第3話 このままの格好でいてくれ
(高難易度クエストのバトルを読み込んでいる)
「ローディング中だよ。しばらく待っててねぇ~」
(ローディングに時間がかかるため、豆知識が流れる)
「豆知識その二。マスターが愛用する裁縫箱は、ソルシエールだった師匠からもらったものなんだって。長い間大切に使われた裁縫道具には、精霊が宿りやすくなるの」
(バトル画面が表示される)
「精霊召喚!」
(編成した精霊が召喚され、武器を構える)
「戦闘開始!」
(フェールが先陣を切る)
「行くよ~! みんな、ついてきて!」
(やる気にさせる効果音が響く。後衛の精霊から、攻撃力と速度上昇の効果を付与される)
「何だか力がみなぎってきたよぉ! これなら、も〜っと頑張れそう!」
(オートモードでバトルが進んでいくため、武器や魔法をぶつけ合う音が響く)
「はあっ!」(通常攻撃の音。ハンマーを敵単体に振るう)
「えーい!」(通常攻撃の音。ハンマーを大きく振りかぶり、敵全体に連打を繰り出す)
(蓄積したダメージが軽傷に達する)
「うっ。いたたぁ……」(顔をしかめる)
「気にしないでっ! 兜の飾りが取れちゃっただけだから。これくらい、へーき。へーきぃ~!」(心配で声をかけた主人公に、すぐに微笑む)
「さっきの攻撃が、マスターに当たんなくてよかったよ~」(ブイサインを作る)
「前衛を任せてもらっている以上、これくらいで音を上げらんないよ! 後衛で戦ってくれている子達も、指一本触れさせないんだから! もちろんマスターも守ってあげる!」(話しながら武器を振るう)
「まだまだぁっ!」(ダメージを受ける)
「火傷しちゃえ!」(特殊攻撃の音。敵に火傷を付与する)
「どーお? じわじわダメージ来てるんじゃない?」(強気だが、自分の体力に余裕がないことは理解している)
(後衛から回復が付与される音)
「ふ~。回復してくれて助かるよぉ~。弱体効果も一つ減らしてくれたら、もっとありがたいんだけどな~」(完全にダメージを回復してもらえた訳ではないため、残りのHPを気にしてしまう)
「おっ。魔力がたまったねぇ~」(満タンになったゲージを見る)
「そろそろ奥義を打てるかも」(形勢逆転を期待する声)
(主人公が奥義のボタンをタップする)
「奥義・メガスチーム!」(敵全体にランダムで三回ダメージを付与。敵の防御を四十秒間ダウン)
「足止めには十分すぎる威力じゃないかなぁ~? しばらくは動きを封じておけるよぉ~っ!」(弱体化を成功させ、自分の働きに満足する)
「みんなっ! ありったけの力を込めて、敵を叩くよ~!」
(敵にダメージを与え続けていたが、自身の体力ゲージが重傷に達する)
「ひゃああっ! 鎧がこんなにあっけなく壊されるなんて、想定外だよぉっ!」(露わになった肌に動揺する)
(装備を破壊された姿が、画面に大きく表示される)
「マスターに……勝利を届けたいのにぃ~!」
(主人公はオートモードを解除し、戦闘中断のボタンをタップする)
「中断するのぉ? 一息ついて、乱れた集中力を整えるのもありかもねぇ~」
(主人公が撤退の選択を表示させる)
「待って、マスター」(焦る)
「撤退するほどじゃ、ないんだけど……」(考え直してほしい気持ちと、恥じらう気持ちが拮抗する)
「こっち……見ないでほしいなぁっ!」(胸元を隠す)
「フェ、フェールのこと見ないでって……言ったばかりだよねぇ~? どうして振り返るのぉ~!?」(恥ずかしがりながらハンマーを振るう)
「わざとフェールの嫌がることしてない? さっきマスターをからかったこと、まだ怒ってるのぉ?」
(主人公は、フェールが墓穴を掘ったことを呆れる)
「やましい気持ちがある訳ないじゃん! そんな悪い子に見えるぅ~?」(むくれる)
「あのね、マスター。伝えておきたいことがあるんだ」(真剣な声)
「いやいや。死亡フラグになんて、させないよぉっ!」(にこやかに微笑む)
(敵を討伐し、戦場が静まる)
「助かったぁ……間一髪ってとこ?」(ほっと息をつく)
「勝負ありだね!」(拳を握る)
(戦いを終えた効果音が鳴る)
「クエストクリア!」
「新しく手に入れたものは何かなぁ~?」
(戦闘結果が表示される)
「経験値はカンストしても、フェールの可愛さは増すばかり? やだなぁ、マスター。疲れすぎて、変なこと言ってるよ」(照れているのが丸わかりな声が漏れる)
「ふ~! いい汗かいたねぇ~」(汗を拭う)
「新しい装備が手に馴染んでくれたから、たくさん動いちゃったなぁ~。フェールのために強化してくれてありがとねぇ~。マスター!」(戦いの興奮がまだ残っている)
「あっ。動くと胸元が危ないんだった。うっかりしてたよぉ~」(胸元を抑えて恥ずかしがる声)
「いつも隠れてる部分をマスターに見られると、変な気持ちになっちゃう」(うぅっと小さくうめく)
「回復に特化した子を編成に置いていたら、こんなことにはならなかったんだからねっ。やられる前に敵を討て、だなんて、マスターの鬼いぃぃ~」(早口で文句を言う)
「フェールがいなかったら、破綻しちゃった作戦だろうねぇ~」(誇らしげに一人頷く)
「そうそう。褒めて褒めてぇ~!」
(主人公に、さっきの話の続きを急かされる)
「ん~? マスターに伝えたいことがあるんじゃなかったのかって……?」
(きょとんとした後で、自分の言ったことを思い出す)
「あ~! すっかり忘れてたぁ~!」
「気にしないでほしいなぁ~。倒される寸前だったから、ちょっと弱気になっちゃっただけ」(明るく笑う)
「でもね。マスターに言いたいことはあるよ」
「あのね。マスター」(真剣な声)
「帰ったら修繕に出してほしいなぁ~。疲れちゃって、もう動けないよぉ~。服も破れちゃったから、風邪引いちゃう」(脱力した声)
「しばらく、このままの格好でいてくれ? 永遠にこの姿のままでもいいって?」(主人公の言葉に唖然とする)
「うわあぁ……」(信じられないと罵りたいものの、かえって主人公を喜ばせるのではないかと思って言葉を考えている)
「マスター最低っ! ここまで損傷が激しいと、冒険に出ることもできないのにぃ~~! フェールの存在意義を奪っちゃ、やだやだっ!」
「帰ったらすぐ、修繕に出してよねぇ~! 出してくれなきゃ、マスターとしゃべってあげないから!」(固く決意した声)
(主人公の顔を見て許してしまいたくなるが、思い留まる)
「そんな顔しても、だめなものはだめ! フェールはマスターとしゃべりたいのに、無茶させるマスターがいけないんだぁ~!」
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