怒涛の乱戦
戦闘が始まってからおよそ三分。
俺は防戦一方の状況に追い込まれていた。
「クソッ、連携上手すぎんだろコイツら!」
上空からはガルーラダが広範囲に拡散する炎をを飛ばし、後方からはヴィイミーが地味に追尾性能のある黒くて禍々しいオーラのエネルギー弾を放つ攻撃、それとこちらを引き摺り込む闇の球体を発生させる魔法を発動してきている。
おまけにランページジャガーが二体の攻撃の隙を埋めるようにして攻撃を仕掛けてくるせいで、未だ良い感じに反撃に転じることができずにいた。
クソ、初手での対応をミスったな。
こうなるくらいなら被弾覚悟で確実に一匹潰せば良かった。
……けど、今更悔やんでも仕方ねえか。
「まずは、どうにかして突破口を見つけねえと……!!」
今から突撃してみるか……?
一応、俺の耐久なら多少強引に距離を詰めても致命傷になることはないだろう。
けど、向こうが俺の接近を感知して退かれたら一番厄介だ。
そうなった場合、AGIにもちょっとだけポイントを振ったとはいえ、俺の機動力だと奴に追いつくよりも先に他のモンスターから横槍が入る可能性が高い。
流石にそれはリスクがデカすぎる。
まだ一か八かの勝負を仕掛けなければ勝ち目を拾えない状況でもないし、もう少し様子見で隙が生じるのを待つ方が賢明だろう。
となれば、狙うべきは奴らが隙を見せる瞬間だ。
理想は、ガルーラダとヴィイミーがそれぞれ炎の熱風と闇の魔法(できればエネルギー弾が理想的)を同時に放った瞬間——それをしてきたら、一気にヴィイミーに突っ込む。
僅かな間だが、攻撃後は無防備な状態になる。
そこを狙えば、俺の足でも余裕で追いつけるはずだ。
仮に攻撃を食らったとしても俺の耐久なら一発程度なら耐えられるだろうし、ランページジャガーのインターセプトもやり過ごせる。
勿論、防御をしくじれば即お陀仏ってことになりかねないが、その時はその時だ。
——多少のリスクを払ってでも賭けにでないと、このままジリ貧のまま終わるだろうしな。
虎視眈々と反撃のタイミングを窺いつつ、もう暫く攻撃を耐え凌げば、ようやく好機が訪れる。
ガルーラダとヴィイミーが、それぞれ拡散する炎熱波と黒いエネルギー弾をほぼ同時に放ってきた。
「——来た!」
瞬間、俺はヴィイミーに向かって突撃を仕掛ける。
立ち塞がる炎の壁を強引に潜り抜け、飛んでくるエネルギー弾は一時的にガード性能を向上させるアビリティ、パワーガードで無理矢理防ぐ。
「ぐ……っ!」
火炎によって全身が焼かれ、ゴリゴリとHPが削れていく。
一瞬で六割くらいHPを持っていかれたが、一方ヴィイミーの攻撃はノーダメでやり過ごすことに成功する。
エネルギー弾だったのはラッキーだった。
「よっしゃオラァ!!」
ここまで来たなら賭けに勝ったも同然だ。
ヴィイミーを射程圏内に捉える直前、案の定ランページジャガーが俺の動きを止めようと飛びかかって来るが——、
「行動が読めてれば、何も怖くはねえんだよ!!」
大盾で攻撃を防ぎ、体勢を崩してから横腹にカウンターの散弾スプレッドショット——射程を短くする代わりに通常よりも攻撃範囲と威力を上昇させる——でランページジャガーを吹っ飛ばす。
それから改めてヴィイミーに肉薄し、超至近距離でショットガンを構え、
「まずは一体、落とさせてもらうぜ」
——弾丸を炸裂させる。
魔法使い系とか狙撃手みたいな遠距離型の後衛は、射程の長さと攻撃範囲のせいで接近は困難ではあるが、逆に言えば近づけさえすれば一方的にブチのめせる。
モンスターだと少し勝手は違うだろうが、魔法での攻撃が主体なら近接戦闘は苦手なはずだろ。
クイックリロードで実質的な手数を増やし、一気に攻撃を畳み掛ける。
そして、一方的に散弾をぶっ放し続ければ、程なくしてヴィイミーは全身をポリゴンの粒子へと四散させるのだった。
HP残り四割、撃破対象はあと二体、か。
「これ、最後までHP保つか……?」
……違えよ、最後まで保たせんだよ。
一対三っていう最大の山場は超えた。
これ以上は無茶をせずとも勝機は見えてきた。
気を取り直して大盾を構え、モンスター二体の攻撃に備える。
相変わらず上空から飛ばしてくる炎の波を避けつつ、隙を見て攻撃を仕掛けるランページジャガーにカウンターの散弾をぶち込む。
さっきまでは三体からの波状攻撃を捌かなきゃならなかったから反撃する余裕が無かったが、ヴィイミーが居なくなった現在であれば安定して殴り返せる。
なんだかんだアイツの放つ闇の引き寄せ球が足を取られて一番厄介だったからな。
機動力を奪われることを気にする必要がなくなれば後はこっちのもんだ。
ガルーラダの攻撃に警戒しつつも少しずつ着実にランページジャガーのHPを削っていき、リキャストの終わったばかりのスプレッドショットを再びぶっ放せば、ようやくランページジャガーを撃破に成功する。
「っしゃあ!」
ランページジャガーの肉体が消滅するのを横目で確認しながら、俺は上空へと視線を向けた。
「——おい、いつまで高みの見物決めてやがるんだよ。いい加減こっちに来て遊ぼうぜ」
指で手招きすると同時、俺はプロヴォークを発動する。
ガルーラは翼を羽ばたかせ、大量の炎熱波を放とうとしていたが、
「、っ」
——来る!
その攻撃を中断。
代わりに、上空から急降下で勢いをつけて直接襲いかかってきた。
プロヴォークの効果だ。
ヘイトを取った敵の行動を直接攻撃に変更させる。
「コイツをずっと待ってたんだよ!!」
念願の直接攻撃——すぐさま大盾を構え、衝突のタイミングに合わせてパワーガードを発動させる。
真っ向からガルーラダの突撃を大盾で受け止めた刹那、全身にとてつもなく重い衝撃がのしかかる。
威力を相殺し切れず、肉体が耐えられる限界以上の負荷がかかる。
HPが残り一割になるまで減少してしまうが、それは向こうも同様だった。
盾で殴りつけたわけでもないのに、ガルーラダはアクセル全開の車両に轢かれたかのような勢いで後方に吹っ飛んでいく。
全身を何度も地面を叩きつけられ、それでも勢いが止まることはなくゴロゴロと転がることでようやく動きが止まる。
——これ以上にない絶好の攻撃タイミングだった。
すぐさま俺は、クイックリロードを発動させながらガルーラダの元へと詰め寄る。
大盾でガルーラダを押さえつけ、ショットガンの銃口を直接突きつけてからスプレッドショットを叩き込む。
「いい加減、これで終わりに……しようぜ!!」
立て続けにMPが完全に底を突くまで引き金を引き続ける。
しかし、弾丸を全て撃ち切っても未だガルーラダの息が残っていた。
動き出す気配はまだない。
攻撃チャンスは続いている。
だったら——、
「おまけの一撃喰らいやがれえええっ!!」
ショットガンを投げ捨て、全体重をかけた大盾プレスを叩き込む。
大盾との衝突がダメージになったのなら、大盾で攻撃してもちゃんとダメージ判定はあるはず。
そう読んでの一撃だったが、俺の予想は当たっていたようだ。
大盾プレスをもろに喰らったガルーラダは動かなくなると、そのまま肉体をポリゴンの粒子に崩壊させるのだった。
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盾を含めた防具での攻撃は、防具に設定された防御力を基に攻撃力に換算されます。
ですので格闘メインで戦うプレイヤーは、腕装備や脚装備をよく新調しているようです。
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