み方が分からず、修二と一緒のときは緊張して喉が渇くから、お酒を一気に飲み、酔いがまわり、ペースダウンするということを繰り返していた。
修二はハンバーグセットを頼み、かなめは、たらこスパゲッティを頼んだ。
緊張して味なんて分からなかった。
修二は美味しそうに食べながら、地元に帰って起きた出来事などを話してくれた。
かなめ自身は、自分が何を話したかも覚えてなかった。
駅までの帰り道、修二は「俺、バイト前によく腹へるからマクドに行くねん」と話してくれた。マクドという言い方が東京出身のかなめには、なんとなく可笑しかった。
家に帰っても興奮がおさまらず、修二が話してくれたことを思いだし、その日は眠れなかった。
翌週、修二と同じシフトの日に、高田馬場駅の近くのマックの前まで行った。修二がいるかどうか分からないし、ここのマックかどうかも分からない。居たとしても何と声をかけていいかも分からない。
そのまま引き返えそうと、振り返ると修二がいた。
「西脇!」と驚き「何してるん?入らんの?」と声をかけられた。少し顔が赤くなってるように見えた。
かなめが返答に困っていると、「行くで」と入っていった。続いて入ると「席とってて、何にする?」と言われた。
「じゃあポテトとオレンジジュース」と言うと「それだけでええの?」といい、分かったと列に並んだ。
空いている2人かけの席を見つけたが、テーブルが汚れていたので、紙ナプキン簡単に拭いていると
後ろから「気が利くやん」と言われた。
席につき、お金を払おうとお財布をだすと
「ええよ」と照れたように笑った。
修二は、ハンバーガー2個とコーラにしたようだ。
電子なんとか、とか、機械なんちゃらみたいな本が、修二が持っていたクリアケースから見えた。
理系科目が全くダメなかなめには、読むだけで頭が痛くなりそうだ。
その本について質問してみようかと思ったけど、聞いても分からない。
どうしよう?何か話題はないかと考えてると
「西脇は映画が好きなん?」と聞かれた。
映画は好きだった。高校時代は、小遣いが入ると必ずさおりと一緒に見に行っていた。
「修二さんもですか?」と聞くと
「流行ってるのは何本か見たけど、あとは、ようわからん」と笑った
なぜ、それなら聞いたのか不思議に思ってると、「前に大介と映画の話してて、盛り上がってたやん、それで好きなんやなぁと思て」
「今度お勧めの映画とか教えて」と言われた。
じゃあ、今度一緒に行きましょう、と言えばよかったが、当時のかなめには、まだそんなところまでは頭がまわらなかった。
「修二さんは何が好きなんですか?」と思いきって聞いてみた
「サッカー」と言われた。
修二は中学、高校とサッカー部で、今でも大学の仲間とサッカーしているそうだ。見るのも好きで特にヨーロッパサッカーが好きだと、楽しそうに語ってくれた。
時間はあっという間に過ぎ、バイトに行く時間になった。
2人でバイト先に行くのは、なんだかとても気恥ずかしかった。
それから、ときどき一緒にマクドに行ったり、バイト終わりにファミレスに行くようになった。
ある日、大介から「修二さんと付き合ってんの?」と聞かれた。
「そんなんじゃないよ」と顔を赤くして否定した。
「ふ~ん、マスターからさ、最近よく2人で来たり、帰ったりしてるって、聞いたから、てっきり付き合ってんのかと思った」
マスターからもそんな風に思われてることが恥ずかしかった。
実際に付き合ってはなかった。
マックやファミレスに一緒に行くくらいだし、修二がかなめをどう思ってるか分からなかった。
さおりからは「告っちゃいなよ」と言われたが勇気が持てなかった。
振られたら、今の関係は終わってしまう。バイトも辞めなきゃならないし、そうなれば、もう会えなくなる。それだけは嫌だった。
このままでいたい、という気持ちと、このままじゃ寂しいという気持ちが混じりあっていた。
いつものように、マクドで2人でおしゃべりをしてると、修二から、話題の映画の話をされた。
「友達が面白いって話してて、見てみようかなっと思ってんやけど、西脇も一緒に行かへん?」と言われた。
その映画は今度さおりと見に行く約束していた。
困惑してると
「嫌なら無理にとは言わんけど」と照れているような気まずそうな感じで言われ
「嫌じゃないです」とだけ言うと
修二は笑顔になり「じゃあ来週の土曜か日曜はどう?」と、続けた。約束は土曜の2時に有楽町駅前になった。
2杯目のコーヒーを飲み干し、そろそろ出るかと思い席を経った。
チョコレートパフェが思いのほか重く、腹ごしらえに高田馬場の街を歩いた。
7年前から残ってる店や建物、変わってしまったところなど色々だが、どこに行っても修ちゃんとの思い出が蘇ってきた。
駅に戻ると4時を過ぎたところだ。
まだ何かやってる時間だな、と有楽町に向かい映画を見ることにした。
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