第31話

「さて、次は貴方ですよ。清治さん」


「ふ、ふふ、ふざけるな!何故俺が…!」


「自分の胸に問いかけてみるのはどうです?そもそも自覚が無いとは言いませんよね?」


「自覚だと?俺が何をしたって言うんだ!?俺は上級国民だぞ!」


「…救いようが無いですね。そんなんだから部下に嫌われるんですよ」


「あんな奴らはただの奴隷だろう?何故そんな物を考慮しないといけない?」


ダメだコイツ…。根本から腐っている。会話が成立しない。こうなれば仕方ない。とっておきだ。


「…そんなんだから弟に初恋の人を奪われるんですよ」


「貴、様ァ!!何故それを知ってる!?あれは奪われたんじゃ無い!あの女に見る目が無かっただけだ!あの出来損ないの弟に奪われた訳じゃない!!そんな事がある訳が無い!!」


清治の表情が驚愕に染まり、怒りに塗り替わる。滑稽だな。


「哀れですね~。高校時代の失恋をいつまで引きずっているんです?貴方もう五十半ばでしょ?そんなんだから妻に愛想尽かされるんですよ?」


「失恋ではない!俺にあのブサイクは相応しくなかっただけだ!それに妻は浮気ごときで出ていった。器の小さい女だ!」


「へぇ~。では、高校時代に直美さんに言い寄って謹慎をもらったのは?百回振られて、逆ギレして襲おうとした所を正孝さんにボコボコにされたことは?」


「な…!」


「それから先も嫌がらせし続けるも相手にされなかったことは?結婚の報告を受けて暴れて警察の世話になったことは?それで家族から絶縁されたことは?」


「な、何故、それを知ってる…?それを知ってるのは正孝ぐらいしか…だが、アイツは死んだ筈…。まさかお前…正孝のガキか…?だが、正孝のガキはアイツぐらいしか…まさか、お前は…」


「甥の顔も忘れたんですか?清治おじさん。俺ですよ、裕也です」


「う、嘘だ!お前は女だろうが!」


「色々合って性別が変わりました。まぁ、それは良いとして」



「復讐を続けますね」


「ふざけるな…!お前ごときが俺を殺すのか!?」


「だったらなんです?」


「お前は本当にあの出来損ないとクソ女に似てる!いつもいつも俺を無視しやがった!正孝と結託し、俺を貶めやがった…!大人しく俺の物なれば良いものを…!身の程を知れよクソ女が!正孝もだ!出来損ないのクセに直美と結婚しやがった!俺が狙っているのを知っていながら奪いやがった!出来損ないは出来損ないらしく底辺でいろよゴミが!」


清治が追い詰められたからか色々と本音を暴露し始める。もう、この時点で殺しそうになった。父と母を貶されて良い気分な訳が無い。そして、次に清治が放った言葉が引き金となった。



「だからアイツ等は死んだんだ!天罰だ!ざまぁみろ!アイツ等は死んで当然のゴミ共だ!クケケケケ!」


「『落ちろ!』」


落雷が清治を捉える。普通の人間なら既に死んでいる。だが死なないアンデッドなら手加減する必要はないな。


「ギャアアアアアアアアア!!」


「『はしれ!』」


縦の落雷では無く、横に迸る雷を放つ。皮膚が焼け焦げる匂いが漂う。


「グギャアアアアアアアア!!熱い、熱い〜!!止めろ、止めてく、ぎゃあああああ!!」


「…もう喋らなくて結構です。これ以上聞いても、殺意が積もっていくだけですから」


「ふ、ふざけ、がああああああ!!」


五月蝿い。黙れ。耳障りだ。清治の言葉を無視して雷を放ち続ける。


初めてだ。人にここまで殺意を抱くのは。跡形も無いぐらい消し炭にしてやろうか。



『あら、素敵ね。良い『怒り』だわ。わたくしも手伝いましょうか?わたくしならば、その男をもっと絶望に叩き込めると思うのだけれど』


声が聞こえた。『ユウカ』では無い誰かの声が。






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