第118話

「ユウカ、さん…?ユウカさんなんですか…?」


「ユウカさんですよ?」


「ユウカさん!?マ!?え、マ!?」


「YES、アイアムユウカ」


「なんのやり取りだ」


 美優を訪ねたらこんなやり取りがあった。どうやら深魔族となった事で私だと認識する事が出来なかったようだ。謎のユウカ言語で会話する私達を呆れたようにこちらを見るアルバート様。


「え、ちょ、なんかまた更に美少女化が進行しているんですが!?髪型?え、髪型が違うからそう見えるだけ?いや、でも、絶対に前よりも美少女になっているし、う〜む…」


 変化に信じられず首を傾げて唸る美優。何処まで話して良いものか。アルバート様に念話で確認を取る。美優なら大丈夫だろうとのこと。


 という訳で、今まで合ったことを掻い摘んで説明する。宇宙猫のようになっていたが、やがて納得したように頷く。


「つまりユウカさん第二形態という事ですね!」


 やはり美優の順応力は凄い。私が美優の立場ならずっと混乱しているだろう。しかし、第二形態なんだろうか。そう表現するしかないかな。上手い表現が見当たらないのでそうしておく。


「しかし、また推しになりますね、コレは」


「推し」


「バチバチに推しておりますよ?なんなら毎日エアスパチャしてますよ?脳内赤スパチャで埋め尽くされていますよ?」


「あざす」


「な、なぁ、アル、彼女達はなんの会話を…?」


「ボクに分かる訳がないだろう」


 私達の会話についていけないスカーレット様がアルバート様に尋ねるものの、アルバート様はバッサリと切り捨てる。


 そこで美優はスカーレット様に気付いたようだ。何故か目を見開く。


「彼が、スカーレットさん…?また、美少年、だと…!?」


「ひっ!」


「ユウカさん、魔界はどうなっているんですか!?美男美女の楽園パライソなんですか!?推しカプ万歳なんですか!?どっちがネコでどっちがタチなんですか!?アルスカですか!?スカアルですか!?」


「ひ、ひぃ〜!言語は分かるのに、意味が分からない!助けてアル〜!」


「慣れろ。ヤナギはこんな感じだ」


「怖いよー!この人怖いよー!」


 スカーレット様が更に怯え、アルバート様に縋り付く。美優の暴走に早くも慣れたアルバート様は軽く答えていた。そんな美少年たちの絡みに美優は更に興奮。見間違いでなければ鼻血が出ている。どうしよう、スカーレット様の言葉を否定出来ない。


 騒がしい現実から逃避ついでに考える。そう言えば周りには美男美女が多いなぁと。男性陣はアルバート様とスカーレット様、エルくんが美少年枠、ミナト様やユーリは美青年枠、グラーゼルさんはイケオジ枠、リグルさんは男の娘枠とバリエーション豊富。


 では女性陣はというとセシリア様、アクアさん、ミル先輩、アイリス師匠が美少女枠。リルちゃんとルミちゃん、リリスさんは美幼女枠だろうか。どちらも美少女枠だが、見た目の違いである。ルミちゃんは魔神時代は間違いなく美少女枠。ユカリさんは美女枠となる。


 言われてみれば確かに魔族は美男美女が多い気がする。一部は元人間だから厳密には違うかも知れないが。とはいえ私の周りに多いだけだろう。ついでに魔族ではないが美優も美女枠だ。


 美優はカメラを構え、アルバート様とスカーレット様を連写している。スカーレット様はか細い悲鳴をあげているし、アルバート様は呆れているようだ。当然の様に私の写真も撮られていた。驚くほど高画質だった。高めのカメラなのかも知れない。


 こうしてスカーレット様の女性への苦手意識を減らす試みはグダグダと始まりを迎えたのだった。

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