第6話 ニューデバイス

_____今回の装置はなかなか面白いぞ。


毎回、DAVIDさんの相談者さんへの話を聞いているうちに、新しい装置を考える。

それが僕にとっては自分の力を試す為の楽しい時間だ。今回も勿論、山内さんの話しを聞き、そしてDAVIDさんの考えている事を想像した上で最大の結果を出す為の装置を考えたつもりだ。その中に自分なりのユーモアを少しだけ注入してみる。

最終的に面白い結果となった時は言葉に出来ない程の興奮を覚える___。

これが機械マニアの人間にとっての娯楽なのかもしれない。


刺激のない生活、単調な仕事は本当につまらない。

毎日毎日が違う表情の一日にしたい。

まさしくDAVIDさんのいるこの場所は、僕の為の場所だ。毎日がカラフルで斬新だ。その趣味の様な事柄が全て仕事へと繋がるのだから・・・。

___


この間、山内さんとお会いした時に細かくチェックしておいた山内さんの皮膚感に合わせて、まずはフェイクスキンを自然に作り上げる。何となく特殊メイクにも似た感じだがもっと実用的かつ機能的なアイテムだ。

非常に薄いシリコン素材を使用して、山内さんの皮膚に合わせる。肌色やしわ感なども精密に再現していく。そう、フェイクな世界がよりリアルを作り上げるのだ。

そして、その出来上がったフェイクスキンの内側に、折り曲げる事が可能な程の柔らかい特殊素材から出来ている極薄の板状スピーカーマイクを仕込む。これで山内さんの半径15Mまでの音なら、かなり小さな音でも拾えるし、こちらからの音声も山内さんの耳にダイレクトに届けられる事になっている。

また、僕達が話している言葉は山内さんには聞こえるが、他の周りにいる人達ではその音声を拾う事は難しい仕組みとなっている。

スピーカーからの音漏れはほとんどないと言っても過言ではないが、万が一聞きとれるとしたら、それは犬くらいのものだろう。

更にはこの表面を殴られたりなんかしても、この板状の装置は壊れる事がないくらい耐強度性能に優れている。もちろん、フェイクスキンも簡単に剥がれる事は無い。

まさしく、その人の体の一部となるのだ。

そして、もう一つの装置は家の中に仕込む超小型スピーカーマイク。

こちらも前もって、ご主人や息子さんといつも一緒になる可能性の高い部屋の写真を送ってもらっていた。いわゆる、カメレオン的な作りに仕上げ、ただ隠すだけでなく同化するように仕上げる。我ながら完璧な作りだ・・・。

この装置も音が拾えるようにするのと同時に、こちらから仕掛けた音も出せるようになっている。若干ホラームービーが好きな僕は、そういう場面でよくあるシーンも再現してみたくなった為、高性能立体スピーカーを搭載してみた。

その為、このスピーカーから聞こえる音は臨場感あふれるダイナミックな音となっているので本物さながらと言って良いほど凄くリアルな音声を再現するのだ。

勿論、これら全ての装置の機能についてはDAVIDさんの了承済みだ。

当日、山内さんが良い演技をしてくれたら、この音響効果も絶大なものとなる予定だから、その時を考えるだけで楽しくなってくる・・・。


____



「DAVIDさん、装置が完成しました。この間話していた、山内さんの耳の後ろに付ける小型スピーカーマイク内蔵フェイクスキンと、部屋に置くカメレオンスピーカーマイクです。これでとりあえずは準備完了です。後は、山内さんの演技次第で効果音を出す予定ですが、それによりさらなる体験を皆さんにしてもらう事になります。」


「有難う、JACK!良い感じに出来上がったね。いつもの事ながら素晴らしいアイデアと装置だよ。これだと皮膚の上から付いていても、これがマイクだなんて事はプロが見ても分からないだろう。JACKの作品はどれも芸術的だよ。毎度の事ながら流石としか言いようがないね。」


いつもDAVIDさんは素直に感想を述べてくれるからこちらも頑張れる。

僕は褒められて伸びる性格だというのを最大限に利用してくれているんだよな。


「嬉しいです。DAVIDさんの話を聞いていると、どんどんとアイデアが湧いてきて、こんなのを作ればより上手くいくかな?と思ったりして。凄くイメージも湧きやすいんです。」


___JACKの生み出した装置は本当に素晴らしい。彼との出会いがなければここまでの大胆な相談所はやれなかっただろうな。こちらこそ、君がいるから無理な戦略でも組んでいけるんだよね。


「DAVIDさん、それではそろそろ山内さんとコンタクト取って、決行する日取りを決めようと思いますが準備はいかがですか?」


「ああ、頼む。こちらも大体の戦略は出来上がっている。あとは山内さん次第でどこまで持っていけるかだけど、最後の山内さんの表情を見ていたら、最終的にはかなり良い結果を生み出しそうだね。シナリオは常にその場面場面で変わるからね。それが面白いんだ。依頼者の想いが形になる時だからね。」


さあ、いよいよ始まるぞ。山内さんによる復讐劇が。新しい妻、そして母親を見たら二人はさぞかし驚くだろうな・・・。そしてまだ明かされていないDAVIDさんの指示が当日分かる。これが物凄く個人的に楽しみだったりする。

遠隔で行われるDAVIDさんの会話のコントロール。

今回はどんな風に山内さんを操るのかが楽しみだ・・・。


さあ、いざ決行____。


_____


(山内さんこんにちは、いよいよこちらの準備も整いましたので、日にちを決めたいのですがよろしいでしょうか?)


先日山内さんから伺っていたメッセージアプリを使って僕は山内さんと連絡を取り合う事にしていた。

勿論、うちの相談所の名前は万が一ご主人や息子さんに見られた時の事も考えて、

(女・闇相談所 (お悩み相談所) ★DAVID★)ではなく、

「師岡さん」という名前にしてあるが、そこに特に意味はない。

関連付けない事が大切だ。その辺も全てDAVIDさんは僕に任せてくれている。


(あ、はい、大丈夫です。でも、あれ以来、元気が出てきて何を言われても気にならなくなってきたというか、これからやる事の方が楽しみになってきています。)


(良かったです。その気持ちが最高の結果に結びつきますので。それで、いつがご都合が宜しいでしょうか?)


(今週の平日ならいつでも大丈夫です。週末ですと、夫も休みで家にいる可能性もあるかと思いますので、それですと家に装置を付けるのは難しそうなので。)


(了解しました。では今週の金曜日はいかがでしょうか?ご主人や息子さんが出掛けましたらご連絡頂いて、頂き次第すぐに家に装置を取り付けに行きます。)


(はい、金曜日で大丈夫です。多分午前10時頃を目途にして頂けたら大丈夫かと思います。いつもその頃には私一人だけになっているので。)


(では金曜日ですね。承知致しました。では私共は9時半には近くで待機していますので金曜日、皆様が家を出ましたらご連絡ください。どうぞ宜しくお願い致します。それから山内さんの良い演技、楽しみにしています。)


(はい、なんだかドキドキしますが、自分なりに頑張ってやってみます・・・。)


(あくまでも自然に宜しくお願い致します。)


日にちも決まった。いよいよ始まる___。




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