第32話
一面見渡す限り黒が続く空間。見覚えがある。『ユウカ』と出会った空間だ。
目の前には二人の女性が立っている。
一人はユウカ。俺の女性的な側面であり、俺の半身である。
もう一人は
「あら、貴方がこの身体の持ち主なのね。そして、
ごきげんよう。
ルミエールと名乗る絶世の美少女がいた。彼女は微笑みながら、話しかけてきた。
見た目の年齢はアルバート様と同じぐらいで、15~16歳ぐらい。
腰まで伸びた夜の闇を集めたような艷やかな黒髪。
僅かな光を反射して妖しく輝く黒曜石のような瞳。
雪のように白い肌はシミ一つ無くきめ細かい。
目鼻はハッキリしており、華やかな印象を受ける。
身長は180cm程の長身。豊かな胸部に反して引き締まった腹部、安産型の臀部と、スタイル抜群の身体。貴族令嬢のような服を纏っており、まるでお伽噺から抜け出してきたようだ。
確かカーテシーだったか。片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、スカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて行う挨拶をしている。貴族令嬢さながらの優雅さだった。
「は、はじめまして。相葉裕也です。…ゆ、ユウカこのルミエールさんは一体…?」
「さっき説明してもらった通り私達の前世だよ。そして、私達の身体の中に居る『怪物』でもある」
「『怪物』…。彼女が?」
「…裕也、前に私が言った事を覚えてる?」
「確か、俺に凄い物が宿っているんだよな?ルミエールさんはそんな感じしないけど」
ユウカに今朝の夢で言われた事を思い出す。ユウカの説明では、生まれつきとんでもない存在が俺の中にいるとは聞いた。彼女がそうとは思えない。だがユウカは、首を横に振って否定する。
「…彼女はハッキリ言って規格外。魔力量があり得ないよ。世界を覆い尽くす程だ。アルバート様を含めて屋敷の皆の魔力を合わせても足りない」
「は、え、そんなに?」
「だから怪物と呼んだ。それにまだ理由はある」
「理由?」
「もう一つの理由、それは…」
「あら、ひどいわ。初対面で怪物呼びだなんて」
ルミエールさんがこちらの会話に苦言を呈す。あくまでにこやかに。
「いきなり身体を乗っ取ろうとしている人を他に何て呼べばいいの?」
「え?」
今聞き捨てならない台詞があった。身体を乗っ取る?どういう事だ?
「心外ね。
「同じでしょ。身体を貸すなんて危ない真似をしたく無いんだけど?」
「良いじゃない。ノワール様、いえ、今世ではアルバート様かしら。彼と少しでもお近づきになりたいんだもの」
「…貴女にとってアルバート様は何なの?」
「
ハッキリと言い切った。その瞳に嘘は見えない。
「それに
にこやかだったルミエールさんに怒りが浮かぶ。目にハイライトが無く虚ろだ。まるで業火と極寒の中に同時に放り込まれたような錯覚に陥る。正直怖い…。
「…これがもう一つの理由だよ。目的の為なら手段を選ばない性格だ。アルバート様にとって有害だと判断した物は全て排除する。世界を壊すと言ったら躊躇無く壊すだろうね」
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