第36話

「所で裕也良かったの?まだアイツへの復讐終わっていないけど」


「ん〜。ルミエールさんに出会うまでは殺そうと本気で思ってたんだけどね。何かふっと怒りが消えたというか、復讐よりもルミエールさんの手助けになれればと思ってさ」


「単純だね」


「うるせーやい」


「でも、ルミエールさんが私達を騙している可能性はまだ有るからね。気を付けてね」


「まぁ、知り合ったばかりだからな。とりあえず様子見かなって。手伝える事があるなら手伝う感じでいいんじゃないか?」


「お人好し」


「よく言われますけど何か?」


「開き直るのが早いよ」


『ユウヤさん、ユウカさん、今から魔法を使います。多分辛いでしょうが頑張ってください』


「「へ?」」


ルミエールさんの声が聞こえたと同時に身体が重くなった。


「うおおおおお!?」


「うあああああ!?」


全方位から身体が押し潰されるような感覚。何だこれ!深海に生身で潜っているみたいだ。経験はないけども。苦しい。圧迫されながら、ユウカに手を伸ばす。


「…ゆ、ユウカ、大、丈夫か…?」


「…なんとか、てか、これ、やっぱり私達を消そうと、してない?」


「…分からない。でも」


「…でも?」


「…騙されたのなら、俺が、馬鹿、だっただけだよ」


「…俺、達でしょ?」


「…はは、そうだな。ルミエールさんが、約束を守ってくれる、なら、また、会おうぜ」


「…また、出会える事を、祈ってるよ」


そうして、俺達の意識は遠のいていった。


◆◇◆

「終わりましたよ。起きてください」


ルミエールさんの声が聞こえた。あれ、今俺生きてる?


「「死ぬかと思った」」


「大丈夫。生きてますわ」


「え、何、何今の」


「全身ギューッとなったよ」


俺とユウカがお互い生きてる事を確認。良かった。また会えた。


「少し強めの魔法を使いました」


「どんな?」


「相手を闇の中に引きずり込んで獣に喰わせ続ける魔法です。地獄の扉ヘルズゲートという魔法ですわ」


「何それ怖い」


「え、アイツに使ったって事?」


「せっかくの外なのでやっちゃいましたわ」


「「Oh…」」


グロい。いやグロいよ。


「しかし、やはり気絶していましたか。ふむ…」


ルミエールさんが何かを考えている。


「決めましたわ。これから貴方達を鍛えます。わたくしの力に慣れて頂きますからね」


「「ふぁ?」」


何?どういう事?何故こんな展開に?


「そうですね。毎日30分を目安に頑張ってみましょう」


「待って。どういう事?鍛えるって何を?」


「鍛えて頂くのは魔力です」


「魔力を鍛える?」


「貴方達が気絶したのは簡単に言うとキャパオーバーです。貴方達の魔力許容量を大きく超えていたのが原因ですわ。魔族は自身の魔力の他、周囲にある魔力を吸収して活用しています。わたくしの魔力が貴方達に大量に流れ込んでしまい、それで限界を迎えた結果気絶したという訳です」


「魔力許容量?」


「魔力許容量は貴方達が保有出来る魔力量です。コップと水を思い浮かべてください。コップが魔力許容量として水が魔力量という事です」


「あ、なるほどね。それを超えていたと」


「そうです。ちなみに、多少超えていた所で何もありませんが、大きく超えていたという点が重要です。海にある全ての水をコップ一杯に収めるような物です」


「無理ゲーでは?」


「物理的に不可能ですわね。内側からコップは壊れます。壊れないようにするには、器を大きくするしかありません。器が大きくなれば入る水の量も増えます。つまり扱える魔力が増えるという事です」


「ふむふむ」


「そんな感じですので貴方達には魔力量を増やす鍛錬をして頂きますわ。アルバート様を守る為にあれぐらいで気絶してもらっては困ります。特に呪いを掛けた相手が上位存在の可能性がある以上必須です。ついでに魔力の回復速度も鍛えていきましょうか。回復速度が早いという事は連戦能力が高いという事です。敵が一人とは限りませんから鍛えておいて損はないでしょう」


「あ〜確かに。とりあえず分かりました」


「では、明日から始めましょう。ビシバシ行きますわよ」


「「あ、ハイ」」


こうして、俺の復讐は終わり、魔力の修行が加わった。


「ちなみにですが現在、わたくしがユウカさんの身体を借りて戦えるのは五分が限界です。それ以上戦うと身体が保ちませんので。魔力量を増やす訓練はユウカさんの戦闘力を向上させる事にも繋がるのでバッチバチに行きますわ」


「(ウ○ト○マンよりは長いな)」


「(ウ○ト○マンよりは長いね)」


「…失礼な事を考えていません?地獄に突き落としますよ?」


「「滅相もございません!!」」


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