Ep3 不死鳥の翼

城に着いた。

「ここが冥界の王ハデスのいる部屋。この世界の王だからくれぐれも失礼のないように」

そういいながら重たい扉を開ける。


地面には赤い絨毯が敷かれており、上質な模様が描かれていた。そして絨毯の先には玉座がある。玉座の上にはハデスと呼ばれる男が座っており、横には執事らしき者がいた。ハデスの目は青く、背中には先輩と同じような翼が生えている。それに身長は3メートルほどあり、少し細い。年齢は20歳くらいに見え、美しかった。


翠は言う。

「あなたがハデス様ですか?」


ゆったりとハデスは答える。

「そうとも。我がハデスだ。ユイよ、なぜここに羽のない人間を連れてきたのだ」


「何も連絡せず、すみませんでした。この人間の魔力系統はハデス様と一致しております。今は魔力が見えませんが触れればわかるかと」


「ほう」


そういうとハデスはゆっくり立ち上がり、翠の方へ歩いた。目の前に来るとハデスは右手を翠の頭の上にのせた。


バチィッ


電撃が走るような痛みと共に閃光が走る


そして、ハデスは言った。

「確かに我の魔力と酷似しておる。ただ、なぜこやつには羽が生えておらぬのだ。我ら魔族には必ず生えるはずなのだが…」


先輩は答えた。

「羽はそのものの魔力によって生成されるのですが、この者はなぜか厳重に魔力封じの呪いがかけられております。私の力では開錠できませんでしたがハデス様ならなんとかできませんか」


「魔力封じか。型はなのだ」


「α型β型γ型の全てが複雑に迷路のように絡まっております」


ハデスはもう一度翠の頭に手をかけた。今回は電撃のような痛みはない。


「なかなか器用なことをしておるな。だが我には朝飯前だ」


<解錠>


ハデスは呪文を唱えると

その瞬間翠の体を魔法陣の球のようなものが覆った。そして数秒後、少しずつ球が薄くなっていき翠の体が見え始める。


「これはっ…」

先輩は驚きの声をあげる。


「ほう、面白い」

ハデスも感嘆した。


翠の背中からはコウモリの羽ではなく、

緑に燃える不死鳥の翼が生えていた。


「体が…熱い…」

翠は体の熱さに苦しんでいた。


「ハデス様、これは…不死鳥の翼ですか」

先輩はなぜか声が震えている。


「いかにもそうだ。お前は我の息子であるのは間違いないが、ただの魔族ではない。魔族の中でも希少種、不死鳥族だ。不死鳥族はその炎が途絶えぬ限り死なず、魔力も尽きない。間違いなく魔族では最強だ」


「僕ににそんな力が…でも魔族だったらこれからの生活はどうなるんですか!僕には友達もいるんだ」


「それならば問題ない。お前にはまた現世に戻ってもらう」

そしてハデスは続ける。

「我には3人の子がいる。1人がお前だ。しかしもう2人もお前と同様現世へ何者かによってさらわれてしまった。あと2人の子とさらった犯人を捕まえてもらいたい。その間お前はユイとバディだ」


「は、はいっ」

翠は元気よく返事をする。


「もう去られよ」

そう言うと先輩は翠を連れてハデスの城を後にした。


先輩の家。


先輩はにっこり笑って言う

「これからよろしくね!すい!」


「よ、よろしくお願いします!」


部屋の中で薄く緑に光る翠の翼は異様だった。

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WING〜男子高校生、不死鳥になり世界を救う〜 @destination

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