第33話

【悲報】俺の前世がヤンデレ美少女だった件について


そんなふざけた事を言っている場合では無い。この状況をどうにかしないと。とはいえ、どうしたものか。とりあえず話を聞いてみるか。


「あの、ルミエールさん、聞きたい事が」


「取り引き致しましょう」


「取り引き?何のですか?」


わたくしは貴方達、ユウヤさんとユウカさんに危害は加えません。貴方達とアルバート様を害する者のみを排除致します。わたくしの力をお貸し致しましょう。その代わり、アルバート様との恋路に関してはわたくしに代わって頂きたいのです。代わると言っても主導するだけで乗っ取るつもりはありません。あくまで身体の持ち主は貴方です」


つまり、力を貸す代わりにアルバート様とイチャつきたいって事だろうか?メリットはあるが、何でそこまでするんだ?


「こちらにはメリットがありますが、そちらにはあまりメリットが感じられないのですが。どうしてそこまでするんですか?」


「…あの方はわたくしの『光』なのです。孤独だったわたくしを救ってくださいました。あの日からずっと想い続けています。恋人となり、夫婦となった後も、想いは募っていくばかりでした。今際の際、誓ったのです。必ず会いに行くと。…ずっとお会いしたかった。この先、未来永劫添い遂げたいのです」


「…アルバート様は、貴女の事は」


「…分かりません。忘れてらっしゃるかもしれません。ですが、忘れてしまわれたのなら、最初から絆を深めてまいります。幸いな事に婚約者となっているんでしょう?」


「はい。そうですね」


「でしたら、ここから始めますわ。もう一度添い遂げられるように。…今度は二度と離れないように」


アルバート様の前世とルミエールさんの過去についてはまだ分からない。だが、心から想っていたのが伝わってきた。正直、俺としては代わってもいいかなと思い始めている。我ながら単純だな。


「それに、アルバート様の呪いを解くためには、わたくしの力は必要だと思われます。おそらく、呪いを掛けた者はアルバート様と同じ魔人族か、それ以上の存在ですから」


「どういう事ですか?」


何故そんな事が分かるのだろう。ルミエールさんの力なのか?そんな俺の疑問にルミエールさんは答える。


「魔人族は今は無き魔神族に代わり、魔界を治める存在。例え、アルバート様の体質、魔力循環失調症だとしても他の魔族に引けは取らないでしょう。そもそも、魔人族の特性として魔法耐性が非常に高く、自身の害となる魔法は全て無効化致します。ましてや、呪いなど本来なら通じるはずがありません。それでもアルバート様は呪いに掛かってしまった。それはつまり、呪いを掛けた術者はアルバート様と同等か、それ以上の可能性が高いのです」


「なるほど…。アルバート様よりも強い可能性があるのか」


今までアルバート様に呪いを掛けた存在について考えてはいたが答えは出なかった。だが、言われてみればそうである。出会って数日だが、アルバート様が他の魔族に負けるのが想像出来ない。それぐらいアルバート様は強い事を理解している。だとしたら、アルバート様よりも上位存在が呪いを掛けた可能性はある。


「…分かりました。俺達だけでは手に余るかもしれません。貴女の力を貸して戴ければ幸いです」


「それはつまり、取り引き成立と言う事ですわよね?お任せください。アルバート様と貴方達を守ってみせますわ」


「…とはいえ、正直な所、まだルミエールさんを信用出来てはいません。こちらが損害を受けていると判断した場合、契約について再考させて頂きます」


「勿論ですわ。信頼される様に尽力致しましょう。その代わり、こちらの約束も守って頂きますね」


「それは承知致しております。ユウカもそれでいいか?」


「裕也が良いなら、私もそれでいいよ」


「分かった。ではルミエールさん。これからよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願い致しますわ」


こうして、俺の前世であるルミエールさんが仲間に加わった。



「まず、手始めにユウヤさんの伯父を片付けましょうか。わたくしの実力、とくとご覧あれ」







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