飛んで終わりし連戦よ
『——敵性個体フィースウーズの撃破を確認。これに伴い実戦訓練:Iを終了します。お疲れ様でした。十五秒後、ロビーへと転送します』
ガイドアナウンスが終わるや否や、鬼軍曹殿に音声が切り替わる。
『ふむ、意外とやるようだな未熟な雛鳥よ! だが、この程度で浮かれるなよ。実物のフィースウーズはこれの二十倍は強いのだからな! 理解したのならこれからも血反吐を吐く覚悟で訓練に励むがいい! 吾輩からは以上だ!』
やっぱ相当クセ強えよ、アンタ。
もしかすると、他の陣営の教官もこんななのか?
……いや、流石にそれはないか。そうじゃないと信じたい。
「あとどうでもいいけど、二十倍は強さ盛り過ぎじゃね」
そんなんしたら初心者はおろか中級者とかでも勝つのキツくなるだろ。
でもまあ、本来の難易度が上級者向けに調整されてるのなら納得はいくか。
チュートリアルだから本来の個体より弱く設定されてても何もおかしくはないし、何よりレベル1でも勝てた理由に説明がつく。
「……ま、いいや。とりあえずはこの調子で他の訓練もサクッと終わらせるか」
修了認定試験を受けるには、実戦訓練をVまでクリアする必要がある。
挑戦条件を満たすまであと四つ、戦闘システムとか仕様とか色々確かめながら訓練をこなすとしよう。
そんなことを考えながら、俺はロビーに転送されるのだった。
* * *
II〜Vの内容は似たような展開の繰り返しだったからダイジェストで。
実戦訓練:II。
討伐対象——ラスティゴーレム。
赤錆したような金属で作られた人形型のモンスターで、高い攻撃力と物理耐性を持っているが、動きは鈍重だったから回避しながら弱点らしきコアに散弾ぶち込むだけで簡単に討伐できた。
実戦訓練:III。
討伐対象——ブラットラビット。
全身が真っ赤な毛皮に包まれた巨大角付きウサギで、素早い身のこなしと急所を的確に突いてこようとする行動ルーチンを持つ。
とはいえ、対処自体は簡単だったから、攻撃してきたところを盾でぶん殴って怯みを入れたところにショットガンぶっ放して撃破。
実戦訓練:IV。
討伐対象——マンティピオン。
カマキリのような鎌と蠍のような尻尾を持つキメラ的な昆虫型モンスター。
攻撃の威力がヤバそうなのとパリィ系のアビリティをまだ習得してなかったから、攻撃範囲のギリ外側から散弾バカスカ撃ちまくって勝利。
何故か弾を避けられまくって長期戦になりかけたが、勝ったからまあよし。
ちなみにこいつは、フィースウーズよりもずっとデカかった。
虫がダメな人はかなりキツい相手だろうなあと思いました(小並感)。
実戦訓練:V。
討伐対象——ハーリスタス。
とにかく頑丈な岩石の甲羅を背負った巨大リクガメみたいなモンスターで、見た目通りにクッソ硬くて全然弾丸が通らなくてかなりグダったけど、最終的に無理矢理ひっくり返して動けなくなったところを集中砲火。
甲羅とは対照的に腹部は結構柔らかかったおかげで、ひっくり返してからはあっという間に倒せた。
——というわけで回想終わり!
「よし、終わったぞ。どうだ、見てたか鬼軍曹さんよ!」
『……ほう、見かけによらず中々やるようだな。よろしい、ならば修了試験の挑戦を許可しよう! 合格した暁には、貴様を未熟な雛鳥ではなく一匹の鷹と認め、正式に我がセプス=アーテル防衛戦線の隊員に迎え入れようではないか!』
「あ、それはどっちでもいいや」
チュートリアルさえ終えられればそれでいいし。
『貴様の意思は関係ない!!』
「やっぱ理不尽だな、おい!」
……まあいいや。
さっさと修了試験をクリアしてチュートリアルを終わらせるとしよう。
——けど、その前に。
「一旦、ステータスを強化してからだな」
————————————
PN:アラヤ
Lv.6
所持金:1000ガル
レンジ:クロス
ポジション:ガンナー
クラス:タンク
HP(生命力):50
MP(魔力):30
STR(筋力):20
VIT(耐久):25
INT(知性):10
MIN(精神):25
AGI(敏捷):15
DEX(器用):70
LUC(幸運):10
アビリティ
・スプレッドショット
・パワーガード
・クイックリロード
・プロヴォーク
装備
メイン:旧式散弾銃
サブ:タワーシールド
頭:-
胴:支給隊服(上)
腕:革の手袋
腰:支給隊服(下)
脚:戦闘ブーツ
アクセサリ:-
————————————
実戦訓練とだけあって、クリアすればしっかりと経験値を入手しており、レベルもちょっと上がり、それに伴ってステータスポイントも獲得していた。
6レベになったことで獲得したポイントは25。
なので、とりあえず手数を増やすのとDPSを上げる意味合いでMPに10ポイント、大盾を扱いやすくする為にSTRにも10ポイント、そして機動力があまりに物足りなかったのでAGIに残りの5を割り振ってみた。
これでどう転ぶかは分からないが、まあなんとかなるだろ。
訓練を重ねる間にアビリティも新規に習得していたしな。
一定時間リロード時間を短縮するクイックリロード。
敵のヘイトをこちらに向け、行動を阻害し、攻撃を誘うプロヴォーク。
どちらも何度か使ってみたが、使い勝手としては悪くない。
思うところもないわけではないが、序盤で習得できるアビリティであることを鑑みればマイナス評価を下すまでもない感じの性能だった。
とまあ、こんな感じにステ振りを完了させてから、改めて端末を操作する。
選択するのは実戦訓練五つをクリアしたことでアンロックされた『修了認定試験』——選択後、再びシミュレーションルームに転送されると、さっきまでとは違う景色が眼前に広がっていた。
「おお……色々と変わってるな」
広さが野球グラウンドくらいに変わっていて、ステージも一面真っ白な空間から荒野に変わっている。
仮想空間だからできた芸当なのだろうが……やっぱ仮想世界で仮想空間に入るってよく分からねえことになってんな。
などと思っていると、鬼軍曹殿の声が聞こえてくる。
『戻ってきたか、未熟な雛鳥! では早速、これから修了試験を開始する! 合格条件は、愚かにも我がセプス=アーテルに侵攻を仕掛ける不届き者——ガルーラダ、ランページジャガー、ヴィイミー三体の撃破だ!』
「……ん、急に難易度跳ね上がってね?」
『当然だ! この試験は実際に戦うことを想定して作られているのだからな! 戦場では一対多数で戦うことも少なくない! まさか貴様は、常に一対一で戦えるなどと甘えた考えを持っているわけではないだろうな!? そんな腑抜けた思考では、戦場で生き残ることは不可能だ!』
「まあ……軍曹殿の言う事も分からんでもないけどよ」
とはいえ、いくらなんでも一気に難易度上げすぎだろ。
仮に実戦訓練のモンスターくらいの強さだったとしても、初心者が同時に三体相手取るのは結構厳しいんじゃねえの?
疑問を抱くも、前方に三体のモンスターが出現する。
炎のようなオーラを纏った鷹のような怪鳥、ジャガーっぽい見た目をした二足歩行型の獣、それから顔面の大半が前髪で覆われ、風船みたいなシルエットをした宙に浮かぶ人形のモンスターだ。
「チッ、全部厄介そうなやつじゃん」
空を飛ぶ、動きがかなり速い、恐らく魔法を使ってくる……どれも俺の戦闘スタイルとは相性が良くない。
一番マシなのが人形、その次がジャガー、そして最もダルいのが鳥か。
普通のガンナーなら鳥を相手にするが一番楽なんだろうけど、俺のエイム+ショットガンの組み合わせだと当てるのに一苦労しそうなんだよな。
でも逆に、他二体は面倒ってだけでどうとでもなる。
「ま、とりあえず……やれるだけやってみるか」
これしきの逆境、ソマガのクソ敵に比べれが可愛いもんだ。
両手にそれぞれの武器を生成し、戦闘態勢に移行する。
STRを伸ばしたおかげで大盾を楽に持ち上げられるようになっていた。
そして、武器を構えたところで、鬼軍曹が大きく叫ぶ。
『準備はできたようだな! それでは試験を開始する! 雛鳥よ、貴様の実力が巣を飛び立つのに相応しいかどうか見極めさせてもらうぞ!』
瞬間、三体のモンスターが一斉に俺に襲いかかって来た。
————————————
レベルアップしてもポイントを振らなければステータスは成長しません。
この仕様を利用して低レベル攻略を挑むプレイヤーもいるとかいないとか。
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