第34話
「ユウカ?」
ユウカが俯いたまま動かなくなってしまった。ユウカの伯父のキヨハルはエルに頼んで拘束してもらっている。先程までユウカの雷撃に打たれ続け、既に息も絶え絶えである為、脱走は不可能だが。アンデッドでなければ、軽く十数回は死んでいるだろう。
こんな死に損ないよりもユウカが気になる。やはり、曲がりなりにも血が繋がった存在を殺すのは躊躇してしまうのだろうか。
「ユウカどうした?」
ユウカに近づく。目は何処か遠くを見ているような感じだ。すると
ギュッ
「おおっ?いきなりどうしたんだ」
「……」
ユウカがいきなり抱きついてきた。問い掛けてみるが返事は無い。ただ、何かを確かめる様に強く、時折、頬擦りしている。困惑しつつも、別に嫌ではないため振りほどこうとは思わない。
「…あぁ、このぬくもり。ずっと、こうしたかった…ずっと、お会いしたかった…」
「む?」
漸く言葉を発したユウカの目には大粒の涙が浮かんでいた。事情は分からないが、ユウカの涙をハンカチで拭う。そしてユウカは言った。
「…お久しぶりです。ノワール様。ルミエールです。
ルミエール。その名に覚えは無いが懐かしいような愛おしいような気持ちになる。ボクは何かを忘れている?それとも―
『ああ、愛しの我が妻、ルミエール…。生まれ変わったらまた、君と巡り会いたいものだな…』
『何度生まれ変わろうとノワール様を見つけ出します!だから待っていてくださいまし!』
『そうか…。愛しているぞ。ルミエール』
『
頭の中にとある光景が、流れ込んできた。何だ今の光景は?ノワールと呼ばれる男の今際の際。ルミエールと呼んだ少女が傍らにおり、涙ながら必死に訴えていた。ボクは知らない。だが、覚えている。確かに有った記憶だ。これは
「前世、か?ボクの」
「!ノワール様、覚えて…?」
「…いや、断片的に見えただけだ。…もしや、君は」
「はい…。ノワール様の妻ルミエールです。ユウカさん達に身体を一時的にお借りさせて頂いております」
ユウカ達?変な言い回しだが、それは後にしよう。どうやらノワールという男がボクの前世でルミエールがユウカの前世のようだ。
「身体を借りた?何故だ?」
「ノワール様、いえ、アルバート様。
◆◇◆
透明な壁を隔てて俺とユウカは外側を眺めていた。
「あ、抱き着いた」
「熱烈だね〜」
「見てるこっちが照れるな」
「ドラマのラブシーンとか目を逸らしているしね」
「言わないでくれ、恥ずかしいから」
「我ながら初心だよね」
「ふふん。バキバキの童貞だからな」
「童貞って胸張れる物なの?」
「全然」
「なら何で言ったのさ」
しばらくの間アルバート様とルミエールさんのハグを眺めていた。とはいえ、ルミエールさんの視点が俺達の視点だからアルバート様しか見えないが。
「所で気になったことがあるんだ」
「言いたいことはなんとなく分かるよ」
「うん。…何であんな絶世の美女の来世が俺なんだ。なんか色々ごめんなさいって感じなんだが」
「うん。いや、大丈夫、大丈夫だよ。流石にね、あのレベルと比べられると辛い物があるけど、私達も整えたらそこそこイケると思うよ。…多分」
「断言出来ないのかよ」
「いや、まぁ自惚れでなければ割と容姿は整っているかなって」
「美女に生まれたかったなぁ」
「そこは美男子でいいのでは?」
「いや、今の俺女だし」
「そう言う問題かなぁ」
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