第54話
ルミエールさんやリルちゃん曰く、魔力が既に五倍ぐらい多くなり、魔法の練度も格段に上がったとの事。まだまだ油断出来ないが、通常の
「(アルバート様今どうしてるんだろう)」
最近、訓練以外の時間に考える事はアルバート様の事だった。ふとした拍子につい彼の顔が思い浮かぶ。
元アラサーの社畜男が何をセンチメンタルな事を考えているんだと笑われそうだが、それでも思ってしまう。もっと言うならば
「(今何しているんだろう。会いたいな。眷属の効果で話せないかな)」
なんて事を考えたのは一度ではない。何度かやってみたが、応答は無くこの空間では無理みたいだ。
一度自覚するとどんどん想いが募っていく。どうやら、自分が思う以上に依存していたらしい。いや、違う。アルバート様を意識している。いつの間にか彼のそばにいることが当たり前になっていたようだ。切っ掛けはアルバート様のプロポーズだろう。離れてようやく気付いた。こんな調子では鈍感と言われても何も言えない。
そんな事を思いながら訓練を積み重ねる。少しでも強くなって彼の元に帰る為に。彼の敵を倒す為に。彼と共に歩む為に。
◆◇◆
そんな感じで二ヶ月を超えた。いくら向こうの時間が変わらないと言ってもこちらではそれだけ過ごしているので長く感じる。訓練については上位の魔獣を数体なら無傷で仕留められるようになった。
アルバート様への想いは変わらず。いや更に大きくなっている。我ながら呆れる程に。その想いが原動力になるまでに。
「(強く、強くなる!アルバート様を守るんだ!アルバート様がこの先悲しまないように!)」
中学生か高校生の恋愛かよ。そんなツッコミは自分が重々承知している為受け付けない。初恋は、小学生低学年の時の綺麗な先生だったかな。恋というよりは憧れに近いけど。その後、中学生や高校生で憧れを持った女子はいた。
今思えば、前職に勤めていた時に美優に好意があったのかも。でなければ、美優を身を挺してまで助けようとはしなかったかも知れない。身勝手だとは思う。鈍感だった。相手の気持ちも、自分の気持ちも。見ようとしなかったんだ。だから従魔のルカが『怠惰』を持った。
ルカが『怠惰』を持って生まれたのは単純に働くのが嫌だからだと思ってた。でも違った。怠けていたんだ。見る事を放棄していたんだ。自分の内面、自分の心を。それを今更気付いた。そして色々と取りこぼしてようやく自分の気持ちに気付けた。
ああ、好き。私はアルバート様が大好き!
自覚した。もう止まる気は無い。突き進むのみ。それが茨の道だろうと、彼と歩むならそれでいい。
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