第119話
「これらは女嫌いの美少年がとある女性に恋に落ちる漫画です!気に入った物はお貸ししますよ」
「は、はい、そうですか…」
初対面であるはずのスカーレット様にグイグイと漫画を勧める美優と、挙動不審ながらそれを素直に受け取るスカーレット様。
「ヤナギ、スカーレットは女嫌いではないぞ?どちらかと言うと女性恐怖症だ」
「ちょ、アル!」
「そこら辺はバッチリです!女性恐怖症を患ったヒーロー物も用意してますから!」
「べ、別に女性が怖くなんて…怖く、なんて…」
「ユウカたちに再度囲んで貰おうか?」
「止めてください死んでしまいます」
悲報、スカーレット様一瞬で陥落。よほどトラウマになったらしい。頭を抱えてブルブル震えている。ここまで恐れられているのは複雑だ。なのでちょっとした仕返し。
「美優、スカーレット様は女性の尻に敷かれ、もとい女性が上位な方が好きみたいだよ?」
「ユウカさん!?」
突然のフレンドリーファイアに驚愕しているスカーレット様。そんな表情を見ていると何だかイジりたくなる。アルバート様の気持ちが少し分かった。表情がコロコロ変わって見ていて飽きない。これもスカーレット様の魅力の一つだろう。
「なるほど、でしたら女性が年上の漫画ですね!コレとかコレとかがオススメです!」
「え、あ、ありがとう、ございます…?」
オズオズと漫画を受け取るスカーレット様。チラリと表紙を見ると少女漫画と少年漫画が半々ぐらいの割合で混ざっていた。
ちなみに、最初の話では友人たちと会話させて貰う予定だったのだが、漫画を勧める形となった。美優と話し合っていきなり三次元はキツイだろうとなったからだ。
それに、美優の友人ならば会話が出来るようにコチラ側の知識も必要だろう。何故なら美優の友人たちはディープなタイプしかおらず、多少の知識が無ければ、押し潰されると真剣な声で美優が言ったからだ。押し潰されるとは、いったい…。美優曰く、領域展開するんだそうな。呪○廻戦なんだろうか。必中なのか。回避不可能の即死攻撃とかRPGならば鬼畜ゲーである。
今更ながら自分の判断に迷いが生まれたが、やっぱ止めるとは言えないだろう。どうやらスカーレット様は絶対に女性への苦手意識をなくさないといけないようだ。家の方針なのか、彼自身の決意なのか。それはまだ分からない。
スカーレット様は部屋の隅に座って漫画を読んでいる。最初は恐る恐るだったが、数ページ読むと表情から恐怖がなくなり、夢中で読んでいる。時々、怒ったり、悲しそうだったり、笑ったりしている。感受性が豊かだ。こんなに感情移入して楽しんで貰えるなら作者も冥利に尽きるだろう。
◆◇◆
「それでさ!ヒーローが女性にトラウマを抱えながらさ!それでもヒロインと向き合おうとしてさ!それでそれで!」
スカーレット様が熱く語る。どうやら漫画にハマったようだ。
「喜んで頂けて良かったです!良ければ一巻を差し上げますよ」
「え、本当?幾らなん…です?」
「
「え?いや、流石にそれはダメだろ…でしょ。この漫画だってお金が掛かってるし…」
「いえいえ、同志が出来て嬉しいですし、布教用に何冊か買っていますから」
「そ、そうなんだ。ありがとう、ございます…」
スカーレット様がオズオズとお礼を言い、漫画を受け取る。まだ怯えはあるようだが、最初に比べれば会話出来るようになった。改善はまだ掛かりそうだが、美優相手には少し打ち解けたみたいだ。
「ほう、スカーレットが女性とまともに会話出来ているな。何時ぶりだろうな」
「美優は不思議な魅力がありますからね」
美優はいつの間にか引き込まれる魅力がある。ドン引きしていたアルバート様も美優を信頼しているようだし、スカーレット様もいつの間にか話せるようになっていた。若干敬語混じりでぎこちなさは残るがまだ初日だ。そんな劇的に改善は考えていない。むしろ初日な事を考えれば、最良の結果だろう。予想以上の成果だ。
「あ、そうだユウカさん。お願いがあるのですが」
「うん?何かな」
美優の頼みならば大抵の事は叶えてあげたい。スカーレット様の件もあるがそれがなくとも友達だからね。どんなお願いだろう。
「私に、魔法を教えて貰えませんか?」
そんな事を頼んできた。これは、難しいかも知れない。
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