第120話

「ダメですか?」


 魔法を教えてほしい。美優の頼みならば叶えてあげたいのだが…。


「美優に魔法を教えて大丈夫そうですか?」


「う〜ん、難しいな。教えるのはいいのだが…人間界で魔法を使うと大事になりそうだからな…」


「SNSで晒し上げされそうなんで怖いんですが」


 変にバズれば厄介事が舞い込む。炎上して最悪な事態になった事例をニュースでよく見るから躊躇ってしまう。


「そうだな。人間は自分と違う存在を排除しようとする種族だ。下手に教えると…ヤナギが危ない」


「ですよね…ゴメン美優。美優が危ないから教えるのは難しいかも」


「そう、ですか…」


 美優は明らかに落ち込んでいる。良心が痛むが、二つ返事は出来ない。


「とはいえ、魔神教が人間界を害する可能性がある。自衛の為に教えておこうかとも迷っているんだが」


「ですね。どうしようかな」


 魔神教の目的は魔神を復活させ、人間界、魔界全てを浄化する事。この浄化が何をどうするのかが分からないが、嫌な予感がする。そもそもアルバート様やセシリア様に身勝手な理由で危害を加えた連中だ。何をするか想像も出来ない。もしかしたら人間界に干渉する事かも知れない。そんな時の為に自衛の手段はあったほうがいいだろう。


「ちなみにだけど、美優は、なんで魔法を使いたいの?」


「最近ユウカさん達、大変そうですし、何か出来たら良いなって。力になりたいなって」


「ん〜、気持ちは嬉しいんだけど…」


 頭を悩ませる私とアルバート様。そこで提案してきたのは意外な人物。


「じゃあ、俺が教えようか?」


「スカーレット?」


「スカーレット様?」


 スカーレット様は女性が苦手のはず。なのに美優に魔法を教えようとしている。どうしてだろうか。


「大丈夫なのか、スカーレット」


「大丈夫だよ、俺が守るし、いざとなればブレイズ家が守るから」


「そちらではない。女性に苦手意識がある事だ」


「うーん、正直まだ怖いけど、ヤナギさんはアルとユウカさんの友達だろ?俺も友達になりたいと思ってさ」


「それだけか?」


「うん。ダメかな?」


「いや、スカーレットらしいと思っただけだ」


 そこでアルバート様は美優に向き直る。


「ヤナギ、スカーレットが魔法を教えるみたいだが

、それで構わないか?」


「え、い、良いんですか!?やったー!スカーレットさん、いえ、スカーレット師匠!こちらこそよろしくお願いします!」


「ひゃ、ひゃい…よ、よよ、よろしくお願いしましゅ…」


 美優が凄い勢いでスカーレット様に近づき手を握る。そんな美優にタジタジなスカーレット様。かみまくっている。


「最後で台無しだな」


「アル、シャラップ!」


 こうして新たな師弟関係が生まれた。女性が苦手なスカーレット様と、たまに(?)暴走する美優。このコンビが今後どうなるのか私にも分からない。

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