第5話 頑張って作ってくれるだけで嬉しい

(衣装を替える)


「おめかししたときの服、結構似合ってたんじゃなかった? 頻繁に着替えさせられると、自信なくなっちゃうよ」


(溜息をつく)


「こーゆう服、マスター好きなのぉ~? 着てほしい願望なんてあったんだねぇ~」(にやにやと笑い声がこぼれる)


「フェールがアイロンがけしてたとき、ずっと着させたいって考えてたの?」(主人公の反応を楽しむ)


「ふぅん。いつも想像してくれてたんだぁ~。フェールのメイド姿」(口角が上がる)


「フェールの目を見て答えて?」(明後日の方を向く主人公に、くすくす笑う)


「正直に言ってくれたら、マスターがしてほしいこと叶えられるのになぁ~。メイドさんかどういう風にご奉仕すればいいのか、全然分からないんだもん」


(主人公が答える)


「マスターと一緒に写真を撮ったり、お歌を聴かせたりするのぉ~? もっと気軽にできそうなご奉仕は?」(ハードルが高いと断る)


「だって、マスターといたら、絶対に顔引きつっちゃいそうだし……マスターのとこだけ半分に切った写真がほしいなぁ。フェールがいなくても違和感がなかったら、なおよし!」


「そりゃあ、フェールの写真は別にいらないよぉ~? フェールがお留守番しているときに、マスターの顔を見て寂しくないようにしたいんだぁ~。そしたら、出迎えの準備も頑張れそうだしねぇ~」(にこやかに笑う)


(歌は披露できないのかと主人公に訊かれる)


「歌はあまり上手くないから、や……」(絶対にだめだと首を振る)


「あとは、食事の用意? 食事、マスターの食事ねぇ~」(考え込む)


(主人公が助け舟を出す)


「フェールの手料理じゃなくてもいい?」


「気遣ってくれるのはありがたいけど。一品ぐらいはフェールが作ったものを食べさせたいよぉ~。凝った料理は作れないから、出来合いのものの方が美味しいのは分かっているけど」(自分で言いながら落ち込んでいく)


「頑張って作ってくれるだけで嬉しい?」


「そ、そんなこと言っても……火加減を間違えて焦がしちゃった料理とか、マスターの好みとは違う味付けの料理を出しちゃったら。一口だけでお腹いっぱいになったとか理由つけて、捨てるんじゃないのぉ~?」(涙目)


(そんなことはないと主人公は言う)


「分かったぁ~。マスターのこと信じるよぉ~」(少し元気になる)


「着替えて来る、ね?」(ぱたぱたと足音が遠ざかる)


「お待たせ~! マスターだけのメイドさんが、たくさんご奉仕しちゃうよぉ~」(元気に近づいてくる)


「間違えた。この格好のときは、マスターじゃなくてご主人様って言ったらよかった?」


「その反応は正解なのかな?」(微笑む)


「ご主人様のために、ご飯作っちゃうねぇ~」(両手を握る)


「ご主人様。どうしてキッチンに立つの? そんなに、包丁を握らせるのが心配? 大ざっぱな性格だからハンマーを選んでる訳じゃないんだよぉ~? 手先は器用な方だもんねぇ~」(むくれる)


「あっ。腕まくりしてた袖が落ちちゃった」(手がふさがっているため、一旦作業を止めようか悩む)


「ご主人様が直さなくていいのにぃ~」(嬉しさと申し訳さで複雑な顔をする)


「これじゃ、どっちがご奉仕されているのか分からないよぉ~」(困惑する)


「ご主人様が楽しいなら、こんなご奉仕もありかもねぇ~」(幸せそうに笑う)


「味見、してみる? ふーふーするから待っててねぇ~」


(スプーンに息を吹きかける)


「お口開けて。ご主人様」


「どう……かな?」(固唾を飲んで見守る)


「ご主人様の好きな味になってる? 嬉しい~! また作ってあげるねぇ~」

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